ファンクショナルトレーニングは身体の機能性(ファンクション)の獲得を目的としていて、アスリートだけでなく子供から高齢者、男性にも女性にも幅広い方に効果的なトレーニングです。しかし、説明が分かりづらく、いまいちピンとこない方も多いと思います。そこで今回は例え話を交えながらファンクショナルトレーニングを簡単に説明します。
ファンクショナルトレーニングをするジムやスポーツクラブのプログラムも増えているので、選択のお手伝いになれば嬉しいです。
ファンクショナルトレーニングとは体の運転免許を取るイメージ
機能的な身体とは日常生活やスポーツ中に効率的な動きとケガのリスクが低い動きができる身体のことを言います。
私たち人間は決まった骨と筋肉の数、関節の数で作られています。
つまり、それぞれの筋肉や関節が本来もっている機能を効率良く使いこなし、人間としての本来の機能を取り戻すことができれば「機能的な身体」を手に入れることができます。
スポーツをやるうえでもっと強くなろうというならば、さらに発展してトレーニングで体を使いこなせるようになっていく必要があります。
ファンクショナルトレーニングはそのためのアプローチとしてアスリートから一般の方まで幅広く活用できます。
というわけで、分かりやすくするために車で例えます。
体(筋肉や関節、骨など)は車本体です。外装やエンジン、タイヤなど。
運転する人は「脳」です。
もし仮に無免許の人が車に乗ったとします。
無免許の人は運転する方法が分かりません。
方法が分からないのに運転をしたら、真っ直ぐ走れず、思うように曲がれず、停車もできず、最後は事故。
無駄にフラフラ走行するのでガソリンを無駄に使うし、目的地まで遠回りをするし、最後は事故するし散々です。
もしくは、運転の仕方はばっちり分かっていても、それを実現するにはボロボロで性能の悪い車だと、これまた事故をします。
体と脳も同じです。
体の使い方を知らない(忘れた)=脳が無免許運転状態 だと、無駄な動きが多くなりますし、事故(ケガ)も起こします。
もともと使い方は遺伝子に書いてあるのですが、テクノロジーの発達で便利になりすぎて忘れた我々人間。
ファンクショナルトレーニングでは体を操縦する能力を鍛えるのがまず1つの目的となります。
つまり、脳という運転手に体という乗り物の運転免許を取らせに行きます。
スポーツの上達が遅い人の特徴の1つは体の運転能力が低いことです。
もう1つの目的は技術を再現するフィジカルを作っていくことです。
体は車体と言いました。いわゆるフィジカルです。
フィジカルを鍛えるトレーニングには様々なものがあります。
バーベルやダンベルでの筋トレは筋力・パワー・筋持久力などの向上を目的としています。
これはつまり、車の本体をカスタマイズしてスピードをもっと出せるように改造することと似ています。
持久系のトレーニングは燃費を良くしたり、搭載できるガソリンの量を増やすのと似ています。
言うなればフィジカルのトレーニングは、体の限界値(キャパ)を高めることが目的です。
これら一般的に言われるフィジカルトレーニングもとっても重要で、貧弱だといくら頭でわかっていても操作を実現できません。
つまり、こういったトレーニング自体もファンクショナルトレーニングです。
また、ダンベルやバーベルを使ったトレーニングも、走るトレーニングもフィジカルだけでなく操作性も高めてくれます。
そう考えると、ファンクショナルトレーニングっていう区分はあまり明確には存在しません。
一般的に売り出されているファンクショナルトレーニングは特殊な道具を使ったりしますが、伝統的なバーベルトレーニングやダンベルトレーニング、自重トレーニングでも良いのです。
ここまでをまとめると、
ファンクショナルトレーニング=体の運転免許を取る・運転技術を向上させる。運転に必要なフィジカル強化。
特殊な道具や動きを使うことがファンクショナルトレーニングではない。
ファンクショナルトレーニングの原則を簡単に説明
身体の機能性を高めるためにファンクショナルトレーニングには5つの原則があるとかないとか言われています。
①重力を利用する
重力に耐えなきゃいけない姿勢でトレーニングをします。
②分離と協同
動かすべき関節はしっかり動かして(モビリティ)、 固定すべき関節はしっかり固定して(スタビリティ)動作を作り上げよう。
③キネティックチェーン
身体全体の繋がり、力の伝達を意識してトレーニングをしよう。
④3面運動
いろんな方向や姿勢でトレーニングをしよう。
⑤力の吸収(loading)と発揮(unloading)
一旦力をためてから解放して効率よく力を出そう。脚を曲げないとまともにジャンプや走ったりできないよ。
ヒザ神になりますよ(アメトークの運動神経悪い芸人見ている人なら分かる)
(中村 2010年)
詳しくはここに載ってます。入門書です。
難しく書いてるけど、どれもよく考えたら当たり前なことです。
重力を利用しないと、日常生活より負荷が上がらないのでトレーニングにならない。
例)立ってるだけよりプランクの方がしんどいけど筋肉の使い方はほぼ同じ。そしてプランクは正しい立位のためのトレーニング。
どの関節も動いてばかりだと動作は成立しないし、もちろん力も伝達しない。
色んな方向に体の向きを変えてトレーニングしないことには1つの動作に偏った体になる。
反動無しに人は跳べない、反動を使えば大きな力を出せる。
別にファンクショナルトレーニング!!って謳って改めて考えなくても、筋トレでもなんでも普通にやっていることですよね。
ファンクショナルトレーニングの流れ
一般的なファンクショナルトレーニングと言われるものの大まかな流れを紹介します。必ずしも当てはまるわけではありません。
①ウォーミングアップでは各種ストレッチやツールを使って関節の可動域を広げたりアライメント(位置・配列)を整えます。
②安定させるべき関節を安定させるべく、スタビライゼーションのトレーニングをします。
③安定した状態を保ったまま、動きのトレーニングをします。
→安定すべき関節が安定し、動くべき関節が大きく動く。そしてそれぞれ単独で動くのではなく協調して動く。
→運動を学んでいくことにつながる。(例)腕を挙げるには、どこを安定させてどこを動かすか知る。
→そしてその動作に必要な柔軟性やフィジカル、力の入れ方、動かし方をトレーニングします。
④動きを踏まえた上で大きなパワーを出すトレーニングや専門競技に特異的なトレーニングをします。
⑤体をほぐしたりして終わりです(クールダウン)。
個人の状況によって②~④は1セッションで一気に行う場合もあれば、長い期間をかけてじっくり取り組んでいく場合もあります。
まとめと個人的な意見
いかがでしょうか。
ファンクショナルトレーニングについて大まかに理解していただけたでしょうか?
ここで紹介したのはベーシックな内容をかみ砕きまくったものです。
実際はこんなに単純なものでもなく、奥深い世界だと思います。
それはどんなトレーニングにも言えることです。
自分が一番言いたいことは、、、、
フィジカルも機能も両方バランスよくトレーニングしていくってのも1つの手段として良いと思いますよ。
でも、自分が好きだったり信じるものがあるなら好きな方をやりまくるのもありです。
どっちの方が凄いとか、片方しかやってないのはダメとかはありません。
実際に両方十分な量とクオリティでやるとなると時間も労力もかかります。
結局は自分の目標や状況に適したこと、やっていて楽しいことが大切です。
健康やパフォーマンスはトータルで考えるものです。
そこには機能もフィジカルも心も自分も他人も全てが含まれます。
最終的に今より良い方向に向かえれば正解は人それぞれで、自分を卑下することも他人を批判することもないと思います。