今回は泳ぎの上達を効率良くするために知っておくべき手順とコツについて紹介します。楽に泳ぎたい、タイムを向上させたいなど泳ぎの練習をする目的は様々あると思いますが、すべてに共通していることは、今できない技術をできるようになることだと思います。つまり、上達するということ。水泳に限らず運動の上達にはおおよそ3段階あると言われています。この3段階と「意識・無意識」を考慮した練習を積むことで上達を加速させます。
泳ぎの上達3段階
運動スキルの上達には3段階あると言われており、もちろん水泳にも当てはまります。
フォームの修正点やまだできない泳ぎ方、技術など新しいことを教えてもらったり、自分で仕入れて来たりした時にこんな経験はありませんか?
とか
実はこれって当たり前のことなのです(一部天才を除く)。
特に取り組み始めてすぐ。
何か新しく教わった・理想とする動きをしようとした場合、その動きは今まで体がやってきた動作パターンとは違う動きです。
その動作ができるようになるということは体に新しい動作プログラムを構築することです。
つまり、新しい動作に取り組み始めてすぐの時はプログラムがまだ不安定で脳からの指令ルートも鈍かったり遠回りをしている状態です。
自分の理想通りにいかなかったり、ぎこちなくなってしまうのは当たりまえのことなのです。
動作を繰り返しおこなっていくことで身体にプログラムがインプットされてスムーズに動けるようになります。
最終的には意識せずともできるようになります。
泳ぎ終わったら何しようかなぁとか、練習疲れるなぁとか余計なことを考えていても体は理想通りに動けばそのフォームやスキルを習得した、泳ぎが上達したと言えます。
以上が上達のプロセスです。
このプロセスを踏まえた練習をすることを心がけてみてください。
そのために上達の3段階を考慮すると効果的です。
第1段階:試行錯誤する段階
第1段階は気づきの段階とか試行錯誤の段階と言われます。
この段階では、まず今の自分の泳ぎがどうなっているのか、何を改善していくべきなのか気付く必要があります。
理想とするフォームや泳ぎを映像やお手本、アドバイスを基に具体的にイメージ・理解します。
イメージと理解ができたら実際に泳いで動いていきます。
体の各パーツの位置、動かすタイミング、強さ、速さ、力の入れ具合など1つの動きを構成する要素はたくさんあるので、この段階ではいろいろ考えながら泳ぐことになります。
ですので、動きがぎこちなかったり、なぜか理想通り動けないこともたくさんあります。
それでも良いのです、1つ1つの感覚を大切にしながら泳いでいくことで少しづつできるようになっていきます。
第2段階:意識的な調節段階
第2段階は考える段階とか調節の段階と言われます。
この段階では、目的とする動作が意識していればある程度大雑把にできるようになる段階です。
「意識すればある程度できる段階」なので意識しなかったり気を抜いたりすると安定してできない段階でもあります。
この段階でも試行錯誤は続きます。
意識するといっても意識の持ち方が違えば失敗しますし、上手くいった場合でもたまたま上手くいっただけならば、次にやった時にまた上手くいかなかったりします。
「こうやって動かしてみよう」という意識を持てばある程度大雑把にできる中で、ミスであったり、もっとよくするための小さな修正点を直していく繰り返しの中で動作が研ぎ澄まされていきます。
~~~~翌日~~~~
最終段階:自動化の段階
最終段階は自動化の段階です。
この段階になれば、目的とする動作のプログラムが体にインプットされます。
何度も動作を繰り返す中で、その動作が体に染みつき、効率良く動くためのプログラムが組まれ、意識しなくても上手に動ける段階です。
歩きながらスマホでこの記事を見ているあなた。
あなたの歩行動作は自動化されています。
(幼児の時に自動化しました)
歩行へ意識を向けていなかったはずです。
右足をこんな風に出して。次は左足を…なんて考えていないと思います。
意識はこの記事にあったと思います。
泳ぎもこれと同じです。
泳ぎのペース配分を考えたり、晩御飯のメニューに思いをはせながらでもできるようになります。
理想とする動きが自動化され、無意識でもできることで習得となります。
注意点:上達の3段階は良くも悪くも機能する
上達の3段階の最終段階は自動化でした。
目的とする動作の繰り返しの中で自動化が起こりますが、1つ注意点があります。
それは、悪い動作も自動化されるということ。
体にとっては良い動作も悪い動作も分別がつきません。
良い動作だろうが悪い動作だろうが繰り返される動作を楽に効率良くこなすべく体は適応します。
もし新しい技術を習得すべく練習している時に、自分では理想的に動けていると勘違いしたままその動作を繰り返すと、誤った動作が自動化されてしまいます。
ですので自分の感覚に自信がない人は誰かに見てもらったりして客観的に情報を得ることも大切です。
もしくは、正しい動作だけを繰り返すことにフォーカスしてみてください。
10回泳いだうち、6回悪い動作で4回理想の動作なら体は6回の悪い動作の方を覚えます。
ですので、とりあえず10回泳いでみたって練習をするくらいなら、確実に正しい動作をしようと集中した4本の方が上達への近道になります。
あとは、ダウンやアップで気を抜いてフワフワテキトーに泳いでいる時も要注意ですよ。
上達の3段階を練習で活用するには?
