クロールを楽に泳げない理由の一つに息継ぎが難しい、つらい、水を飲んでしまう、というのが挙げられますが、ちょっとしたコツに気を付けると今より楽に息継ぎができるようになると思います。今回はクロールの息継ぎがつらい4つの理由と、それを改善して息継ぎを今より楽にするためのコツを紹介したいと思います。
クロールをする時の呼吸の方法とフォームを修正すれば楽に泳げるようになります。
ポイントは2です。
・水中で息を吐ききってしまわないこと。
・呼吸をする時に顔は上げるのではなく回す などフォームの改善。
目次
クロールの息継ぎがつらい理由①:呼吸方法に問題がある
クロールの息継ぎがつらい1つ目の理由は呼吸方法です。呼吸方法に問題があると言うのは、フォームがどうこうではなく、息を吸って吐く方法に問題があるということです。
呼吸とは空気を吐いて吸うものです。言い変えると、空気を吐かないと吸えませんし、吸わないと吐けません。そして、泳ぐときは肺からしっかり空気を入れ替える意識をもってください。泳いでいる時の基本は息継ぎの少し前に鼻から息をブクブクと吐き(出し)始めて、顔を水面に上げた時にパッと口を開いて吸います。まずはこの基本の呼吸サイクルができていることを確認してください。
吸ってばかりだと空気は入ってこないので、息継ぎを何回しても苦しいです。もしくは肺でしっかり吸う吐くができていない場合にもしんどいので深い呼吸を心がけます。頭では分かっていても実際にクロールを泳いでいる時にできないパターンも良くあるので、要チェックです。
そして、空気を吐いて吸うという基本の呼吸サイクルができていてもまだ息継ぎがつらい場合があります。
それは…
息を吐ききっていない場合
息を吐ききるのが早すぎる場合
この2点です。
ではこの2点を改善するためのコツを次章で紹介します。
呼吸方法改善のコツ
基本の呼吸サイクルができてる場合でも、息継ぎの時にある程度息を吐ききっていないと息継ぎはつらいかもしれません。水泳は他の運動と違って一度の呼吸で、一気に大量の空気を吐いて吸うという特殊な呼吸パターンをしています。それは息継ぎという限られたタイミングと時間でしか空気を吸うことが許されていないからです。
新しくたくさんの空気を吸うには、もちろん肺に余裕がないといけません。つまり、ある程度吐ききってしまわないと新しい空気が入ってこれません。息継ぎの時は「自然な範囲で肺から空気を吐ききる」というのが1つ目のコツです。限界を超えて吐ききることを努力呼気と言いますが、そこまでしなくて大丈夫です。
吐ききるということができたら後は吐ききるタイミングです。吐ききるタイミングが早すぎると、吸うまでの時間がかかりすぎてつらいですし、顔を上げる前に吐ききってしまうと鼻に水が入ったり、吸うのを急ぎすぎて口にも水が入る場合もあります。水中で全て吐ききってしまわないように注意です。かといって水面に顔が出てから吐き始めても遅いです。
息を吐くのは、水中で始まり、口を開けて新しい空気を吸う直前までです。つまり、水中でほとんど、95%くらいは吐ききってしまいますが、残りの5%くらいは水面で吐きます。その反動で吸うように意識をします。
クロールの息継ぎがつらい理由②:顔の上げ方に問題がある
クロールの息継ぎがつらい理由の2つ目は顔の上げ方です。ここからはフォームの話になります。クロールの息継ぎでが楽にできない時はだいたい姿勢が崩れています。首から腰まで人間は背骨で1本につながっていますから、首の動きは姿勢に影響を与えます。顔を上げようと意識しすぎるあまり、首が前後左右に動いてしまうと姿勢が崩れてしまいます。逆に、姿勢が悪いと思い通りに首も動きません。
首の動は大きく分けて3種類です。一応、正しくは頚椎の動きと言います。
まずは縦の動きで、屈曲と伸展です。上の図の左が屈曲で右が伸展です。うなずいたり、空を見上げる、ヘッドバンキングする時の動きです。
2つ目が側屈です。首をかしげるような動きです。
最後が回旋です。頭を回す動きです。
クロールの息継ぎが上手くいかない人の多くは、伸展、側屈、回旋が同時に大きく起こって水面から大きく顔が上がってしまいます。本来であれば回旋をするだけで、伸展や側屈はほとんどなくてもクロールの息継ぎはできます。頭は水面から上げるのではなく、ただ回すだけです。
正しい動きでクロールの息継ぎができないのには、首の動作自体が悪いパターン、姿勢が悪いパターン、そしてストロークや呼吸のタイミングなど別に理由があるパターンがあります。まずは次章で姿勢と首の動作を改善するコツを紹介します。別に理由があるパターンについては後の章を参考にしてみてください。
クロールの息継ぎの顔の上げ方の練習方法
この章ではクロールの息継ぎの顔の上げ方と、正しく顔を上げるための練習を紹介します。
まずは頭の動きを陸で確認してみましょう。最初は気を付けで立ったままで良いので前章で紹介した回旋を左右でしてみてください。横を向くだけを意識します。自分の首が動く範囲で大丈夫です。回旋という動きを覚えて下さい。
