健康な生活、スポーツ上達、美しい姿勢作り、転倒や咄嗟の刺激からのケガ予防にとても重要になる足裏についてのお話をしたいと思います。足裏は立位の人間が唯一地面に接触している部分で、すべての土台となる場所です。適切な荷重と把持で地面に吸着することで本来の姿勢や力発揮、踏ん張りが引き出されます。トレーニングではどうしても派手な筋肉や動きに目が行きがちですが、それよりもまず足裏のコンディショニングが先だと思って止みません。
これはスポーツでも健康運動でもボディメイクでもダイエットでも言えると思います。
また、足の使い方が悪いせいで自分の能力を最大限発揮するのを邪魔しているかもしれません。
この記事だけですべてを説明することはできませんが、きっかけづくりになれば幸いです。
【基礎知識】
*足の指のことは足趾(そくし)と言います。
この記事でも「足趾」と言ったり、分かりやすさを重視して適宜「足指」、「足の指」と表記しますが全て同義とします。
*脚は骨盤から足首の上までを言います。足は足首から下を指します。
目次
足の正常なコンディションとは?
コンディションが悪いから機能が悪い場合と、悪い機能(動きなどのクセ)が原因でコンディションが悪い場合の2パターンがありますが、どちらが先かは断定が難しいです。
ですが、いずれにせよ普段の過ごし方や意識付け、トレーニングで改善するということは共通しています(特殊な病気やケガは除く)。
立ち上がって自分の足を見下ろして確認してみて下さい(裸足で)。
①足の爪が全部見えること
…ヒールをよく履く女性などは小指が横向いていたり、爪が無いに等しいことがあります。
②全ての指が前を向いていること
…特に外反母趾の人などでは親指が内側を向いて付け根の骨が出っ張ったりしています。逆に小指が内側に向く、内反小趾もチェックです。
③指が全て伸びていること
…指が全て伸びていないと上手く地面をつかむことができません。また体の背面や足趾の屈筋群が硬い可能性があります。
④指が浮いていないこと(紙などをつま先から突っ込んでも入らなければOK)
…指が地面から浮きすぎている浮指になっているとしっかり踏ん張って歩けていない可能性があります。
足裏の正常なコンディションとは?
上から見た足のコンディションを確認したので、次は足裏のコンディションチェックです。
体の中で足の裏が占める割合はわずかですが、立位時に人間が唯一地面と接触するのは足の裏です。
足の裏こそが「立つ」「歩く」「走る」といった様々な動作の土台であり起点であり、始まりの場所です。
ところが、土台のくせして足の裏はとても小さく、少しの狂いで全身に異常が出ます。
というのも人間は悪いなりに何とかしちゃう生き物だからです。
足裏のミスは足首がカバーしようとします。
すると足首も本来ではない動き=ミスをします。
これを代償と言います。
足首のミスは膝がカバーしようとします。これも代償です。
このような感じで、足裏の異常が原因で全身の関節の代償が連鎖していき、結果的に姿勢の崩れやよくわからない痛み(不定愁訴)を生みます。
代償をしたままの姿勢でトレーニングをガツガツ行うってどうなんでしょうね。
そのまま続けていると毎日の小さな積み重ねで、いつか体のどこかに異常が出ると思います。
健康やダイエット、スポーツのために運動しているのに本末転倒です。
また、姿勢が悪く、踏ん張る機能も低いままトレーニングやスポーツをしていても自分の持つ力を最大限発揮できるはずがありません。
土台がしっかりしていないのにいくら上だけ強くなっても力を引き出せなければ非常にもったいないです。
アーチはこんな感じで、拇趾球、小趾球、踵の三点をむすぶ3つのアーチがあるはずです。
裸足だとこんな感じです。
3点にバランスよく荷重して立てていること、アーチを保って立てていることが重要です。
以下チェック項目です。
・3つのアーチが潰れていないか
…足裏全体がべったり地面についている感覚があると怪しいかもです。
