筋トレを始めようとは思うけれど、メニューの組み方がわからないという人は多いはず。10回3セットってよく聞くけれどそれで本当にOKなの?休憩時間は何分?週何回すればいいの?そんな疑問にお答えすべく、今回は筋トレ初心者の人向けにメニューの組み方を解説します。
① 筋トレをする目的を明らかにする
筋トレのメニューを組む時にまず初めに決めるべきことは「トレーニングの目的」です。目的が明らかでないと、ただ闇雲に筋トレをするだけになってしまい、結果が思うように出ないといった事態になりかねません。目的を決めてそれに合ったトレーニングを組むというのが基本です。目的を決めるには理想の自分を想像する必要があります。今の自分をどう変えたいのか想像してみましょう。
例えば
「体を大きくしたい」のなら、筋トレの目的は筋肥大になりますね。
「より重いものを持ち上げたい」のであれば筋力を高めることが筋トレをする目的になります。
「水泳で100m自由形のタイムを上げたい」のであれば、筋持久力、筋力、パワーなど水泳に必要な要素を強化していくことが筋トレをする目的。
なりたい自分をイメージすること。そうすると筋トレをする目的が見えてきます。
② 目的に合った種目を設定する
筋トレをする目的が決まったら、次は種目の設定です。種目設定の時にまず知るべきなのは、「その種目がどの筋肉、筋群、どういった動作を対象にしているか」ということです。筋トレには数えきれないくらい種目がありますが、1つ1つの種目には主働筋というメインで使う筋肉と、協働筋という副次的に使う筋肉があります。
例えば、ベンチプレスだと主働筋は大胸筋で、協働筋として上腕三頭筋や三角筋が動員されることになります。このように、どこの筋肉を対象にしているかが種目によって設定されています。自分はどこをトレーニングしたくて、そのためにはどの種目を選べば良いかを考えます。
極端な話ですが、
もし、脚の筋力を上げたい人がベンチプレスばかりしていては「目的に合った種目をしている」と言えるでしょうか?
脚の筋力を上げたいのであれば、スクワットやレッグプレスなど下半身の種目を選択すべきでしょう。
種目選びには様々な考え方がありますが、初心者がおさえておきたいのは、「それぞれの種目はどこの筋肉(or体力要素)に効かせる種目かを知る」、「そのうえで、鍛えたい筋肉(or体力要素)に効果のある種目を選ぶ」ということです。
③ %1RMを参考に筋トレの負荷を設定する
種目が決まったら次は負荷の設定です。負荷とは簡単に言うと「何キロの重りでトレーニングするか」ということです。負荷の設定も初めに決めた筋トレの目的によって変わってきます。
%1RMという最大挙上重量をもとにした考え方を使う
筋トレの負荷設定で最も使われているのが%1RMをもとにした方法です。RMというのはRepetition Maximum の略で、最大反復回数という意味です。例えば10RMならその重量は10回で限界という意味。1RMなら、1回だけ持ち上げることのできる重量(最大挙上重量)という意味で、その人のMaxを表します。つまり%1RMとは個人の1RMに対して何%の負荷でトレーニングを行うかということ。
1RMの測定は潰れてケガをする危険があるので1人で行うことはなかなかできませんが、この表を参考に逆算することでおおよその数値を知ることはできます。例えば70kgのスクワットが8回で限界だった場合、8回=80%1RM=70kgなので、そこから逆算すると1RM=100%はおおよそ87kgになります。1RMが測定できない場合はこの推定値を使っても構いません。
そしてこの%1RMの負荷設定によって筋トレの効果は変わってきます。筋肥大に適した回数、筋力アップに適した回数など、自分の目的を果たすにはおおよそどのくらいの負荷にすれば良いか知ることができます。一般的に推奨されている最も基本的な基準を下の表にまとめてあります。
いつまでも同じ重量にせず少しずつ負荷を上げる
トレーニングを積んでいくうちに今まで10RMだった重さも、いつの間にか15RMの重さになっていたり…ということがあります。ありますというか、確実にそうなります。そうすると、今まで筋肥大を目的に筋トレをしていたのにいつの間にか筋持久力のトレーニングに切り替わってしまっていますよね。これはもう身体が負荷に慣れた状態で、さらなる筋肥大には効果的とは言いきれません。