次に自分がクロールで呼吸をする側を想定して、横向きに寝ころがります。下の腕は前にのばして、腕に頭を乗せて顔を地面の方へ向けておいてください。左右の肩は地面と垂直にし、足先まですべて一直線にします。この状態で鼻から息を吐きながら首の回旋だけをして真横に近い斜め上を向きます。斜め上を向いたら息を口から吸ってまた首の回旋だけで顔を元に戻します。これを繰り返します。
この2つの陸での動作がスムーズにできたら水中でのドリルをします。1つ目はサイド気を付けキックです。体を全て横に向けて気を付けキックをします。顔を水面に出して真上を見ます。脚が沈まない程度にバタ足を軽く打ちます。下半身が沈みそうになる時は体重を胸のあたりにかけていきます。この姿勢でバランスが取れたら、首の回旋だけさせて顔を水中に入れ、プールの底を見ます。またしばらくしたら息を吐きながら顔を水面に戻してきます。このドリルのポイントは背骨を軸に頭をただ回すだけという意識を持つこと、下半身が沈みそうなら体重を胸のあたりにのせて姿勢を保ってバランスをとることです。
姿勢が崩れると綺麗に回りませんし、頭がきれいに回らなくても姿勢が崩れます。上手くバランスを取りながら頭を回せるように練習してみてください。
ここまで出来たら、下の手を前にのばして、先ほど紹介した陸練習と同様の動きを水中でやってみてください。いわゆるサイドキックです。水中の場合は腕と顔をピッタリつける必要はありません。自然に腕が伸びる位置でOKです。肘と手は肩より少し下に位置するはずです。
クロールの息継ぎがつらい理由③:左右のストロークのタイミングに問題あり
クロールの息継ぎがつらい3つ目の理由は、左右のストロークのタイミングに問題があって姿勢が崩れていることです。具体的に言うと、手をかくのが早すぎることです。
クロールで息継ぎをする時に下の手の位置が肩の真下に近い場所にあると、手をかくタイミングが早すぎです。息継ぎの時に肩、肘、手が水面に対して垂直だと姿勢、顔の上げ方が崩れてしまいますし、顔を水中に戻した後も姿勢が崩れます。いわゆる、手が沈む、手が下がるという状況になります。
手をかくのが早すぎる人は、今よりもう少し前で手を伸ばしたまま我慢することを体に覚えこませて、ストロークのタイミングを改善する必要があります。
ストロークのタイミングを良くするためのコツ
クロールのストロークのタイミングは、リカバリーしてきた手がだいたい前の手の肘くらいに来たら、前の手のストロークを始めます。このタイミングを覚えるためにおすすめなのがキャッチアップドリルとそこからの漸進です。
キャッチアップドリルとは、リカバリーしてきた手が前にのばしている手にタッチしたら、前の手をかき始めるという方法でクロールを泳ぐドリルです。このドリルで、手を早くかきすぎるのをこらえて、前にのばしておく感覚が養えます。
しかしキャッチアップのタイミングだと実際にクロールを泳ぐタイミングとは異なりますし、人それぞれ自分に合ったタイミングがあります。そこで、キャッチアップドリルに慣れてきたら少しずつ前の手をかき始めるタイミングをずらしていきます。キャッチアップドリルの次は手が触れる直前、その次は肘の上あたりを通過したタイミング。肘の上あたりを通過したタイミングより早いと、早過ぎなので、肘付近で自分のしっくりくるタイミングを調整してみてください。
クロールの息継ぎがつらい理由④:顔を上げる・戻すタイミングに問題あり
クロールの息継ぎがつらい理由のラストは顔を上げる・戻すタイミングにあります。クロールの息継ぎで顔を上げるタイミングは手で水をかききった時です。言い換えると、手が水面に出てくるのと同時くらいに顔も上がってきます。まだお腹の下あたりに手があるのに顔を上げてしまうとちょっとタイミングが早いかなという印象です。
そしてもう1つ、顔を上げるタイミングはまだ感覚がつかみやすいのですが、顔を戻すタイミングにも注意点があります。顔の動きと手の動きのタイミングを一緒にしてしまう人がいますが、クロールの息継ぎとストロークは独立した別々の動きと考えてください。詳しくは次章で解説します。
息継ぎとストロークは別もの:息継ぎをしたらすぐに顔を戻す
クロールの息継ぎで長い時間空気を吸っていたい気持ちはわかるのですが、、、息を吸ったらすぐに戻します。そもそも水泳では先にも紹介した通り、一瞬でたくさん息を吸うという独特の呼吸パターンをしています。そのため本来は一瞬で空気を吸えるので、長く顔を上げていても特にメリットは無くて、姿勢が崩れやすい、動きが止まりやすいというデメリットだけがあります。
息継ぎで上げた顔を手と一緒のタイミングで戻していると少々遅いと思います。クロールの息継ぎとストロークは別々の独立した動きですので、息を吸ったらすぐに顔を戻します。感覚的には、リカバリーしてきた手がエントリーするより少し先に顔が水中に戻っているくらいです。実際にはコンマ数秒のことなので難しいかもしれませんが、吸ったらすぐ戻し、顔を上げて長居しないということがコツです。顔は手より早く戻すという意識をもってください。
息継ぎのタイミングを磨くにはビート板片手クロールが良いと思います。できる人はビート板無しでもいいですが、ビート板があった方が楽で息継ぎに集中できるのでおすすめです。息継ぎで顔を上げる・戻すタイミングだけに集中して片手クロールをゆっくり泳いでいきます。
水泳のまとめ一覧です。泳ぎのコツやトレーニング理論など紹介しています。