【心理学と水泳】試合で緊張や不安に打ち勝つ②:続き

前回の続きです。

試合で本来の泳ぎができなくなるのは、不安や緊張が引き金となって、既に自動化された動きをコントロールしようとするからでした。

前回の記事はこちらから

前回まで紹介した対策は、①試合を想定した練習、②招集場所に早く行き過ぎない、③考えるのをコーチにある程度任せる この3つでした。

対策④:細かいことではなく全体的なことに注意を向ける

試合の本番で細かいところに目を向けると、どうしても技術的な面を意識してしまいます。

例えば「頭」を意識して泳ごうとしたとします。

そうすると絶対「頭」だけで済まないですよね。

「頭の位置を動かないようにしよう」とか技術的なことを意識してしまいますよね。

試合でそんなこと気にしなくて大丈夫です。

練習で何回もやったじゃないですか。

練習であなたの頭はもう動かないようになっています。

ちゃんと自動化されています。

なのに頭を意識してしまうとどうなるか。

泳ぎは全身の強調で成り立つ運動です。

「頭の位置」を意識下においてコントロールしようとすると全身の歯車が狂い、キックやストローク、その他様々なことのタイミングや力加減が本来の自分ではなくなります。

 

試合では何を考えれば良いのでしょうか。

それはもっと大きく全体的なことです(1)。

例えば泳ぎ全体のイメージです。

・フラットに泳ごう

・前に前に進もう

・軽やかに泳ごう

・手を速く回そう

・スーッといこう

 

他にはペースや大まかな戦略のこと

・ラスト25mになったらスパートしよう

・前半は軽く入ろう

・だんだん上げていく感じで泳ごう

・ターン後長く潜ろう

・隣についていこう

 

いずれも技術的なことには言及していません。

自動化され無意識で動くことができる、その中でできることに注意を向けます。

対策⑤:ドキドキは逃走か闘争か?

そうは言っても私が一番困っているのは、心臓がドキドキすることなんだ!!!

そんな声が聞こえてきそうですから、ドキドキについても言及しておきます。

 

本番前はほとんどの人がドキドキします。

生理学的に言うと心拍数が上がります。

なぜか。

アドレナリンが出ているからです。

すごいですよね。

人間は感情によってホルモン分泌の状態が変わるのですから。

心と体は繋がっていると実感できますね。

 

アドレナリンの分泌が盛んになると、心拍数の増加(ドキドキ)し手が汗ばんできます。

こうして書くと、運動するには有利な状況だと捉えることができます。

心拍数が上がると血流が良くなり運動しやすくなります。

手先が汗ばむと程よい湿気で物を落とさないことに有利になります。

 

アドレナリンがドバっと分泌されるこうした反応は「闘争か逃走か」という言葉で有名です。

戦う時、逃げる時、体は同じ反応を見せるからです。

違うのは心のありようです。

心と体は繋がっています。

体の反応を良いものに捉えるか悪いものに捉えるかは心次第です。

 

戦う時、「血気盛ん」という言葉にあるよう血のめぐりが良く無ければいけません。

手から武器を落としてはいけません。

ドキドキは必要です。

 

ドキドキは逃げる時にも有利です。

全力で走るには瞬時に高い心拍数が必要になりますから。

 

鬼ごっこをしている時のあの感覚。

逃げる時、鬼の時、体は同じ状況ですが違うのは心です。

鬼は血気盛んに追う気持ち(闘争)、逃げる時はつかまりたくない気持ち(逃走)。

 

逃げるは恥だが役に立つ。

よく言ったものです。

生理学的にも同じ反応をしていますから、闘争ばかりが生存上の得策ではありません。

 

しかし、残念ながらスポーツでは基本的にスタート時は「闘争」でなければいけません。

(逃げ切れば勝ちの状況では逃走になるかもしれませんが)

ドキドキしてきた時の捉え方には2種類あります。

 

胸の高鳴りと捉える人。

不安のドキドキと捉える人。

 

両者ともドキドキしています。

しかし後者は不安や緊張と捉え、それが触媒となって自動化された動きをコントロールすることに繋がります。

前者は「闘争の準備が整った」と捉えるので自動化を害する可能性は低いでしょう。

 

出番を目前にドキドキしてきた時、あなたの心はどちらの捉え方を選びますか?

嘘でも「胸の高鳴りだ」とポジティブな暗示をかけ、闘争に気を向かわせた方が体が不本意な動きをする可能性を下げることができるのではないでしょうか。

対策⑥:余計な情報をシャットアウトするか気を散らすか

本番の開場と言うのは五感からたくさんの情報が入ってきます。

この情報の使い方も本番で失敗しないための戦略として活用できます。

情報をシャットアウトした方が良いか、情報を入れて気を散らした方が良いかは人によります。

 

例えば、試合で泳ぐ前に会場を見渡し「たくさんの人がレースに注目している」と思うと不安に襲われてしまう人であれば視覚をできるだけシャットアウトした方が良いかもしれません。

自分のレーンだけを1点見つめる、近くの物だけを見るといったように。

 

一方、余計なことをたくさん考えてしまうひとであれば、あちこちを見て自分の気を逸らすことが得策かもしれません。

 

ちなみに、音楽を聞くというのも不安の軽減や体の準備を手伝ってくれると言われています。

これについても科学的研究を元に過去記事にまとめているので詳しくはそちらをご覧ください。

https://yu3trn.com/sport-competition-race-music/

音楽の種類や個人に応じた聞き方について言及しています。

音楽を聴くことは聴覚的なシャットアウトや気を散らす作戦にも使えます。

最後に

いかがだったでしょうか。

本番に自分のパフォーマンスを発揮できないというお悩み解決に少しでも貢献できれば幸いです。

ここでは書いていませんが、ルーティンを決めるというのも得策です。

(正確にはプレパフォーマンスルーティンと言います)

 

えらそうにブログなんて書いてますが、本番ってなかなかうまくいきませんよね。

僕も人生で上手くいったレースや発表なんて数えるほどです。

ちなみに上手くいった時は大体ゾーンに入っていて、記憶がありません(笑)

 

今はマスターズスイマーでお気楽な身ですが、年齢と共に体も衰えていくと思うので、できるだけ若いうちにタイムを出したいものです。

そう思うとお気楽の身だからと言っても限られた本番でしくじりたくないです。

 

<参考文献>

1.「なぜ本番でしくじるのか」 シアン・バイロック著 東郷えりか訳 河出書房新社 2011

スポンサードリンク
名前をクリックでレビューがご覧になれます。

Links

こちらのクリニックでトレーナーをしています

レッスンでの取り組み姿勢 最近の記事