最後に上達の3段階を練習で活用する方法を提案します。
具体的には3つです。
①脳に余裕を持たせてあげる
②動きの速さと複雑さのコントロール
③練習量ではなく、正しい練習量を増やす
①脳に余裕を持たせてあげる
動作をコントロールするのは脳です。
脳からの指令で体が動きます。
でも脳にもキャパがあります。
習得したい新しい動作を練習する時、脳は様々なことを考えるので忙しくなります。
なのでできるだけ他のことに使うキャパを減らしてあげましょう。
・一度にたくさん新しい動作を意識して泳がない。修正点や新しい動作の意識は泳ぎ1本につき多くて2つくらい。
・ペース配分やストローク数、タイム、呼吸数など他に考えることがある練習とは分ける。
・技術練習はサークルやセット間などの休憩を多めにとったメニューにする(1本ずつしっかり振り返れる時間があるくらい)
こちらでも関連した話を書いています。
②動きの速さと複雑さのコントロール
動きが速い、もしくは複雑であるほど細かい意識がしにくくなります。
全力で泳ぐときはゆっくり泳ぐときほど細かい動作のコントロールが難しくなります。
キックだけをしている時の方が手と足両方を使ってスイムをしている時より、キックの意識とコントロールがしやすいです。
全力でスイムをしたときに発揮できる技術は自動化されている、もしくは自動化に近い技術がほとんどです。
ただし、これは個人差があるので全力で泳いでも意識とコントロールができる人はできます。
できない場合は、スピードを落としてコントロールをします。
それでも難しい場合は、さらにゆっくり動いてみます。
それでも無理なら、片手泳ぎに変えたり、キックだけ、プルだけなどパーツに分けて動作の複雑さを減らして練習します。
ドリル練習はこの段階だと思います。
まだまだ難しい場合は、水からも上がって陸で動いてみましょう。
浮くことも1つの複雑さなので、陸で行うと少し簡単になる場合があります。
③練習量ではなく、正しい練習量を増やす
先にも言いましたが、脳が覚えるのは正しい動作ではなく、たくさん繰り返された動作です。
悪い動作の方が繰り返しが多ければその動作を覚えます。
ですので技術的な練習をする時は、練習量にこだわるのではなく、正しい動作ができた量にこだわってみてください。
技術練習では何m泳いだかではなく、正しい動作で何m泳げたかが重要です。
正しく何m泳げたら自動化されて泳ぎが上達するかを断言することはできませんが、、、。
一例ですが、、、
A:100m泳いだけどとりあえず泳いだ感が強くて、10mしか正しく動けていない人
B:100m泳いだうち80m正しく動けた人
2人を比較した場合、AがBと同じだけ正しい動作をしようと思えば800m泳ぐ必要があります。
しかもAは割合的に正しくない動作の方が多いです。
つまり体が自動化するのは、、、、もうお分かりですよね。
水泳のまとめ一覧です。泳ぎのコツやトレーニング理論など紹介しています。