【水泳・論文紹介】試合前のアップは何mくらい泳ぐと良い?どんな内容?何分前?

今回は水泳の試合前のアップに関する研究をいくつか紹介したいと思います。試合前のアップはどんな量と内容を泳げばよいのか、何分前にアップをすれば良いのか、特に統一したテーマはありませんが、試合前のアップをどうして良いかわからない方や、今までテキトーに泳いでいた方に少しでも参考になれば幸いです。

試合前のアップは言うまでもなく重要です。

メニューを特に考えずに、流れに身を任せて「とりあえず体が温まるまで泳ぐ」という方も多いかもしれません。

それも1つです。

きっちりメニューを決めるのも1つです。

正解も間違いもありません。

今回は研究で分かっていることを紹介します。

ポルトガルの研究チームで水泳のアップを専門に研究されているマニアックな研究者がいたので、今回はその人の論文がメインになります(と言うかその人ぐらいしか最近は水泳のアップを研究していなさそう…。)

最終的に決めるのは自分に合うか合わないかです。

何かヒントになれば幸いです。

 

*科学的研究を紹介しますが、個人によって合う合わないがあるので自分で検証してから取り入れてください。

水泳に関する論文はそんなに多くないので、これが確たる理論ではありません。

科学は良い結果(ベストタイムなど)を保障するものではありません。

 

水泳の試合前のアップの量は何mくらいが良い?

まず最初にアップで泳ぐ量についてです。

量と言っても、内容に影響を受けるので一概に言えませんが参考までにどうぞ。

【Neiva HP et al (2015) の研究】

方法

平均年齢18.09±3.30歳の男子スイマー11人(平均ベストタイム:100m自由形58.90±2.37)のタイムトライアルを1人3回ずつ行いました。

3回のタイムトライアルの間は2日間開けました。

3回のタイムトライアルでは、それぞれ「通常量のアップ(トータル1200m)」、「少量のアップ(トータル600m)」、「多めのアップ(トータル1800m)」のいずれかを行いました。

どの日にどのアップをするかは被験者によってランダムです。

アップ内容は同じで、量に差があります。

とりあえず1人につき3回、それぞれ別のウォーミングアップの10分後にタイムトライアルが行われました。

結果

・通常のアップ 59.29 ±1.95

・少量のアップ 59.38 ± 2.18

・多めのアップ 60.18 ± 2.46

100mトライアルの平均タイムは「通常のアップ」もしくは「少量のアップ」の場合の方が「多めのアップ」よりも速かったです。

「通常のアップ」と「少量のアップ」ではタイムに差がありませんでした。

また、前半の50mのラップタイムも同様に「通常のアップ」と「少量のアップ」が「多めのアップ」よりも速く、「通常のアップ」と「少量のアップ」では差がありませんでした。

後半の50mはどのアップの場合でも違いはありませんでした。

11人中6人は「通常のアップ」で「少量のアップ」の場合より100mのタイムが良かったです。

9人は「通常のアップ」で「多めのアップ」の場合よりも100mのタイムが良かったです。

そして全員が「少量のアップ」で「多めのアップ」の場合よりも100mのタイムが良かったです。

また、アップ後とトライアル後の血中乳酸の値とテストステロン:コルチゾール比が「通常のアップ」及び「少量のアップ」で高い値を示しており、乳酸利用能やリカバリー、疲労を遅らせることに好条件だったことが原因の1つだったのではないかと考えられています。

 

所感

この研究からアップの量は多ければ良いというわけではないのが分かります。

入念なアップは大切ですが、入念過ぎてもパフォーマンスは落ちるみたいです。

具体的に何m泳ぐかはそれぞれの実力や普段の練習量によっても変わると思いますが、アップは長々とやるよりも必要な内容を手短に済ませた方が良いのかもしれません。

もっと言うと、600mしかアップしていなくてもそこそこ出るんですね、、、(笑)

 

ただしこの研究では平均ベストタイム58.90±2.37の被験者の100mのレースを想定しています。

ロング種目を泳ぐ場合や実力差によって、結果は変わってくる可能性があります。

水泳の試合前のアップはどんな内容をすれば良い?

量の次は泳ぐ内容です。

具体的には有酸素運動的な要素を強めるか、無酸素運動的な要素を強めるかではどちらが良いかです。

今回の研究もまた100mのレースを想定しています。

100mのレースは無酸素的な要素も有酸素的な要素も必要になってくるのでちょうど良いかなと思います。

 

【Neiva HP et al (2017) の研究】

方法

被験者は平均年齢17.15±1.52歳の男子スイマー13人で100m自由形の平均ベストタイムは56.72±2.24です。

1人につき2回100m自由形のタイムトライアルを実施しました。

1回はレースペースを想定した25×4本をメインにしたアップを行いました。

もう1回は50×8本でペースを指定し、有酸素的要素の強いアップを行いました。

具体的なペースは書いていなかったですが文から察するにAT、LTよりやや速いくらいのペースを維持したと考えられます。

いずれのアップもトータルは1200mとなりました。

アップをして10分後にタイムトライアルを実施しました。

2回のトライアルは48時間開けています。

どちらのアップが先かは1人1人ランダムに振り分けられました。

 

結果

2種類のアップで100m自由形の平均タイムは変わりませんでした。

ところが、内容に変化がありました。

レースペースのアップをした場合より、有酸素的なアップをした場合の方が前半の50mにおけるストローク頻度が低く、ストローク長とストローク効率が大きいことが分かりました。

