今回はウェイトを使った筋トレをする人向けに肩の筋肉である三角筋についての簡単な解剖とトレーニング方法を紹介します。
ちなみに三角筋という名前の由来ですが、単純に三角だからです。三角の筋肉だから三角筋。英語ではDeltoid muscle(三角・筋肉)と呼ばれます。確かに三角ですね。特別な意味はありません、彼は三角なんです。
三角筋の解剖学:三角筋は3部位に分かれている
三角筋は肩関節の動きを制御する筋肉で、肩を覆うように付着しています。三角筋は前・中・後の3部位に分けて考えることができ、それぞれ起始部が違います。前部は鎖骨の外側1/3、中部は肩峰、後部は肩甲棘というところに付着しています。停止部は全部同じで上腕骨に付着しています。難しい名前が出てきましたが、とりあえず鎖骨や肩甲骨と上腕骨をつないでいると理解してもらえればと思います。
三角筋の機能は肩関節の外転・屈曲・水平屈曲・水平伸展・内旋・外旋で肩関節の動きのほとんどに関わっています。つまり三角筋は上腕骨を引っ張るようにはたらくので、物を持ち上げる時や引き上げるときに機能します。そのため頭上にダンベルやバーベルを持ち上げるプレス系の種目や腰のあたりからダンベルを持ちあげるレイズ系の種目が代表的な三角筋のトレーニングです。
引用:「改定版 身体運動の機能解剖学」Thompson Floyd著 翻訳:中村千秋・竹内真希, 医道の日本社, 2012年 書籍はこちら
肩関節の動きが分からない人はこちらの解説を参考にしてください
ここで三角筋についてまとめると
前部:起始は鎖骨外側1/3、停止は上腕骨中部外側の三角筋粗面。肩関節外転・屈曲・水平屈曲・内旋
中部:起始は肩峰、停止は前部と同じ。肩関節外転。
後部:起始は肩甲棘、停止は前中部と同じ。肩関節外転・屈曲・水平屈曲・外旋
三角筋をトレーニングするときのポイント・コツ
三角筋のトレーニングで気を付ける主なポイント・コツは3点です。1点目は三角筋にピンポイントで効かせるということです。三角筋は関節可動域の広い肩関節に付着している筋肉で、姿勢や動作の崩れで効かせることが難しいと感じる人がいます。2点目は負荷をいかにして逃がさないかについてです。特にレイズ系種目では「負荷が逃げてしまう人」も多いので、ここで紹介するポイント1点目と2点目を踏まえて効果的なトレーニングを行ってください。3点目は、三角筋のトレーニングでは頭上にバーベルやダンベルを持ちあげる種目があるので、軌道と負荷の受け止めに注意して安全に行うということです。
①姿勢に注意して三角筋にピンポイントで効かせるコツ
三角筋にピンポイントで効かせるためにまず大切なのは姿勢です。胸を軽く張り、肩甲骨を軽く寄せた姿勢をキープして動作をする必要があります。レップ数を重ねてくると疲労で姿勢が崩れ、本来ターゲットにしていない腕や背中の筋肉に負荷が逃げてしまいますが、つらい時こそ姿勢をキープできるように意識します。
肩甲骨の寄せ方は①寄せて、②下げるです。内転と下制です。
肩甲骨を寄せたままにすることで三角筋以外の筋肉の動員を下げることができます。
ピンポイントで効かせるためにもう1つ大切なことは三角筋の収縮を意識することです。肩を動かすというよりは、三角筋を収縮させ起始と停止を寄せると結果的に肩が動く・腕が上がるというイメージで行います。筋収縮の結果で骨格が動くというイメージを持てば筋肉に意識を向けやすくなり効かせることができます。
②降ろし切らずに負荷を逃がさない
2点目はウェイトを降ろし切らず、負荷を逃がさないということです。筋トレではレップを繰り返しますが、ウェイトを降ろしている局面でも完全には降ろさず常に筋に緊張を保っておくようにしましょう。
③ウェイトは骨格で受け止める
3つ目はウェイトを持ち上げる軌道と姿勢に注意して骨格で負荷を受け止めるということです。これは特にショルダープレスなどの「頭上にウェイトを持ち上げる種目」で特に気を付けるべきポイントで、安全にトレーニングを行うために重要です。身体のラインから大きく外れた軌道をバーやダンベルが通る、もしくは挙げきったフィニッシュ時に体のラインから離れたところにウェイトがあると腰や肩のケガにつながります。基本的にはウェイトは身体の近くを通り、フィニッシュ時は身体とウェイトが一直線の関係で骨格にウェイトが乗っているという状況が好ましいです。また、負荷設定が重すぎて姿勢が崩れてしまう場合にもケガの原因になります。特にプレス系種目では過度の反り腰になるような重量はやめておきましょう。
プレス系のトレーニングではもちろん腹圧を入れるのも大切です。腹圧の入れ方については背中のトレーニングの記事で解説しているのでわからない方は下記リンクへ。
肩のトレーニングで高重量を扱いたい、フォームに不安がある、安全にトレーニングをしたいという人はもちろん、しっかりウェイトトレーニングに取り組むのであればトレーニングベルトをつけることで姿勢の安定と腰の保護に役立ちます。
バーベルで行う三角筋のおすすめトレーニング
バーベルを使って行うトレーニングでは比較的高重量を扱えることが特徴です。バーベルを使った三角筋のトレーニングの中でおすすめの2種目を紹介します。
「持ち上げる基本動作」ミリタリープレス・フロントプレス・ショルダープレス
1つ目はミリタリープレスです。フロントプレスやオーバヘッドプレス、ショルダープレスとも呼ばれていますが基本的に同じトレーニングを指します。バーベルを両手で頭上に持ち上げる種目で、高重量も扱いやすいです。現在筋トレのBIG3はベンチプレス・デッドリフト・スクワットですが、かつてはベンチプレスの代わりにミリタリープレスがBIG3の一角を占めていました。つまりそれだけ効果的で良いエクササイズということです。動作は下の動画みたいな感じです。
