今回も水泳上達のコツについて紹介します。このブログだけでなく、他のブログ、サイト、動画サイトやSNSまで水泳のコツや方法に関する情報はたくさんあります。こうだったのか!という気づきも多く、明日からあれもこれも試したくなると思います。情報が多いことは有難いことですが、1つ問題があります。調べて得た情報を意識して泳ぐことになると思いますが、我々人間は不器用なので1度にあれもこれも意識して泳ぐと頭がパンクしてしまうということです。
そこで重要になるのが
「考えるけど、考えすぎてはいけない」
はたして手も足も姿勢も息継ぎも…ってふうにあれこれ一気に意識しながら、考えながらって泳げるのかということです。
一度に意識したり考えたりできる量には限りがありますので、頭がパンクしないようコントロールしながら泳ぐ必要があります。
そこで今回ご紹介する上達のコツはワーキングメモリについてのお話です。
ワーキングメモリの話
私たちが一人一人が持っている頭のキャパを示す概念に「ワーキングメモリ(作業記憶)」というものがあります。
ワーキングメモリは短い時間の中で情報を保持し、同時に処理する能力のことを言います。
ある情報を処理しつつ、一時的に必要な情報の保持もするって言った方が分かりやすいかもです。
また、同時に複数の課題を実行することを二重課題と言います。
二重課題の実行は1つの課題を実行しつつも、もう1つの課題についても頭に留めながら実行することになります。
つまり、二重課題の実行はワーキングメモリに影響されます。
ワーキングメモリ、二重課題の例
・電話番号を一時的に覚える=ワーキングメモリ
・電話番号を覚えたまま計算問題を解く=二重課題 ワーキングメモリが足りないと電話番号を忘れたり計算が遅くなったりする
・きちんとした会話をしながら計算問題を解く=二重課題 ワーキングメモリが足りないとどっちかができない
泳いでいる時の例
・姿勢を維持することを意識したまま、ストロークの意識(手をしっかり伸ばすなど)をする。
・200m泳ぐとして、50mごとのストローク数をカウントして記憶しながら、ストロークの意識(手をしっかり伸ばすなど)をする。
・呼吸制限(3回に1回)のカウントをしながら、ストローク数をカウントする
ワーキングメモリには個人差があり、例のようなことができる人・できない人がいます。
元々のワーキングメモリが大きい人、普段の練習で複数課題に挑戦してワーキングメモリがトレーニングされている人は一度にできる課題が多くなります。
ところが、スポーツの場面で二重課題を実行する時にはもう1つ重要な考え方があります。
それは目的とする動作の自動化による影響です。
初心者は周りが見えない
自動化については以前紹介させて頂いたので詳しくはこちらを参考にしてください。
自動化とは、目的とする動作を習得し、特に意識せずともできる状態のことを言います。
自動化の程度はワーキングメモリに影響を与えます。
分かりやすい例にサッカーの初心者と上級者があります。
サッカーの上級者はボールを扱うこと自体の動きに慣れていますから、相手や味方の位置、次にパスを出すコースなど周りを良く見る余裕があります。
一方、初心者はボールをドリブルすることで精一杯ですから、相手の位置や味方の位置を見ている余裕があまりないです。
練習してボールの扱いが上手になっていくうちに試合で見える景色が変わり、前に見えなかったパスコースが見えたりします。
泳げない人は1かき1かき必死ですが、本格的に長年水泳をしている人であれば、泳ぎの1つ1つの動作には全く意識を向けずに何か別のこと(ストローク数や今日の晩御飯何にしよう)を考えながら泳ぐことができます。
泳ぎながら別のことを考える。
これは本来二重課題ですが、泳ぎが自動化されている場合、泳ぎそのものに使うワーキングメモリが少ないので別のことを考える余裕があります。
まだ泳げない人や泳ぎがおぼつかない初心者に、泳ぎながらストローク数をカウントしなさいと言っても無理です。
手の回し方やキックの打ち方、目線、姿勢など泳ぎそのものに割くことで精一杯なのです。
決められたキャパの中で、それをどう振り分けるかが熟練度で変わってくるわけです。
考えすぎずほどほどに考えて泳ごう
先にも言った通り、初心者を脱して中上級者になってくると、泳ぐことそのものに使うワーキングメモリが減るので、泳ぎながらストローク数をカウントしたりペース配分を考えたりできます。
中上級者の場合でも、フォーム練習をするということは今の動作パターンとは異なる新しい動作パターンを体に自動化していく作業です。
つまり、意識的に動作をしなければいけません。
その分のワーキングメモリを使います。他のことを考える余裕が少しなくなります。
では、修正したいフォームや意識したい動作が複数ある場合はどうでしょうか。
キャッチを治したい、キックをもっと細かく打ちたい、お腹を引き上げておきたい、頭の位置をぶらさないでおきたい、と言った具合です。
こんな感じで、どんどんキャパが無くなっていきます。
上級者でもたくさん意識すると簡単に頭がいっぱいになります。
また、課題によって複雑さ(難易度)も違います。複雑なほど容量が必要です。
個々のワーキングメモリの大きさは決まっています。
上記の意識を4つとも同時に意識して泳げる人もいますが、ワーキングメモリのキャパを超えてしまって、どれかがおろそかになったり、頭がごちゃごちゃになって何もできない人(↓)もいます。
要素がたくさん加わるともっと余裕がなくなります。
例えば、スピードを上げてきつくなってきたり、タイムやストローク数に気を配ったり。
つまり、泳ぐときには考えるけど考えすぎてはいけません。
あれもこれも考えたり意識をすると頭の容量が追い付きません。
自分が余裕を持って意識できる分だけ考えて泳ぎます。
手の角度を意識することで頭がいっぱいの人が、キックやら姿勢やらまで考えるとパンクします。
・今取り組んでいるフォームの修正点が体に染みついて自動化されてから他のフォームを意識
・1本泳ぐときに意識するのは自分のキャパの範囲内の個数まで。(*)
(*)4つ意識したいことがあるけど自分の限界が2つなら、1本目は2つ、2本目は残りの2つと言うように切り替える。
かと言ってたくさんあれもこれも意識してはいけないわけでもありません。
複数課題をこなそうとすることでワーキングメモリのトレーニングになり、キャパが増えていきます。
2つで限界の人でも3つ意識することにチャレンジしていく精神は大切です。
水泳のまとめ一覧です。泳ぎのコツやトレーニング理論など紹介しています。