【研究まとめ・リライト】呼吸筋と水泳のパフォーマンスの関係

今回は水泳のパフォーマンスと呼吸筋の関係について学術論文の研究データをもとに紹介したいと思います。以前も書いた記事ですが、加筆修正しました!呼吸筋がパフォーマンスに対してどう影響するのか、呼吸筋をトレーニングすることは水泳にとってメリットがあるのかということを書いていきます。結論から言うと、強いと有利です。

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*研究はあくまでも研究です。この記事も結果を保証するものではありません。

皆様の試行錯誤の一環として役立てば幸いです。

 

【内容】

1.イントロダクション:呼吸筋とは?

2.水泳では呼吸筋が疲労しやすいと考えられる理由

3.実際に呼吸筋の疲労が水泳で起こる

4.呼吸筋の疲労は水泳のパフォーマンスに影響する可能性がある

5.呼吸筋の中でも水泳に大切なのは一気に吸う能力!?

6.呼吸筋をトレーニングする方法

 

1.イントロダクション:呼吸筋とは?

呼吸筋とは呼吸を行う時に使われる筋肉の総称です。

肺は自力で膨らんで空気を吸うことができないので、胸郭周りの筋肉と横隔膜の運動によって膨らみます。

以下のような筋肉が呼吸に関係しているとされており、「呼吸筋」とまとめて言われます。

覚えなくても良いのでざっくり目を通してください(笑)

・横隔膜

・外肋間筋

・内肋間筋

・胸鎖乳突筋

・斜角筋群

・肋骨挙筋

・大胸筋

・小胸筋

・広背筋

中でも広背筋や大胸筋は呼吸でも使われますが、水泳のストローク動作でも主役級の働きをする筋肉です。

つまり、広背筋や大胸筋のような2つの働き(呼吸とストローク)がある筋肉に、呼吸による疲労が蓄積すると、、、、もしかしてストロークにも影響が?それについては後で書きます。

 

呼吸には吸気(吸う)と呼気(吐く)がありますが、それぞれ使われる筋肉が違います。

また、通常の呼吸と努力呼吸(思いっきり吸って吐く)、深呼吸でも使われる筋肉が変わってきます。

運動時に息がつらくなってくるときは通常呼吸の筋活動パターンだけでは十分に空気を吸えないので努力呼吸になっていきます。

「肩で息をする」という言葉がありますが、通常呼吸で使われる筋肉以外が呼吸を補助するために活動するので肩が上下します。

 

通常時・・・・吸気は横隔膜と外肋間筋の運動で胸郭を広げる。呼気にはこれらの筋肉が緩み、肺が勝手に縮む。

深呼吸、努力呼吸・・・・吸気時に横隔膜と外肋間筋はもちろん、2つを補助するべく胸鎖乳突筋、斜角筋、肋骨挙筋、大胸筋、小胸筋、広背筋などが活動し、胸郭を広げるのを助けます。呼気時には腹筋群と内肋間筋も動員されます。

 

胸鎖乳突筋と斜角筋は首周りについています。

肋骨挙筋は背骨と肋骨をつなぐようについています。

 

呼吸筋とスポーツの関係は様々なスポーツで研究されており、トレーニングで得られる効果についても明らかになってきました。

特に持久的なスポーツでは運動中に呼吸筋の疲労が起こることが分かっています。

呼吸筋が疲労すると体に取り込める酸素の量が減少してしまいパフォーマンスの低下につながると考えられています。

 