・目線を前に定めます。
・動作中は腹圧を入れます。腹圧が入っていないと体をまっすぐに保てません。腹圧が分からない人はこちらの背中トレーニングの記事を参照
・グリップは肩幅よりこぶし1つ広いくらいで順手で握ります。少し八の字にするとバーベルが腕にしっくり乗ります。
・バーベルを構える位置は鎖骨のあたりです。この時肘を軽く前に突き出すようにします。
・そのまま上にあげていきますが、アゴに激突するのでアゴを軽く上げて回避。
・バーベルが顔の前を通過したら顔は戻します。
・バーベルは身体スレスレを通ります。体の重心から大きく外れないように。
・フィニッシュ時に上にバーベルを持ち上げただけでは不安定なので最後に僧帽筋を使ってバーベルを安定させます。背後から左右の肩甲骨の間を軽く押されるようなイメージで僧帽筋に力を入れます。
・おろしてくるときは自分の鼻を目指して降ろします。激突するので少しアゴを引いて回避。スタートに戻れます。
ミリタリープレスは三角筋全体に効果がありますが、複合関節種目で姿勢の安定も必要で全身を使うので、腕・腹筋・背筋・脚まで強化することができます。言うなれば全身の強さが求められる種目です。
アップライトローイング
アップライトローイングはバーベルを肩の高さまで下から引き上げるトレーニングです。
英語ですが分かりやすくておすすめの動画を紹介します。
・動作中は身体がブレブレにならないように体幹部を強く保ちます。
・グリップは順手ですが親指を外したサムレスグリップが効果的です。
・肩幅より狭く握ると三角筋前部と僧帽筋に特に刺激が入りやすいです。
・肩幅から肩幅よりやや広いワイドグリップにすると三角筋の中部によく刺激が入ります。
・肩にインピンジメントがある人はワイドグリップ、もしくはやらないことをおすすめします。
・肩の高さまで引き上げます。
アップライトローイングの時は腕で引くのではなく、肩の動作で引き上げてください。僧帽筋の関与をどうしても減らして三角筋にだけフォーカスしたい人はバーベルの位置をやや前にして肩をすくめる動作を抑え、バーベルを垂直に上げるイメージがあると良いです。
ダンベルで三角筋を鍛えるおすすめ種目
三角筋はダンベルでもトレーニングすることが可能です。家で筋トレをするためにまずはダンベルを買うという方も多いはずです。ダンベルがあれば三角筋は十分に鍛えることができます。ダンベルを使った三角筋のトレーニングではサイドレイズやフロントレイズといったレイズ系種目はよくおすすめされていると思います…が、今回はプレス種目を中心に紹介します。レイズ種目はまたの機会に。
まずはスタンダードなショルダープレス
ショルダープレスはミリタリープレスのダンベルバージョンみたいな感じです。動きはずいぶん違いますが、似たような効果を得ることができます。両手に持ったダンベルを肩の高さから頭上へ持ち上げます。三角筋への刺激はもちろん、強烈な効果ではありませんが上腕三頭筋、腹筋なども補強することができます。
注意点としては
・肘は地面と垂直で前後左右に倒れない。
・腹圧をしっかり入れる。
・肩をすくめる動作が入らないように肩甲骨を下げた状態で動作を行う。
・肘が肩に対して一直線だと三角筋中部、肘が体より少し前だと前部に刺激が入りやすいです。
・過度に背中が反るような重さは使わない
今回紹介した動画などはこちらのNSCAジャパンの資料集からの引用です。
さまざまな基本エクササイズについて学べます。
https://www.nsca-japan.or.jp/12_database/exercise/resistance.html
難易度は高いけど効果的なアーノルドプレス
最後に紹介する種目はアーノルドプレスです。アーノルド…?アーノルド…?そうです。あのアーノルドさんです。
デデンデンデデン!!
(C)2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved. https://eiga.com/news/20180411/8/1/01/ また新作やるみたい。
アーノルドシュワルツェネッガーが考えたそうです。
アーノルドプレスはショルダープレスに回旋動作を加えた種目で広い可動域を生かして三角筋にばっちり刺激を入れることができます。完結に説明されていてとても分かりやすい動画なので紹介しておきます。
手の甲を前に向けた状態でダンベルを構えます。肘を外&上に開きながらプレスしていきます。手のひらを返していく感じです。フィニッシュするときにはダンベルショルダープレスと同じ形になります。ダンベルを降ろすときは逆の動作で肘を内にたたんで元に戻ります。アーノルドプレスの良いところはボトムで手の甲を前に向けているのでショルダープレスより可動域を広く取れるところです。
回転のタイミングに特に決まりはありませんが、フィニッシュの時に回転し終わっているくらいでOKです。手が回旋していますが前腕自体の軌道は斜め上で体の方へ挙げるイメージです。
以上、簡単に種目の紹介をしました。三角筋には他にもたくさんの種目があるのでぜひいろいろ試してみてください。
まとめ
今回は三角筋の簡単な解剖学とトレーニング種目の紹介をしました。トレーニングも筋肉も奥が深くてこんなもんじゃ語りつくせないと思いますが、これからトレーニングを始める人やトレーニングをもっと深く知りたい人のきっかけになればと思います。理想の三角筋を手に入れるべくお互い頑張りましょう!!