皆さんはどのように筋肥大が起こって筋肉が成長するかご存知ですか?筋トレだけでなく様々な運動をすることで筋肉は成長します。この記事では筋肥大に最も効果的であるとされる「筋トレ」を取り上げて筋肥大について説明しています。
①筋肥大は神経系の適応より後に起こります。なかなか太くならないからって焦らないで!
②運動による物理的刺激とホルモンなどによる化学的な刺激で筋肥大は起こります。
③運動そのものが筋肥大を起こすことも分かってきています。
④高重量種目やコンパウンド種目を行い、十分な栄養補給をするのが筋肥大のコツです。
筋肥大のメカニズムを理解するための4つの生理学的な反応
筋肥大は簡単に言うと、トレーニングによって刺激とダメージを受けた筋肉が、その刺激やダメージといった過酷な環境に適応し、以前より少しだけ強く大きくなって復活することです。そして、この筋肥大を繰り返すことで徐々に筋肉は大きくなり、理想の体に近づいていきます。
筋肥大のメカニズムを知ることでトレーニングへの取り組み方も変わってきますし、より効果の高いトレーニングをすることができます。筋肥大のメカニズムは生理学的な適応反応で説明することができます。初心者の方でもわかるように簡単に説明していきます。
これから紹介する4つの生理学的な反応が分かれば筋肥大を大まかに理解することができます。難しい言葉はできるだけ使わずに解説していきます。
筋肥大をより深く理解するために、超回復の記事も合わせておすすめです。
筋肥大より先に神経系の適応が起こる
筋トレをすると、その適応反応としてまず筋力が上がっていきます。筋力が高まる理由は2つです。
1.神経系の適応…より多くの筋線維を使えるようになる。神経から筋肉への指令(発火頻度)が増える。
2.筋肥大による筋横断面積の増加…筋力は筋肉の大きさにある程度比例している。
ここで重要なのは、筋トレの初期段階は筋肥大による筋力アップより、神経系の適応による筋力アップが先に起こるということです。そして神経系の発達が頭打ちになると、ようやく筋肥大による筋力アップが始まります。つまり、筋トレを始めてすぐの時期は筋肥大が起こりにくい時期と考えられています。
個人差やトレーニングの違いによる差はありますが、トレーニングを始めて20日~1ヶ月は筋肥大が起こりにくいとされています。つまり、筋肥大の本番は筋トレを始めて1ヶ月頃からなので、この段階で効果が出ないと勘違いして、筋トレを辞めてしまってはすごくもったいないということが言えます!
まだ筋トレを始めて数日や1ヶ月未満の人は目に見える体の変化が出るまでもう少しなので、ここでひと踏ん張りしてくださいね!
【筋線維の再生物語】メカニカルストレスからの回復
筋トレをすると、物理的な刺激(メカニカルストレス)を筋肉に加えることになります。そうすると筋細胞の構造が崩れ、筋線維に微細な損傷が生じたような状態になります。筋線維が損傷すると、損傷部にサテライト細胞(筋衛星細胞)という、筋線維の損傷を修復する役割の細胞が集まってきます。
サテライト細胞は未分化な細胞で(とても簡単に言うと進路未定の浪人細胞)、筋線維に損傷が生じると損傷部に集まり、筋線維と融合して核を提供します。核にはDNAが含まれていて、新たにタンパク質を合成する役割があります。サテライト細胞が新しく筋線維に同化し、核がタンパク質合成を進めることで、筋線維の損傷部は以前より大きくなって修復されます。
これが、メカニカルストレスによる筋線維の再生物語で、筋肥大のメカニズムです。十分なメカニカルストレスを与えて筋線維の損傷を起こさせて、サテライト細胞を活性化するには、ある程度の高重量を扱う筋トレをする必要があります。初めは自重のスクワットで限界だった人でも、筋力がついて慣れてこればバーベルやダンベルを使って負荷を大きくしないとさらなる筋肥大に必要なだけのメカニカルストレスを与えることができなくなります。
メカニカルストレスそのものが筋肥大を起こす?!
メカニカルストレス、つまり筋トレなどの運動を繰り返すことそのものが筋細胞の増殖に関与しているというのが分かっています。
筋細胞内外を貫通するインテグリンと呼ばれる受容体はメカニカルストレスを感受して、その後の筋合成のシグナルを伝えていきます。他にも細胞膜にあるStretch Activatedチャネルもメカニカルストレスに反応して開口し、その後のシグナル伝達で筋合成が進むと言われています。
成長ホルモンやテストステロンなどの分泌物による筋肥大促進
筋肥大のメカニズムはここまでに述べた通りですが、筋トレなどの運動で分泌される種々のホルモンが筋肥大に貢献するということが分かってきています。成長ホルモンやテストステロンは最近のフィットネスブームで名前くらいは聞いたことがあるという方も多いはず。では、これらのホルモンはどのようにして筋肥大に貢献するのでしょうか?