呼吸筋をトレーニングすれば呼吸筋の疲労を防ぐと共に、一度に吸える量が増えてパフォーマンスが上がると考えられています。

水泳は水の中という特殊環境で行われるスポーツで、呼吸とは密接な関係があります。

水泳での呼吸は限られたタイミングに一瞬しかできません。

さらに水圧や姿勢の影響もあり、水泳特有の呼吸パターンをしています。

そしてこの水泳特有の呼吸パターンは、陸で行う他のスポーツと比べて、呼吸をつらいものにしてしまいます。

つまり、水泳では呼吸筋がバテやすいのでトレーニングをする価値があるかもしれないということが考えられます。

2.水泳では呼吸筋が疲労しやすいと考えられる理由

LomaxとMcConnell (2003) の論文のイントロダクション部分で3つの理由が水泳における呼吸筋疲労を促進すると述べられています。

水圧の影響

水泳は水中という特殊環境下で行うスポーツです。

水中では水圧がかかることで、陸上に比べて息を吸う時に胸郭が広がりにくくなります。

そのため、水圧に抗って息を吸うため、呼吸筋が疲れやすくなります。

特に吸気の圧や量は吸気筋疲労(IMF: inspiratory muscle fatigue)として呼吸筋疲労の評価に使われています。

特有の呼吸パターンの影響

また、水泳特有の呼吸パターンもIMF(吸気筋疲労)を招きます。

水泳の呼吸は他のスポーツと比べて呼吸頻度が低く、一回の呼吸で一気に換気する量が多い。

簡単に言うと、呼吸時には一気に吐いて一気に吸う。

そのため、呼吸筋が一気に収縮します。

呼吸の頻度は少ないけれど一回一回の呼吸で大きなエネルギーを使うので疲労につながるようです。

姿勢の影響

3つ目の理由は泳ぐときの姿勢にあります。

泳ぐときの姿勢では血液量のシフトがおこります。

体を倒した姿勢だと下半身からの静脈還流(心臓の方へ血液が返ってくる)が促進されます。

すると立位時よりも血液が上半身に集まりやすくなるため、空気が入るべきスペースが血液によって邪魔されてしまいます。

ですので、一回の呼吸で必要な量の換気をするために、これまた余計なエネルギーを使うようです。

3.実際に呼吸筋の疲労が水泳で起こる

実際に呼吸筋の疲労は水泳で確認されています。先ほども書いたように多くの研究ではIMF(吸気筋疲労)を呼吸筋の疲労として評価しています。

LomaxとMcConnell (2003) の研究では、そこそこ速いマスターズスイマー7人(男4人、女3人:平均29±6.4歳)にレースペースの90~95%で200mクロールを泳いでもらい、泳ぐ直前と直後の最大吸気筋力 (MIP:吸い込む時の力) を測定しました。

すると平均で29%吸う力が弱くなったことがわかりました。→呼吸筋疲労が起こった。

 

ちなみにこの研究では200mを泳ぐ前に呼吸筋のトレーニンググッズであるパワーブリーズで呼吸筋のウォーミングアップを行いました。

なので吸い込む時の力の減少が大く数字に出たとも言われています。

パワーブリーズはこの記事のラストに紹介します。

 

他にも、Lomaxらの研究(2012)では平均年齢14.9±1.4歳の11人のスイマー(男5人、女6人)を対象に4泳法をレースペースで泳いだ後のIMF(吸気筋疲労)を測定しました。

この研究では、クロール以外にもバタフライ・背泳ぎ・平泳ぎの各泳法をレースペースで泳いだ後にMIPが18~21%減少し、呼吸筋の疲労が確認されました。

 

Thomaidisらの研究(2009)では呼吸筋疲労がどの時点で現れるかを調べるために、11人のスイマー(17.6±3.3:男6人、女5人)に対して400mのクロールを最大努力で泳いでもらいました。

次に各ラップでの呼吸筋疲労を調べるために、その400mのペースを再現して100m、200m、300mも泳いでました。泳ぎ終わった後にはPImax (最大吸気圧)をそれぞれの距離時点で測定しました。

その結果、距離を追うごとにPImaxの値は減少し、300mと400mの時点では泳ぐ前より有意にPImaxが下がり、呼吸筋疲労が確認されました。

 

一方、Brown and Kildingの研究(2011)では10人の男性スイマー(19.1±2.1歳)に100m、200m、400m、を全力で泳いでもらいましたが100mで最も呼吸筋疲労が大きかったようです。

呼吸筋の疲労は距離に比例して高くなるわけではないのかもしれません。

短距離でも長距離でも疲労は起こるということでしょうか。

では、この呼吸筋疲労は実際にパフォーマンスに影響するのでしょうか?

4.呼吸筋の疲労は水泳のパフォーマンスに影響する可能性がある

呼吸筋の疲労と水泳のパフォーマンスを調べるために、泳ぐ前に呼吸筋に負荷をかけて疲れさせてから泳ぐという方法がとられてきました。

Lomax and Castel (2011) の研究では8人の大学生スイマー(男女4人ずつ:平均年齢20±0.9歳)に対して泳ぐ前のIMF(吸気筋疲労)有りと無しでの200mクロールをレースの85%のペースで泳いでもらい、パフォーマンスの評価が行われました。

呼吸筋疲労は泳ぐ前にパワーブリーズを使って引き起こしました。

・呼吸筋疲労有り:パワーブリーズで事前にIMFを誘発→200mクロール(レースの85%)を泳ぐ→パフォーマンス評価

・呼吸筋疲労無し(コントロールスイム):200mクロール(レースの85%)を泳ぐ→パフォーマンス評価

呼吸筋疲労無しのコントロールスイムでは実験中に呼吸筋疲労は起こりませんでした。

一方で呼吸筋疲労有りのスイムでは、パワーブリーズの効果で泳ぐ前に17%吸い込む力の低下が起こりました。

つまり呼吸筋疲労が起こったということ。

そしてそのまま泳ぎました。(しんど…..笑)

 

そして、泳いでみた結果

どちらも同じペース(85%)で泳いだものの、吸気筋疲労有りの場合には息継ぎの回数、息継ぎ頻度、ストローク数、ストローク頻度が増えました。

そしてストローク長(ストロークの長さ)が短くなりました。

つまり、呼吸筋が疲労している場合には同じペースで泳いでも効率の悪い泳ぎになってしまったということが言えます。

 

今回は85%泳なので、全力ではありませんが、もし全力泳をしたときに呼吸筋疲労で途中から効率の悪い泳ぎになった場合、ベストタイム更新にも大きく響いてくるのではないかと思います。

