今回は楽に綺麗に泳ぐための正しい背泳ぎの姿勢作りについて解説します。背泳ぎを習い始めた時、気を付け状態で背浮きキックをして、胸を張ること、おへそを上げることを意識するように言われませんでしたか?それ、見直すべきかもしれません。大切なことは、肺にある浮心の感覚を掴み、そこに乗るイメージを持つことです。
ビート版をお腹に持ってラッコさんみたいにしながら「胸を張りなさい」、「おへそを上げなさい」と…
目次
そもそも人間がなぜ浮かぶかを理解すれば背泳ぎの姿勢も理解できる
背泳ぎとか背浮きの前に、そもそも人間がなぜ浮くかご存知ですか?
知ってる人とそんなことどうでも良いという人はすっ飛ばしてください。
人間の場合はどうかと言うと、筋肉や骨は比重が1より大きいです。
一方で脂肪は比重が1より低くて浮かびやすい性質があります。
ぽっちゃりの人が浮かびやすくて、筋肉質な人が沈みやすいと言われるのはこのためです。
人間全体の比重は1より若干大きいと言われています。
*ただし、体脂肪率や筋肉量など個人差が大きいので一概に沈む・浮くとも言えません。
空気をしっかり吸い込むと1を若干下回り、浮きやすい性質になります。
他にも若干比重が大きいだけなので、体を動かして水をけったりして別の力を加えると浮くことができます。
そして、物体が浮かぶときは下から浮力が加わります。
一方で沈む方向に働くのが重力。
浮力と重力が釣り合うと浮かぶことができます。
浮力の働く点を浮心、重力のかかる点を重心と呼びます。
私たち人間の浮心は胸のあたりです。
これは胸のあたりに肺があり、空気をため込んでいるからです。
一方重心はおへそのあたりにきます。
ではこの浮心と重心の関係を背浮きor伏し浮きをしている時に当てはめて考えます。
何も動かずに背浮きや伏し浮きをしている状態では浮心と重心の位置がずれており、胸は浮く方向へ、おへそから下半身は沈む方向へ力が加わります。
上半身だけが浮いて下半身が沈みやすいのはこのためです。
泳ぐときにバタ足キックなどを打つのは、推進力を得る以外にも沈もうとする脚を浮かせて姿勢を安定させるという役割があります。
ですから、浮かぶためには3つのことをする必要があります。
1.浮心と重心をできるだけ近づける
2.浮心と重心の位置が近くなっても、下半身側の方が長くて重いので沈む。左右の長さと重さの違うシーソーみたいな感じ。だから上半身の浮心の方へ体重を乗せる。
3.キックなどで下半身を浮かべる
これは以前に姿勢の作り方の記事でも紹介しました。
これらを踏まえると、胸を張ることやおへそを無理に上げようとすることが特にメリットの無いことだとわかります。
むしろ胸を張ってしまうと浮心の方へ体を預けることが行いにくくなります。
背泳ぎの姿勢は骨盤をやや後傾して胸を沈める意識で後ろにもたれる
では、背泳ぎの姿勢はどのようにして作るか順に解説していきます。
最初は陸で鏡を見て確認してみてください。
まず手は体側で前を見てまっすぐ立っている時の姿勢になります。
まずこのまっすぐの姿勢ができているか確認。
下のイラストの一番左のように立てていますか?
真ん中のように猫背の場合は背中が丸まっているので肩を少し開いて背中をまっすぐにしてあげてください。
胸は張るわけではなく、前のスペースを広げるように体を上に伸ばし、本来あるべき位置にもってくるだけという感覚です。
首も倒れているので地面と垂直になるようにアゴを少々引きます。
耳・肩が一直線になるように。骨盤も過度に後傾しているので少しお尻を上げて骨盤をまっすぐにします。
一番右のような腰の反った骨盤前傾姿勢の人はお尻を軽く締めるようにしてひっこめる、おへそを軽く吊り上げることで骨盤は後傾する方に動くので、ほどよいところでまっすぐにします。
このまっすぐ立つ姿勢を陸で難なくできるようにまずは練習してみてください。
普段から姿勢の悪い人はこの姿勢をキープするだけでもちょっときついかもです。
そのまま横に倒すと気を付けの背浮きの姿勢になります。
足首は伸ばしてくださいね。
この姿勢になったら、骨盤をやや後傾させる意識を持ちます。
水中では重力の関係で足が垂れてきて骨盤が前傾しやすくなるので、人によっては後傾の意識が有るくらいでちょうど良いかもです。
よく行われている背泳ぎの練習でおへそを上げるというのがあります。
横向きにしてみると分かりやすいのですが、おへそを水面の方へ上げる意識をもってしてしまうと骨盤が前傾し、腰は沿って脚が沈みます。
ここまで出来たら、次はプールで練習します。
最初はストリームラインを組まずにさっきの気を付けの背面キックで姿勢と体重の乗せ方の感覚を身に付けます。
説明した通り、まずは気を付け背浮きをします。