テストステロン
テストステロンはコレステロールを材料にして作られるステロイドホルモンと呼ばれるものの一種で、男性ホルモンとしても良く知られています。主に男性の精巣で合成されるホルモンなので、女性より男性の方が分泌量は多いです(女性は男性の半分以下の分泌量)。
筋トレなどの運動することでテストステロンが分泌され、筋肥大が促進されるということが言われています。筋肥大に有効ということは分かっていますが、必須ではないという研究もあり、まだ十分に解明されていないホルモンでもあります。テストステロン分泌を活発にする方法も具体的には分かっていません。なので、現段階では、「しっかりトレーニングしてしっかり食べよう」としか言いようがありません。
成長ホルモン
成長ホルモンは、子供の成長や成人の筋肉の発達に関与すると考えられているホルモンです。成長ホルモンも筋肥大で重要な役割を果たすと言われるホルモンで、タンパク質合成や脂肪分解の働きがあります。運動後や睡眠中、筋肉の回復期に分泌が盛んになることが分かっています。
しかし、運動後に血中で成長ホルモン濃度が高まりますが、それが本当に筋肥大に貢献しているかはまだ不確かです。成長ホルモンの正確な働きは不確かですが、運動や睡眠で分泌が高まるということを考慮すれば、「しっかり運動して、しっかり寝よう」というシンプルな考え方が筋肥大を助けてくれることに間違いはないでしょう。
インスリン
インスリンは血液中の糖を筋肉に取り込んだり、タンパク質合成(筋肉の合成)を促進したり、他にも様々な働きを持つホルモンです。インスリンが筋トレなどの運動で分泌されることはありません。インスリンが分泌されるのは食事で摂った糖が血中で運ばれている時です。インスリンもテストステロン同様に、筋肥大に必須のホルモンではありませんが、筋トレによる筋肥大効果を高めてくれる存在です。
筋肉の材料になるタンパク質だけでなく、インスリン分泌を高めてくれる糖質を同時に摂取してあげることが筋肥大の効果をより高くしてくれる食事法ということが知られています。
筋肥大に効率的な筋トレメニューは高重量とコンパウンド種目
筋肥大について具体的に分かっていないことも多いですが、効率的に筋肥大を起こすにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは研究結果も大切ですが、筋肥大に関してのプロことボディービルダーの意見も無視することはできません。人間も生き物なので、「絶対こうだ!」というのはありませんが、今のところ最適とされている方法を紹介します。
中~高重量で物理的な刺激を効率的に与える
1つ目は筋肥大したければ中~高重量トレーニングが最も効率的ということです。高重量と言っても、扱い切れないほどの重さではありません。正確な動作ができる範囲で、できるだけ重量を扱えると良いです。
重量を扱うことで、効率的に筋力を向上させることができます。また、効率的に大きなメカニカルストレスを与えることができると考えられています。
具体的には6~10回で限界の重量設定がおすすめです。それ以上の重さ1~5回程度もできればやってもらいたいですが、初心者の頃はフォームが安定せず、ケガの危険もあるので注意が必要です。
コンパウンド種目でたくさんの筋肉を使う・高重量を扱う
2つ目はコンパウンド種目を行うということです。
筋トレの種目を大きく分けるとコンパウンド種目(多関節種目)とアイソレーション種目(短関節種目)の2種類です。
コンパウンド種目(多関節種目)とは動作中に複数の関節が関与する種目で、それに伴って多くの筋が使われます。コンパウンド種目には高重量を扱えることと、たくさんの筋肉が動員されるという利点があります。一度にたくさんの筋肉を鍛えることができるため、筋肥大で身体を大きくするのに効率的だと言えます。例えばベンチプレスだと、肩と肘の関節が関与した動きになります。すると、主働筋の大胸筋だけでなく、三角筋、上腕三頭筋も同時に使うことになります。
一方、アイソレーション種目とは動作中に1つの関節のみ関与する種目で、少数もしくは1つの筋肉だけをメインにした種目です。その分、1つの筋肉に効かせる感覚がつかみやすいです。アイソレーション種目にはダンベルフライなどがそれにあたります。ダンベルフライでは肩関節の動作しか関与せず、大胸筋にのみ刺激が入ります。
初心者のうちはコンパウンド種目を習得しつつ全体的な筋量をつけていきましょう。そして、意識しにくい部位はアイソレーション種目で効かせる感覚をつかんでもらえると良いです。
低重量高回数のハイレップスも無駄ではない
高重量が良いとは言いましたが、低重量でハイレップス(高回数)も無駄ではありません。ハイレップスの利点は、重量設定が軽いので正確なフォームを最後まで維持しやすく、ターゲットの筋肉から刺激を逃がさずに十分に追い込みきることができます。
また、ハイレップスでは強いパンプ感(筋肉が張るような感じ)を得ることができます。パンプしている時は、対象の筋肉に血液が集中的に流れ込んでいる状態で、強いパンプ感を得ることも筋肥大に効果的と言われています。