つまり、1回のストロークで進む距離が大きくなり、ピッチは少しゆっくりになりました。

逆にレースペースのアップでは、有酸素的なアップに比べるとピッチは速いけれどストローク長は短いということになります。

また血中乳酸の値は有酸素的なアップをした方が低い傾向にあり、無酸素的な代謝に頼るのが少し減ったと考えられます。

 

所感

タイムに差が無いのでどっちが良いというのは言えませんが、自分の泳ぎの特性に合わせてアップ内容を変えてみるのが正解かなと思います。

自分はピッチで勝負する泳ぎなのか大きなストローク長で勝負するタイプなのかで変わると思います。

もしくは、自分は無酸素運動的な代謝と有酸素的な代謝のどちらが強いか、どちらに頼りたいのかでも変わると思います。

今回は100mでしたが距離によっても変わってくると思います。

200mや400mのレースに出たりするのなら、有酸素的な代謝やストローク長がしっかり増大させるために有酸素的な要素の強いアップをメインにするのも1つの手段かと思います。

50mでブンブン腕を回したいならレースペースで短い距離のダッシュを入れておくべきかもしれません。

アップはレースの何分前に行うべき?

アップはレースの何分前に行えばよいのでしょうか。

実際は招集などがあるので、ギリギリまで泳いでいるのは難しいかもしれませんが参考までにどうぞ。

【Neiva HP et al (2017) の研究】

被験者は平均年齢17.4±1.8歳の男子スイマー11人で100m自由形の平均ベストタイムは57.92±2.05です。

100m自由形のタイムトライアルを2回行いました。

2回のトライアルの間は48時間開けています。

2回とも同様のアップを行い、1回はアップ終了10分後にタイム測定をし、もう1回はアップ終了20分後に測定しました。

どちらのトライアルを先にするかは1人1人ランダムに振り分けられました。

すると、アップ終了から10分後のトライアルの方が平均タイムが速いという結果になりました (58.41±1.99 vs. 59.06±1.86, p < 0.01)。

 

レースの何分前にアップをすると良いかに関する研究は他にもあります。

 

【West DJ et al(2013)の研究

平均年齢18.8±1.3歳の男女スイマー8人に対し200m自由形のタイムトライアルを2回実施。

1回はアップ終了20分後に測定。

もう1回は45分後に測定しました。

時間以外の条件は同じで、トライアル間には7日の回復期間が設けられました。

その結果、20分後測定では平均タイムが2分05秒74±3.64、45分後は2分07秒60±3.55でした。

また20分後の測定の方が、トライアル直前の深部体温とトライアル後の血中乳酸濃度が高いということも分かりました。

20分後の測定の方が200m自由形のタイムが速く、その一因として深部体温が高くエネルギー利用に有利な状態だったと考えられています。

 

所感

これらの研究から、レースの10分~20分前に終わるようにアップをすると良いと考えられます。

まだ若干体がほてって、多少脈が上がっているくらいの状態でレースに挑めると良いようです。

ただし、研究ではメンタル的なところには触れていません。

あくまでも生理学的にはレースの10~20分(できれば10分)前に終われるようにアップのタイミングを調整できると良いようです。

慌てるパニックになる人には向いていないかもしれません。

サブプールでのアップができない場合にも、招集所で体温を上げるアクティブな体操などを取り入れると良いかもしれません。

 

その他:アップに関する内容

アップに関する研究は他にもあります。

・パワーブリーズとスイムのアップを併用した方が、スイムのアップのみの場合よりも100m自由形のタイムトライアルでの成績が良い(Wilson EE et al, 2013)。

・アップの量でリアクションタイムや飛び込みの飛距離は変わらない可能性がある(Balilionis G et al, 2012)

・活動後増強でパフォーマンスが上がる可能性が無きにしもあらず→以前まとめました。

研究は所詮研究です。最も大切なことは?

ここまで、水泳のアップに関する研究を紹介してきましたが、研究は所詮研究です。

ひとつの参考にして頂ければ幸いですが、最も大事なことは自分で自分の体を研究することです。

つまり、練習や試合で自分に合った方法を日々模索することが何より重要です。

試していく中で自分のパフォーマンスが最も高くなったアップが現時点の正解です。

 

普段の練習で傾向を見ることも良い手段です。

メイン練習で調子が良かった時はメインまでどんなメニューだったかというのも、試合当日のアップを考えるうえで良い参考材料になると思います。

 

参考文献

・Neiva HP et al: The Effects of Different Warm-up Volumes on the 100-m Swimming Performance: A Randomized Crossover Study. J Strength Cond Res 29 (11): 3026-3036, 2015.

・Neiva HP et al: Warm-up for Sprint Swimming: Race-Pace or Aerobic Stimulation? A Randomized Study. J Strength Cond Res 31 (9): 2423-2431, 2017. 

・Neiva HP et al: Effects of 10 min vs. 20 min passive rest after warm-up on 100 m freestyle time-trial performance: A randomized crossover study. J Sci Med Sport 20 (1): 81-86, 2017.

・West DJ et al: Influence of post-warm-up recovery time on swim performance in international swimmers. J Sci Med Sport 16 (2): 172-176, 2013.

・Wilson EE et al: Respiratory muscle specific warm-up and elite swimming performance. Br J Sports Med 48(9):789-791, 2014.

・Balilionis G et al: Effects of different types of warm-up on swimming performance, reaction time, and dive distance. J Strength Cond Res 26 (12):3297-3303, 2012. 

 

Yusan
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