活動後増強 (PAP) の利用が競泳のスプリントタイムを上げる可能性(上級者、競泳コーチ向け)

皆さんは活動後増強 (PAP: postactivation potantiation)をご存知ですか?PAPとは目的とする動作を行う前に、より高強度の類似した運動課題を行うことで、目的動作のパフォーマンスが上がるというものです。例えば垂直跳びの前に高強度のスクワットをしておくなどです。そして、このPAPの利用がもしかすると競泳の100mや50mなどのスプリントパフォーマンスを向上させる効果があるかもしれません。

 

 

なかなか試合会場で大掛かりな機材や道具を持ち込むのは現実的な話ではありませんが、工夫次第では活用できそうです。練習だと道具や機材が使いやすいと思うので試す環境がある人やチームはぜひやってみてください。まだまだ研究が少なく、これから発展していく分野だと思いますが、選手や指導者だけでなく様々な人に何かの役に立てばと思うので紹介します。

 

 

活動後増強(PAP)のメカニズム

活動後増強(以下:PAP)とは筋収縮刺激の後に筋のパフォーマンス特性が促進される現象のことです(Robibins DW, 2005)。PAPは基本的に、パフォーマンスを上げたい運動と類似した動作(CA) を事前に高い強度で行います。簡単な例だと、垂直跳びでより高く跳ぶために、事前に高強度のスクワットをするなどです。

*CA: conditioning activity コンディショニングアクティビティ

 

PAPの効果は主に爆発的なパワー発揮やスプリント競技のパフォーマンスアップの効果が確認されています。

・87%1RMスクワット3回3セットの8分後に垂直跳びパフォーマンスがアップ (Kilduff LP et al, 2008)

・5RMのスクワット5レップの後に20mスプリントのタイムが向上(Matthews MJ et al, 2004)

・90%1RMのハーフスクワット(1×10)の5分後に30m×3スプリントのタイムが向上

などその他多数

 

PAPの詳しいメカニズムについてはまだ正確には分かっていませんが、主に2つの理由が考えられています(Lockie RG, 2018)。

 

①ミオシン調節軽鎖( Myosin light chain)のリン酸化

…筋収縮の際に筋小胞体から出るカルシウムイオンに対して反応が良くなる

②動員順序の遅い運動単位の動員増加

…大きな力を出す筋線維を使いやすくなる

 

つまり、事前に準備としてCAをおこなっておくことでより強い力を発揮できる筋線維の収縮反応が良くなるということがPAPの理由として考えられます。

 

 

PAPの効果は一定数認められているものの、効果が出なかった研究もあります (Till KA and Cooke C, 2009; Lockie RG et al 2018)

 

PAPの効果を得るには影響する様々な因子を考慮する必要があり、それらの影響で効果の有無が分かれると考えられています。

 

PAPに関係する主な因子

・目的の運動とCAは動作が近いことが望ましい

・CAの強度や量

・CAから目的の運動までの休憩時間(~20分ほどまで効果が確認されているが個人差が大きいので試す必要あり)

・対象者が筋力トレーニング経験者で、筋力が高い方が効果が出やすい

 

例えば、スクワットをした後にスプリント走(50m走など)をすると、PAPが起こってタイムが上がる人もいるが、PAP反応が起こらない人もいます。走る運動は両脚同時に地面を蹴るわけではなく、片脚ずつ交互に地面を蹴るという運動です。スクワットは両脚同時であり、使う筋肉は走る時と類似していますが、運動のパターンが違います。そういう場合には片足で行うブルガリアンスクワットやランジなどの方が効果的ではないかと考えられています。

 

 

CAの強度が低すぎる場合にはPAPは起こりません。ある程度の高負荷をかけなければいけません。中強度~高強度で効果が確認されており、60~85%1RMの中強度が、85~100%の高強度よりも効果が高く体へのダメージも少ないという見解もあります (Wilson JM et al 2013; Lockie RG et al 2018) 。量も1セットだけよりかは複数セット (3セット程度)の方が良いことが分かっています。

 

 

また、PAPの恩恵を得るために、CAをおこなってから何分以内に目的の運動をするのが最適かについては、個人差があるとされています。おおよそCAから20分ほどは効果が確認されているので、個人に合わせてコントロールする必要があります(Wilson JM et al 2013; Lockie RG et al 2018) 。直後や時間が経過しすぎると効果はありません。筋力トレーニングの経験や筋力レベルもPAPに影響を及ぼします。筋力が高い人の方が高い効果を得やすく、CAからの最適な休憩時間が短い傾向にあります。

 

 

数少ない水泳とPAPの研究を紹介:負荷のかけ方を考える必要がある

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Yusan
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