今回は意外と知られていない、水泳における臀部の筋肉の機能の関係性、重要性について書いておこうと思います。水泳と言えば、体幹を真っ直ぐに保つ能力が求められるため、腹筋群の強さと使い方に関してはトレーニングでも重要視されています。ですが、体幹部を真っ直ぐ(正確には直線ではないが、ストリームラインということで)に保つには腹筋群だけの意識では少し不十分です。そこで必要になってくるのが臀部の筋肉と、腹筋よりも上(胸郭)の意識とコントロールです。
今回は臀部(以下:お尻)にフォーカスして書いていきます。
特に、①が重要で、①ができることで②と③に繋がっていきます。
骨盤の傾きと締まりをコントロールするお腹の力とお尻の力
泳ぐときの良い姿勢は骨盤が過度に前傾も後傾もせず、中間位~やや後傾の状態になり、骨盤が締まっている状態です。
背中を見ると、腰回りが平坦になります。
この状態を作るためには、体の前側から骨盤を引き上げる意識と、お尻側から骨盤を引き下げる意識、仙骨を立てる意識が大切になります。
水泳の世界ではお腹周りの筋肉をしっかりトレーニングします。
これは体の前側から骨盤を引き上げて、骨盤の前傾を防ぐために大切です。
ただ、それに加えてお尻の穴を締めて骨盤を下げる方向(後傾方向)の意識を使えば、より簡単に骨盤を中間位~やや後傾に保つことができます。
より簡単というより、使わないと姿勢を作れません。
ただし、注意して頂きたいのが何事もバランスが大切ということです。
強く締めることが正解ではなく、骨盤を良い所にコントロールすることが重要です。
まずはしっかり胸を開いて伸びあがる意識を持った上で、お尻の穴締めで骨盤を調節します。
そして、骨盤を締めるには仙骨を立てる感覚が必要になります(参考:吉田 2015)。
こちらも方法はお尻の穴を軽く締めるわけで、上記のことをしていれば結果的にそうなるのですが。
仙骨は通常の状態だと若干傾いています。
お尻の穴を締め、この仙骨下へ引っ張るようにすると仙骨が立って骨盤が締まります。
丁度腰を丸める方向に力を入れ、腰の反りを潰すような。
恥骨を上に向けるような。
お尻を絞っていくような。
男子であれば男の勲章を上にツンっと向けるような。
この感覚の理解に最もオススメの書籍はこちらです。
とても分かりやすく書かれています。
また、骨盤の傾きは泳ぎの中でも変化します。
ドルフィンキックやバサロキック、バタフライや平泳ぎのキックを打つときに動きます。
その時にも常に中間位に硬く保持しておくわけではないですね。
腰椎への負担を減らすために重要
お腹周りをコントロールして腰椎を守るため、アスリートも一般の方もお腹周りを意識した良い姿勢を心がけるのは良い戦略です。
ですが、この時もお尻を締めておく意識が必要となります。
腹圧を意識して、姿勢をコントロールすることの一要素にお尻の使い方があります。
この腹圧の一要素であるお尻の穴を締める意識を勝手にここでは「ケツ圧(お尻を締めておく意識)」と呼びます。
ケツ圧は先輩トレーナーさんの造語を勝手にお借り致しました。
ケツ圧が抜けると泳ぎの中でどうなるかと言うと、泳いでいる時の姿勢で腰が反ってしまいます。
腰が反ることは一概に悪いことではありませんが、腰椎が過度に伸展することで腰が反ると負担になります。
ケツ圧の意識が抜けている人のバタフライ、平泳ぎで顕著に見られます。
特にバタフライでは、お尻の筋肉を使えていないと、キックで膝が大きく曲がって抵抗にもなります。
背泳ぎやクロールでもキックの位置が低くなったり、腰が反りがちになります。
特にバタフライを習いたての子どもを見て頂くと分かりやすいです。
息継ぎ時に腰から全身が思いっきり反って、キックでは膝が大きく曲がっています。
まだ子どもは大人より体が柔軟なのでそこまで腰を痛めることは少ないですが、競泳クラスに入って泳ぐ量が増えたり、成長と共に筋力がついてくると腰を痛めることがあります。
よく、ジュニアスイマーが腰椎分離症という腰の故障に悩まされるのも、この「過度な反りによる負担」が原因の1つです。
腰椎分離症と水泳についてはまた続きの記事で詳しく書きます。
この「過度な反りによる負担」を減らすためにも、お腹側からの意識とお尻からの意識を使って腰椎を守る必要があります。
バタフライや平泳ぎ、背泳ぎやクロールを泳いでいる時も常にお腹側とケツ圧の意識を抜かずにいます。
ぎゅー――っと締めるというよりは、感覚を持っておくぐらいのイメージです。
(筋力やフォームの崩れなど、状況によっては結構ぎゅーっとしておかないといけない場合も有りますが。)
そうすることで、腰への負担を減らしながらキックやプルを使うことができます。
キックに重要な股関節の伸展を出すため
股関節には伸展という動作があります。
水泳では、クロールやバタフライのキックでこの動作が使われます。
ところが、この股関節の伸展はお尻を上手く使えないと「見かけ上の伸展」になります。
見かけ上の伸展とは、腰が大きく反ってしまい、腰の力で脚を後ろへ振り上げている状態です。
これでは股関節の動き自体はさほど大きくありません。
加えて姿勢もブレまくります。
股関節の伸展を本当の意味で使うには、お尻を締める必要があります。
そうすることで腰を反らせず脚を後ろに振り上げることができます。
泳いでいる時に、キックの度に腰が反って大きく姿勢が崩れる人は股関節の伸展ができていないかもしれません。
これに関してはケガ予防ともリンクしていますね。
お尻の筋肉を意識するための種目
お尻を意識するには、泳ぎの中で締めておくことはもちろん、陸でもトレーニングができます。
こちら、おすすめのトレーニングです。
お腹とお尻をしっかり締めて、骨盤を中間位~やや後傾に保ちます。
”ケツ圧”がしっかり入っていないと、腰で代償的に足を持ち上げてしまいます。
その他インスタでは体幹トレーニング、スイマー向けトレーニングを配信しています。
またお暇な時にチェックやフォローお願いします。
まとめ
お尻の筋肉を意識することが水泳で大切な理由は3つ。
1.骨盤の角度をコントロールする(姿勢維持)
2.腰椎の負担を減らしてケガを予防する
3.股関節の伸展を出す
お尻の意識はパフォーマンスを上げてケガを予防するためのものです。
陸で行うスポーツではお尻の筋肉が超重要視されます。
水泳でも超重要です。
是非、体幹トレーニングの時やスイム練習の時にお尻をキュッと締めて、骨盤をコントロールしてみてくださいね。
参考:7つの意識だけで身につく強い体幹 吉田始史 2015
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