【研究紹介】水泳の速さは懸垂とキックの強さが指標に?

速くなりたい競泳クラスの皆さん、マスターズスイマーの皆さん。キック練習と懸垂はお好きですか?今回はキック練習と懸垂がやりたくなる内容です!懸垂が強い人とキックが強い人は、やっぱり速いみたいです。

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実はこんな研究を見つけてきたのでご紹介します。

Relationship Between Dryland Strength and Swimming Performance: Pull-Up
Mechanics as a Predictor of Swimming Speed

日本語訳:

ドライランド(陸トレ)でのストレングス(強さ)と水泳のパフォーマンスの関係性:懸垂のメカニクスが泳ぐスピードの指標になり得る。

研究概要を簡単に見ていこう!

被験者になったのは、12人の男子スイマー(平均年齢19±3歳、体重75 ± 10 kg、 身長180 ± 6 cm)です。

基準にしたのは50m自由形のタイムで、平均が26.41 秒(± 1.44)だそうです。

なので、24秒台~27秒台くらいの選手たちで構成されています。

 

疲労の影響を受けないように考慮しながら、以下の項目を測定しました。

・50m自由形のタイム測定(スタート台あり)

・50mバタ足のタイム測定(壁を蹴らない)

・垂直跳び(1回の最大努力(高く)を休みながら5回、30回連続の前半と後半の平均)

・懸垂(1回の最大努力(なるべく強く速く)を休みながら5回、上がらなくなるまでの回数や速さ)

垂直跳びで測定した指標:1回を全力で行う場合の平均の高さ、つかれてきた時の平均の高さの落ち具合

懸垂で測定した指標:1回を全力で行う平均速度、力、パワー、最高速度、最高速度が出るまでの時間、連続でできた回数、連続で行っている時の速度と、速度の落ち具合

 

発見①:50mのタイムが速い人ほど懸垂が…

1つめの発見は50m自由形のタイムと懸垂のメカニクスの相関関係です。

50mのタイムが速い人ほど、1回を全力で行う懸垂の速度、発揮されるパワー、相対的な筋力が高かったそうです。

さらに、懸垂を連続して行った時に疲労が蓄積してからの速度が高く、速度の減少幅が少なかったようです。

 

少しわかりにくいワードが並んだので、簡単にまとめると

50mのタイムが速い人ほど、懸垂のスピードが速く、1回1回のパワーが大きい。

連続して疲れてきてからも、懸垂のスピードが速く、落ちにくい。

 

要するに、懸垂が強いということ。

発見②垂直跳びはあまり関係ない

今回の研究では垂直跳びのパフォーマンスと50m自由形のパフォーマンスには相関関係がありませんでした。

しかしながら、垂直跳びはスタートのパフォーマンス(~15m)に関係しているとの研究もいくつかあるので、無駄ではないと思います。

僕も、飛び込みの上達と改善には非常に有効な種目と指標だとトレーナー目線では考えています。

水泳で垂直跳びと関係が深いシーンは、飛び込みとターンです。

ターンの時の下半身はもろに垂直跳びの動きをしていますね。

 

スタートやターンよりも泳いでいる時間の方が長いため、まずは泳力の改善が優先されますが、0.01秒を削っていく過程を考えると、いずれは飛び込みとターンにも力を入れないといけません。

それに、良い飛び込みとターンができれば、勢いがつき、その後の泳ぎにも活きてきます。

今回の研究で関係性が無かったからと言って、ジャンプやスクワットといった種目をサボってはいけませんね。

発見③50mのタイムが速い人ほどキックが強い

50mのタイムが速い人ほど50mのキックのタイムが速いということもこの研究では示されています。

ちなみにこの研究では壁を蹴らずにスタート、タッチはビート板でタッチです(おそらくひとかきもしていないはず)。

そして長水路(50mプール)です。

地味にきついな(笑)

被験者さんたちの平均タイムは、40.59秒 ± 5.18 でした。

速い人は35秒台ですよ。

長水路で壁蹴るのなしでこれって結構すごい気が。

 

ちなみに競泳をしているスイマーの多くはキック練習のターンやタッチ前に5mくらいから手をかいていますが、、、、。

よく考えたらあれって何の意味があるんでしょうか。

タッチ練習なら嫌というほどやっているスイム練習でよくない?

キック練習はキックを強化する練習なんだから、最後まで全力で打とうぜ!

 

友人の名言があります。

「誤魔化すくらいなら、堂々とやってサークルアウトする方が潔い」

キックが遅くて(本人は本気)コーチに怒鳴られてたそうですが、真に試合のために練習する姿勢は称賛に値します。

 

ちなみに、50mのパフォーマンスに最も影響が大きいのは、キックの速さと懸垂で疲労が蓄積してきた時のスピードの落ち具合だそうです。

キックが速くて、懸垂のスピードを維持できる人ほど速いという結果。

スイマーがやるべきことは

今回紹介した研究はあくまでも1つの見解に過ぎませんし、50m自由形という限られた距離と種目であることに留意してください。

それでも、懸垂とキックの強さはどの種目でも超重要になってくると思います。

「私はバタフライだから」「平泳ぎだから」と言って、手を抜かずに(笑)

 

今回のことから分かる懸垂のポイントは

・もちろん良いフォーム(アゴがバーに届くまで、姿勢真っ直ぐ、反動をつけすぎない)

・できるだけ1回1回素早く強く行う

・疲れてきた時にスピードを落とさないように意識する

・限界まで頑張る

意外と普通ですが(笑)

 

キック練習では手をかいて誤魔化さず、最後までキックを打ち切りましょう。

以上!

 

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参考文献:Pedro L. Valenzuela&Mikel Izquierdo: Relationship Between Dryland Strength and Swimming Performance: Pull-Up Mechanics as a Predictor of Swimming Speed. J Strength Cond Res 2018 Jun;32(6):1637-1642.→論文はこちら(英語)

 

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