・立っている時に母趾球、小趾球、踵の3点に乗っている+指が伸びて接地している明確な感覚があること
…これがあればほぼ問題が無いようにも思えます(笑)
・内側にばかり荷重がかかって外側が浮いていないか
…内側アーチが潰れている可能性があります。偏平足やX脚の場合によく潰れています。
・外側にばかり荷重がかかって内側が浮いていないか
…外側アーチが潰れている可能性があります。O脚の人などでよくあります。
・踵やつま先だけに重心が乗っていないか
…3点にバランスよく乗りつつ指で地面を軽くかむのが基本となります。
これらの異常が当てはまる場合は、何らかの理由で3点に均等に荷重がかかっておらず、体のどこかに負担が来たり姿勢の歪みを招きます。
足裏の張りが酷い場合には、体の背面を中心とした筋肉の使い過ぎや疲労で筋膜が癒着していることが考えられます。
例えば、足裏をセルフマッサージやフォームローラー、テニスボールやゴルフボールでほぐしてあげるだけでも前屈が多少なり楽になったりします。
↓アマゾンの検索結果へのリンクです。
ゴツゴツの突起が付いた製品や電動機能付きがおすすめです。
ちなみに僕は最初2000円くらいの安価なものを買ったら半年で潰れました(笑)
安かろう悪かろう…
足の機能のチェック:足は自由かどうか
上から見下ろした足の様子や、足裏のコンディションが悪い原因の1つに「足の自由度が低い」ということが考えられます。
・足の指でグー
…ただグーをするだけでなく、しっかり握りこんで指の付け根の骨が出てくるくらいグーができるかを見ます。
・足の指でパー
…5本の指の間がしっかり開きますか?足には無数の筋肉があるので上手く使えれば開きます。
・足の指でチョキ(親指が上)
…親指だけを天井に向かって挙げる、その他の指は付け根から下へ。
・足の指でチョキ(親指が下)
…上記と逆の動作です。2種類のチョキは足指の伸展筋、屈曲筋をそれぞれ独立して動かせるかのチェックです。
もしできない種目があったら練習してみてくださいね。
他にも、先に紹介した足裏の張りも足の自由度を下げるので疲労が溜まってきたら、ほぐすのも忘れずに。
立つときの良い足裏の使い方
ここで立つときの良い足裏の使い方を紹介しておきます。
またチェックしてみてください。
3点に乗る+指が伸びる+付け根から吸着+踵を少しねじ込むイメージ
立つ時は左右のくるぶしを着けて、つま先は若干外を向けます。
まずは、母趾球、小趾球、踵の3点にバランス良く乗ります。
過度な踵重心やつま先重心はしなくて良いです。
母趾球だけとか、小趾球だけに重心が乗るとアーチが潰れやすくなります。
3点にバランスよく乗るイメージを持ったら、足趾が全て伸びていることを確認します。
足趾は伸ばしたまま、脱力を心がけつつ足趾の付け根から足趾全体で地面をかむようにします。
ここまで上手くできていれば、3点に乗りつつ地面に脚が吸い付く感じがあると思います。
最後に少し小指側から開くように踵をねじ込む意識を持つとお尻の筋肉が軽く締まります。
開いてねじ込む時、見かけ上では足の位置を動かしません。
また、踵1点に乗ってしまわないように注意です。
足裏の機能を良くするトレーニングを何個か紹介
足の機能を良くするトレーニングは、先に紹介したグー・チョキ・パーもおすすめですが、他にも何個かあるので一部紹介します。
①踵歩きで足趾のコントロール
踵歩きをします。
最初はただつま先を地面から上げて踵歩きです。
指の筋肉に余計な力が入っていると指が伸展して反ってしまいます。
指はリラックスして真っ直ぐ伸ばしておきます。
足首を背屈する前脛骨筋だけを単独で使うトレーニングです。
その状態でしばらく歩けたら、次はその状態でグー・チョキ・パー・指を反らせる をやってみてください。
グーができない人は浮指、チョキができない人は内側・外側いずれかのアーチが潰れている可能性があります。
②足趾で物をつかむトレーニング
「足で物つかんだりしたらアカン!行儀悪いで!」って子供の頃に叱られたことはありますか?