 

また、Lomaxらの研究(2014)では呼吸筋疲労が起こると、クロールを泳いでいる時の広背筋の活動を低下させるということも分かっています。

先に書いたように広背筋はストローク動作だけでなく呼吸筋としても働く、2つの役割がある筋肉です。

この研究で呼吸によって広背筋が疲労することがストロークにも影響を及ぼす可能性が示されました。

広背筋はストロークでとても大切な筋肉なので呼吸で疲れてしまうのは避けたいところですね。

 

全力で泳いだ研究はまだ少ないものの、呼吸筋疲労がパフォーマンスに悪影響を与えることは明らかになってきています。

息苦しさからくる後半のバテや、泳ぎの崩れに対して呼吸筋のトレーニングが一定効果を果たすかもしれません。

5.呼吸筋の中でも水泳に大切なのは一気に吸う能力!?

呼吸筋疲労、特に吸気筋疲労(IMF)についてここまで書いてきましたが、どうやら水泳に大切なのは一瞬で吸う能力かもしれないというのが研究から分かってきました。

先ほど紹介したように、水泳では一気に吐いて一気に吸うという特徴的な呼吸パターンをしているからでしょうか。

 

Noriega-Sánchezらの研究(2015)で、16~19歳の男女のスイマーを対象に100m自由形のタイムと身体特性・機能の関連について調べられました。

すると、最もタイムに関連が強かったのはFIV₁でした。

FIV₁とは1度空気を吐ききった後、1秒間でどれだけ多く空気を吸えるか(全力)ということです。

つまり、一瞬でたくさんの空気を吸うことができる人ほど100mのタイムが速いということでした。

 

この研究から呼吸筋を鍛えて吸う力を高めることで、泳ぎのタイムアップにつながる可能性が示されました。

ここまでをまとめると、

①泳ぐことで呼吸筋は疲労する

②呼吸筋が疲労することでパフォーマンスに悪影響が出る

③呼吸筋、特に吸う能力とタイムには強い関連がある

呼吸筋のトレーニングをすることで、得られるであろう効果

・呼吸筋疲労を抑えて泳ぎの崩れを減らすことでタイムアップ

・吸う能力を高めることでタイムアップ

6.呼吸筋をトレーニングする方法

呼吸筋を効率よくトレーニング方法としては、今回紹介してきた研究論文の中でも使われているパワーブリーズがいいかなと思います。

吸気に負荷をかけて呼吸筋をトレーニングするグッズです。

場所を選ばず1日2分くらいで終わるので手っ取り早くておすすめです。

ちょっとお値段はしますが良いトレーニングになります。

さらなるタイムアップを目指す人、水中練習だけでは物足りない人、泳ぐ時間がなかなか取れない人なんかにおすすめです。

赤の超重負荷を実際に使っていますが、結構しんどいです。なめてかかると最初は全然吸えないと思います。

使った後は水でささっと洗って、1~2週間おきにアルカリ性の洗剤や弱酸性の洗剤(多分大丈夫)に漬けておけばOKです。

 

今回は呼吸筋と水泳のパフォーマンスについて論文をあたってみました。まだまだ研究が少ないですが呼吸筋を鍛えることは水泳のパフォーマンスアップに効果的なようです。良かったら鍛えてみてください。

 

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参考文献:・Lomax ME and Mcconnel AK: Inspiratory muscle fatigue in swimmers after a sngle 200 m swim. J Sports Sci 21: 659-664, 2003.・Lomax M, Iggleden C, Tourell A, Castle S, and Honey J: Inspiratory muscle fatigue after race-paced swimming is not restricted to the front crawl stroke. J strength Cond Res 26 (10): 2729-2733, 2012.・Lomax M and Castle S: Inspiratory muscle fatigue significantly affects breathing frequency, stroke rate, and stroke length during 200-m front-crawl swimming. J strength Cond Res 25 (10): 2691-2695, 2011.・Thomaidis SP, Toubekis AG, Mpousmoukilia SS, Douda HT, Antoniou PD, and Tokmakidis SP: Alterations in maximal inspiratory mouth pressure during a 400-m maximum effort front-crawl swimmingtrial. J Sports Med Phys Fitness 49: 194-200, 2009.・Lomax M, Tasker L, and Bostance O: Inspiratory muscle fatigue affects latissimus dorsi but not pectoralis major activity during arms only front crawl sprinting. J Strength Cond Res 28 (8): 2262-2269, 2014.・Noriega-Sánchez S, Legaz-Arrese A, Suarez-Arrones L, Santalla A, Floría P, and Munguía-Izquierdo D: Forced inspiratory volume in the first second as predictor of front-crawl performance in young sprint swimmer. J Strength Cond Res 29 (1): 188-194, 2015.・Brown S and Kilding AE: Exercise-induced inspiratory muscle fatigue during swimming: the effect of race distance. J Strength Cond Res 25 (5): 1204-1209, 2011.

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