胸を張ったり、おへそを無理に上げようとせず体はその形をキープ。
体が丸くなりやすい人は胴体の前面のスペースを広げておく意識(特に縦方向の意識)です。
その姿勢をキープしたまま肩甲骨のあたりから後ろにもたれるようにします。
こうすることで浮袋である肺にのっかることができ、浮心と重心のシーソーを浮心側へ傾けやすくなります。
この練習では、キックは脚が沈まない程度に最低限だけうちます。
プールに浮かぶと重力で下半身が勝手に沈もうとしていきます。
足先が沈み始め、その影響で骨盤も前傾しようとします。
なので、まずまっすぐの姿勢を作ったら、骨盤を気持ち後傾方向の意識で、膝とつま先を水面の高い位置に持っていくようにします。
これで完成です。
さっき陸でやった通りです。
まずはまっすぐ→そのあとやや後傾の意識です。
完全に後傾してしまうと沈むので注意です。
脱力したままプカプカ浮いて少量のキックをフワフワうって、体を水に預けるように楽に浮き、ゆっくり前に進んで下さい。
ゆっくりのキックで肺に乗っかっている感覚を確認しながら背面キックをしてみてください。
脚が沈む場合はキックを強くするのではなく、まずはもっと胸からもたれて肺を沈める意識を持ってください。
浮くときはバランスをとるのも大切です。
楽に安定して浮かべる位置を捉えれるように何度かトライしてください。
他人から見て浮かべているように見えても本人の感覚として浮かべていないこともあるので自分の感覚も大切にしてください。
力を入れず、楽に、そして水に体を預けるような感覚で気を付け背面キックができるようになったらストリームラインを組んでキックをしてみてください。
この時も最初は優しいキックで後ろにもたれる感覚を大切にしてください。
キックはできるだけ水面の高い位置で打てるようにしてください。
背泳ぎの浮く姿勢を習得する初心者にもおすすめな練習
いきなり背面で上手に浮けと言われてもなかなか難しいですよね。そこでおすすめなのがビート版を使った練習です。
ここまで読み進めていただいた方はもうお分かりだと思いますが、浮くためには体を後ろに乗せる意識が必要ですし、おへそを水面に上げる意識は不要です。
ビート板をお腹の前に抱きしめてしまうと体重を後ろに乗せにくくなります。
それに、ビート板とおへそをくっつけようと意識しすぎてしまうと体が反って脚が沈みます。
やるべき練習はビート板を背中に敷いて気を付けの背面キックをすることです。
ちょうど肩甲骨のあたり、胸の裏側にビート板が来るようにします。
できればビート板は少し小さい方が良いです。
背中に敷いたビート板には浮力があるので上半身を浮かせようとしてきます。
そのビート板を胸の裏側でおさえつけるように意識して気を付けで背浮きをします。
脚は軽くキックをします。
この練習をすることで胸を沈めて体を後ろに乗せる感覚がつかめるようになります。
ビート板をしっかりおさえつけれていないと、ビート板がどっかに飛んで行ったり、上半身だけ浮きまくって脚が沈みます。
抑える感覚が分かってきたらビート板を外してけのび姿勢の背面キックへと進んでいって下さい。
背泳ぎで胸を張るとストロークにも悪影響
背泳ぎをする時に胸を張るようにしてしまうとストロークにも悪影響です。
背泳ぎのストロークでは広背筋を中心とした背中側の筋肉を使って力強いストロークをします。
ところが胸を張ってしまうと肩甲骨が寄ってしまい、ストロークをする前から背中の筋肉が収縮してしまいます。既に収縮した状態の背中の筋肉を使って大きな力を生むことは難しいです。
筋肉はある程度伸びた状態から縮むことで力を発揮します。
また、肩甲骨が寄ってしまった状態では背中を大きく動かすことができないので、手だけで泳ぐ背泳ぎになってしまいます。
まとめ
まっすぐの状態に体を保ったまま体重を浮心に乗せるということが言いたかっただけです(笑)
長くなってごめんなさい。背泳ぎの姿勢づくりにおいて胸を張るようにと言われることが多いのは、初心者の場合だと背浮きになれていない恐怖感で背中が丸まってしまう例が多いためだと推測します。その場合は確かに正常なまっすぐ姿勢になるまで胸を張る必要があると思います。しかし、すでに体がまっすぐになっている人に対しても胸を張るというアドバイスをするのは良くないと思います。背泳ぎで上手く体が浮かないのは、胸が張れていないとか、おへそが沈んでいるからではなく、体を浮心に乗せれていないという理由が大きいような気がします。姿勢がなんとなくつかめたらキックもしっかり練習してみてください。
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