これについては自重トレーニングの記事でもまとめました。
筋肥大のために初心者が気を付けるべき食事のポイントは4つだけ
筋トレをするのであれば、食事にも気を使わないといけないというのは分かっているけれど、何から手を付ければ良いかわからない人も多いと思います。他にも、調べるうちにいろいろな情報を得たのはいいけれど、逆にあれもこれもでわけが分からなくなっている人もいると思います。
今回はそんな人たちのために、筋肥大を目的とする食事で気を付けるべきポイントを4つに絞って解説したいと思います。
【食事の質①】タンパク質の量を十分に確保する
筋肥大のためには、筋肉の材料になるタンパク質の摂取は欠かせません。どれだけ摂ればよいかは研究によってまちまちですが、筋トレをしている人は最低でも体重or徐脂肪体重1kgあたり2gのタンパク質を一日で摂取してください。理想を言えば3g程度摂取できると良いです。
*徐脂肪体重…脂肪を除いた体重。体脂肪率さえ分かれば出せます。
研究では一日に2g前後、多くても3gくらいがベストと言われていますが、ボディービルダーではそれ以上摂るべきだという人もいるそうです(4~5g)。なので、一概には言えませんが、まずは現実的な範囲の2~3gから始めてみることをおすすめします。
ちなみに、おおよそですが鶏や豚、牛の肉100gの中に約20~24gのタンパク質が含まれています。ですので、体重60kgの人であれば、一日にタンパク質120g=肉600g相当は最低でも食べたいところです。もちろん他の食品にもタンパク質は入っているので、肉600gは基準にすぎませんが、それくらい食べないと筋肉はなかなかついてくれません。
食べるのが厳しいという方はプロテインなどのサプリメントでもOKです。
【食事の質②】炭水化物は悪者じゃないのでしっかり摂る
炭水化物は筋肉や脳を動かすエネルギー源です。車に例えるならガソリンにあたるので、炭水化物が不足していると、しっかり運動したり考えたりできなくなります。そして、使われなかった炭水化物は脂肪として蓄えられます。運動をするには炭水化物は必要なものなのですが、「使われなかった分は脂肪になる」という事だけに注目して、炭水化物を悪者認定して食事から抜いてしまう人がいます。
しかし、これは筋肉、筋肥大にとって非常にマイナスなことです。エネルギーとしての炭水化物が不足した筋肉は自らを分解してエネルギーに変えてしまいます。つまり、炭水化物が不足した状態で筋トレをすると、筋肉を減らしてしまうことになります。
つまり、筋トレをする人、特に筋肥大を望む人であれば炭水化物を抜くという事は絶対にあってはいけません。必要な量を取れば炭水化物は決して悪者ではありません!
本当はPFCバランスという食事量計算の概念があって、それをもとに摂取量を決めますが、ここで語りだすと終わらないのでまた別記事で書きます。なので、概算にはなりますが、筋肥大を望むのであれば体重1kgあたり約5~7g程度の炭水化物を一日で摂取したいところです。体重60kgの人であれば300~420gが目安になります。
【食事の量】カロリー不足だと筋肥大は起こらない
もう1つ大切なのはカロリー不足だと筋肥大は起こらないということです。筋肥大のためには1日の中で摂取したカロリーが消費したカロリーを上回らないといけません。
基本的な考え方を図にまとめました
筋肥大のためにはしっかり筋トレをしてしっかり食べるという事が大切です。消費カロリー>摂取カロリーの状態で筋トレをすると、適切なバランスの食事内容であれば筋肉を維持して脂肪が落ちますが、そうでない場合は筋肉も落ちてしまいます。
筋肥大のためには常にオーバーカロリーの状態をつくる必要があります。そしてオーバーカロリーの状態では脂肪は落ちません。つまり、筋肉を大きくしながら脂肪を落とすというのはなかなか難しいです。
筋肥大のためには、多少脂肪がついてしまうのは仕方ないので、あまり気にせずにしっかり食べてください。脂肪は後で落とせば良いと思います。その時には今より確実にいい体が出来上がっているはずです。
【食事の質②】だからと言って肉と米だけにならないようにする
最後に気を付けてもらいたいのは、「オーバーカロリーで、タンパク質と糖質をしっかりだから、肉と米ばっかり食べよう」とはならないでくださいね。脂質やビタミン、ミネラルも筋肉を作る上でも、生きていくうえでも、なくてはならない栄養素です。
先に紹介したテストステロンは脂質が材料ですし、脂質が不足していると筋肥大にはマイナスです。ビタミンやミネラルが不足しているとタンパク質も効率よく代謝されません。
つまり、筋肥大のためには偏った食事はせず、タンパク質と炭水化物以外もしっかり食べるようにしてください。
まとめ
筋肥大について少しでも分かっていただけたでしょうか?
いろいろ書きましたが、一言でまとめると
「たくさん筋トレして、たくさん食べて、しっかり休む!」という言葉につきます!
トレーニングの理論についてのまとめページ
筋肉の解説やトレーニング種目