水泳でよくあるケガの1つである水泳肩(スイマーズショルダー)。このブログでも過去に詳しく特集しました。
今回は水泳肩を予防するためのコンディショニングについてまとめていきたいと思います。
泳ぎのフォームのエラーは過去記事をご覧ください。
今回は陸で行うコンディショニングを紹介していきます。
目次
水泳肩とは何ぞや(復習)
そもそも水泳肩とは何ぞやということを簡単に確認していきたいと思います。
より詳しい内容やインピンジメントになりやすいフォームについては冒頭で紹介した過去の記事をご覧ください。
水泳肩という病名はなく、正式には肩関節のインピンジメントと言います。
水泳が原因になる水泳肩の多くがインピンジメントです。
以下、過去ブログから抜粋です。
インピンジメントとは肩・腕を挙げる動作をするときに肩に痛みや引っかかったような詰まり感があり、それ以上動かせない症状の総称です。肩関節を動かした際に上腕骨と肩峰(肩の出っ張った骨)が間にある腱板や滑液包を挟み込むことで痛みが生じます。水泳以外でも野球など投球スポーツでもよく見られる症状だそうです。
インピンジメントは動作が繰り返されることで症状が悪化していきます。違和感を感じた時点ですぐにその動作を控えていれば少しずつ痛みは取れていくようですが、動作を反復することで慢性的になってしまいます。どんどん進行して酷い症状の場合は腱板を断裂してしまったり骨が棘状になったりして厄介だそう。
インピンジメントになるそもそもの原因としては、
・フォームが悪い(姿勢、肩の使い方に問題があるまま酷使)
・コンディションが悪い(使えていない筋肉がある、筋肉が拘縮している)
などが考えられます。
肩甲骨が機能不全なまま肩を使っていたり(※1)、筋肉の拘縮などで肩甲骨が上手く使えていなかったり、筋肉のアンバランス(※2)があったり。
※1:肩甲上腕リズムという肩甲骨と肩の連動が上手く使えていない。
※2:肩の内旋筋は多く、どれも強い(大胸筋や広背筋)。しかし、外旋筋は小円筋と棘下筋だけ。そのためアンバランスになりやすい。
特に、棘上筋という筋肉にインピンジメントが起こりやすいです。
というのも棘上筋は肩甲骨の上の方から走って、肩峰から潜り込んで上腕骨についています。
この潜り込みがあるので腱が骨に接触しやすくなります。
肩のローテーターカフについて知る
棘上筋や棘下筋といった筋肉は肩のローテーターカフという総称で知られています。
ローテーターカフは4筋で構成され、肩関節の安定化を担っています。
こんな感じです。
この中の棘上筋にインピンジメントが起こりやすいです(もちろん他もなる)。
棘下筋、小円筋は外旋作用(肩を外へ開く)を持っていますが、ここが衰えると内旋筋群とアンバランスになり、インピンジメントになりやすくなります。
肩甲下筋という筋肉が肩甲骨と肋骨の間にありますが、この筋肉も内旋に関わります。
この筋肉が緊張や短縮していることでもインピンジメントを起こしやすくなります。
予防①:外旋筋群を鍛えてバランスを整えるエクササイズ
大胸筋や広背筋といった肩関節を動かす筋肉は水泳でも大活躍します。
これらの筋肉は全て肩の屈曲や伸展(上げたり下げたり)以外にも内旋作用(内に捻る)を持つ筋肉です。
いずれも強い力を発揮することができる筋肉です。
運動をするにあたって非常に役立ちますが、その反面バランスを取ることを忘れてはいけません。
強いが故に引っ張られがち。
人は内旋しやすいようにできていると言っても過言ではありません。
というわけで、内旋筋群に負けないように外旋筋群を鍛えていきましょう。
トレーニングに使う道具(いずれかを選択)
・エクササイズ用のチューブやバンド
・軽めのダンベル
・ペットボトル(水や砂を入れて)
棘下筋のトレーニング
棘下筋のトレーニングです。
脇を締めた状態から、肩を回して手を外側へ動かします。
チューブの場合は引っ張る。