僕はあります。横着なのでしょっちゅうしていました。
足で落ちているティッシュ拾ってそのままゴミ箱にポイってしてました。
でも実は「足で物をつかむ」というのはとても足の機能に良いのです。
もしかして親御さんの言いつけを守って行儀よくしすぎてきた人は足の機能が低いかも…。
トレーニングに使うものはなんでも良いです。
最初は太めのペンなんかがおすすめです。
座っても立ってでもOKです。
地面に置いたペンを足で拾います。
つかんだままどこか別の所に置きます。
次は、拾ったペンを左右の足で受け渡ししてみてください。
ここまで出来たら、いろんな形、大きさ、硬さのものでチャレンジしてみてください。
足でつかむ、保持する、開く、様々なトレーニングになります。
③つま先(付け根)歩き
つま先歩きもおすすめです。
つま先と言うより足の付け根から立ち、母趾球と小趾球に乗っていること、足趾が地面と接していることを感じてください。
真っ直ぐ歩いたり、横に歩いたり、足の開き具合や角度などをいろいろ変えてみてください。
どれくらい外に開いたり、内股になれば小趾球or拇趾球に乗れなくなるかを感じてみてください。
この種目は足裏のストレッチにもなります。
張っている人や硬い人は立つだけで足裏がめっちゃ伸びます。
④体幹のついでに足も…「プランク」
多くの人が「体幹トレーニング」言われて思い浮かべるのはおそらくこの種目。
そう、プランクです。
プランクは立つ姿勢のトレーニングです。
立つ姿勢に重力をかけて過負荷にしたのがプランクです。
つまり、プランクをする時は体幹だけでなく足にも意識を持つ必要があります。
プランクをする時はしっかりと踵を後ろに踏み、足趾で地面をしっかりつかんでください。
写真で踵は見切れていますが、足趾が地面をしっかりつかんでいることは確認できると思います。
踵を踏み込むと体は足方向へ引かれるので、それと釣り合うように手で地面をつかんで上半身でバランスを取ります。
これらのトレーニングに加えて、ストレッチやほぐしをメインにしたコンディショニングもおすすめです。
筋肉が凝り固まっている人、張りが酷い人などは今回紹介したトレーニングの前や後に行うと効果的です。
足をほぐすセルフケアはまた別の記事に書きます。
トレーニングはできるだけ素足で行おう
「私たちは裸足で歩き、走るように作られている」という言葉があります。
またミケランジェロは「靴より裸足の方が貴いといことがわからない精神とは、なんて虚ろで盲目的なのだろうか」と言ったそうです。(Til Luchau, 2016)
実際に裸足で生活したりスポーツをすることの良い悪いは議論が絶えないようですし、それに関して議論はしません。
裸足で生活やスポーツをすることは日本ではほとんど無理だと思います。
しかし、もともと靴を履くことを前提として生まれてきたわけではないのは真実です。
サイズの合わない靴やヒールなどの特殊な履物のせいで足に異常が出るのも事実です。
やはり、足裏の感覚と機能をフルに使えるようにするには裸足で運動する機会を増やすべきではないかと思います。
そこでオススメするのが裸足でのトレーニングです。
トレーニングジムやウェイトを使ったトレーニングの際は危険が伴うので裸足はNGですが、家や芝生での自重トレーニングなど安全面に問題が無い場合は裸足でのトレーニングをおすすめします。
地面をしっかりつかむ、踏ん張るということに意識を置いてトレーニングをしてみてください。
同じスクワットや腕立て伏せでも感覚が全く違います。
参考文献
・Til Luchau 斎藤昭彦(監訳):ビジュアルで学ぶ筋膜リリーステクニック1 肩、骨盤、下肢・足部. 医道の日本社, 2016