ダンベルやペットボトルなどのウエイトの場合は高さを変えずに動かします。
強い負荷を与えるというより、軽めの負荷でフォームを乱さずに回数をこなしてください。
15~20回程度を1セットで、2~4セット程度行っていただければと思います。
棘下筋はこのファーストポジションと言われる位置で最も使われます。
次に紹介する小円筋は、腕も上げた状態のセカンドポジションで使われやすくなります。
小円筋のトレーニング
肩の高さまで肘を挙げ、左右で引っ張り合いをします。
これを何度か繰り返していきます。
負荷が強すぎるとフォームが崩れるので、フォームを維持できる範囲の軽めの負荷で行ってください。
予防②:筋肉のケア
鍛えるだけでなく、硬くなりがちな筋肉、緊張しがちな筋肉をほぐすことも行います。
棘上筋のリリース
棘上筋の位置は肩甲棘と呼ばれる肩甲骨上の棒状の突起の上です。
肩関節の外転の働きを持つ筋肉です。
ご自身の肩甲骨を触って頂くと、肩甲棘に触れることができます。
鎖骨の丁度裏側にあります。
その上、首すじの少ししたです。
そこを中指と人差し指で優しく気持ち良いくらいの力で押してみてください。
位置を吸うcm左右に変えながら繰り返します。
大胸筋のリリースとストレッチ
大胸筋のセルフリリースとストレッチです。
まずはセルフでのリリース方法です。
鎖骨の下を自分の指でもみほぐしていきます。
ちなみに鎖骨を外に辿っていくと、コリっとした骨に当たります。
そこは烏口突起と呼ばれる場所で上腕二頭筋、烏口腕筋、小胸筋が付着しています。
これらの筋も短縮すると肩甲骨に影響が出るので、ついでにほぐしておいてください。
大胸筋のストレッチは壁で行う有名なこいつ。
ストレッチなのですが、
15~30秒までは筋紡錘という器官が反応して、筋を短縮させようとします。
これは筋肉の急な伸びすぎを防ぐための体の防御システムです。
15~30秒経過するとゴルジ腱器官という別の組織が働き、筋紡錘の働きを抑制します。
ですので、最低でも30秒程度続けていただくことがほぐすためのストレッチには必要です。
広背筋のストレッチ
広背筋のストレッチです。
四つ這い姿勢から片手を頭の上につきます。
小指側を地面につけると伸びやすいです。
胸は軽く反らしつつ、腰を丸めるような意識でお尻を踵に近づけていきます。
これも大胸筋同様に30秒程度行ってもらうと良いです。
予防③:肩甲上腕リズムを取り戻すエクササイズ
肩甲上腕リズムを取り戻すために、以前もご紹介したエクササイズを行います。
「内転」という肩甲骨の動作を加えることで上方回旋時の肩甲骨の安定化を図ります。
その後に上方回旋動作を行って、体にしみこませていきます。
過去記事はこちら→https://yu3trn.com/scapula-activation/
加えて、肩甲骨の内転動作はチューブでもトレーニングが可能です。
足に引っかけた状態から、
肩甲骨を寄せて、引く。
もしくはダンベルでローイング
バーベルでのベントオーバーローイング
マシンでのローロウなどでも同様に鍛えることができます。
予防④:動きの意識付け・フォーム
ここまでに紹介したトレーニングやリリースをしっかりと行ってもらうことに加えて、実際に泳いでいく時の意識付けも大切になってきます。
このブログで何度も言っているかもしれませんが、肩や腕の動きの起点は鎖骨です。
鎖骨から腕が生えているイメージを持って泳いでみてください。
鎖骨と肩甲骨は繋がっており、一体となって動きます。
肩甲上腕リズムを整えようとして肩甲骨だけを意識してもなかなかうまくいかないことがあります。
フォームについては過去記事を参考にしてみてください。
https://yu3trn.com/swimmers-shoulder-prevention/
他にも↓
https://yu3trn.com/swim-elbow/
以上です。