こういった事態を避けるためにも少しずつ負荷を上げていく必要があります。トレーニングの原則にある漸進性の原則というやつです。
負荷を上げるタイミングの決め方の1つに「2for2ルール」というのがあります。これは「2回のトレーニングにおいてラストセットで、余分に2レップ多く挙上できたら次回のトレーニングで重量を上げる」という考え方です。
例えば10RM(60kg)でスクワットを4セット組んだとします。前回のトレーニングの時も今回もラストセットで12回挙上することができたら次回スクワットをするときには60kgよりも重い設定で10レップを目指してトレーニングをします。重りを増やす幅としては2.5~5kg程度で良いと思います。
④ 筋トレのセット数・インターバル・週当たりの頻度を決める
負荷設定ができれば、最後にセット数・インターバル(セット間の休み時間)・週当たりの頻度を決めます。ここまでできればトレーニングメニューは完成です。組み方には無限のバリエーションがありますが、この項では基本を書いておきます。
セット数とインターバル
セット数の基本的な組み方を下の表にまとめておきました。
初心者であればまずは1~3セットが目安と言われています。セット数をたくさんこなすことも大切ですが、まずは正確なフォームで1~3セットきっちり行うことが重要です。ケガのリスクや体力的な問題もあるので最初から張り切りすぎなくて大丈夫です。
インターバルは筋肥大・筋持久力を目的とした場合、30~90秒が一般的と言われています。どうしてもきつい場合や集中力できない場合には無理にこの範囲でなくても大丈夫です。決めたレップ数を完遂できるインターバル設定でOKです。
ちなみに、筋トレをすると筋肉に血流が集中し一時的に膨張することで「パンプ」という状態になります。パンプは化学的なストレスで起こるとされています。化学的ストレスと負荷そのものによる機械的ストレスで筋肉は発達するという説もあります。短時間で十分な化学的ストレスを与えて筋肉を疲労に追い込むことがポイントになるのでパンプ感を重視するならインターバルは短めがおすすめです。(諸説あり)
筋力や筋パワーを上げたい場合は2~5分で長めのインターバルを取ることが推奨されています。筋力と筋パワーを高めるには筋肉を追い込むだけでなく、神経系の適応も重要なので繰り返し高出力の力発揮をする必要があります。また、高出力の力発揮は少ない回数しかできないうえ、回復にも時間がかかります。短いインターバルで追い込むことが目的ではなく、繰り返し高出力の力発揮をすることが目的なので、十分に回復した状態で次のセットに挑むようにしましょう。
インターバルに関しては一般的なことをここでは紹介しています。
科学的研究から分かっている最新の知見ではここで紹介したことを必ずしも守る必要はありません。下の記事を参照。
週当たりの頻度を決める時は分割法がおすすめ
週当たりの頻度とは週に何回筋トレをするかということ。もっと厳密にいえば、週に何回その筋肉を鍛えるかということです。そして、この筋トレの頻度を決める際におすすめなのが分割法です。
当然、筋トレをしたら回復期間も必要ですよね。最低でも2~3日は休みたいです。なので、もし週5で毎回全身の筋肉をトレーニングしていると全然休めないですよね。分割法というのは、トレーニングする部位を分けてスケジュールを組む方法です。
分割法での部位の分け方と何分割にするかは自由です。今回は筋肉の部位を6つに分けて例を上げていきます。
分け方の例
・脚
・胸
・背中
・腕(上腕二頭筋や上腕三頭筋)
・肩
・腹筋
例えば、6つの部位を4分割して筋トレをする場合、、、
1日目:脚、腹筋
2日目:胸
3日目:背中
4日目:腕、肩
5日目:オフ
以下繰り返し
これだと週当たりの筋トレの回数は6回、1部位の週あたりの頻度は1~2回になります。
1日目に脚のトレーニングをしたとして、2~4日目は他の部位のトレーニングをしています。こうすることで筋トレは連日行うものの、脚は休むことができています。他の部位も同じで、中4日で次回のトレーニングが回ってきます。このように、プロ野球の先発ローテーションみたいな感じで筋トレを組んでいきます。
もちろんプライベートの用事や学校、お仕事などでトレーニングができない日があるので、週2回の筋トレで、部位を2分割、部位別の頻度は週1、オフは長めになるというのでも構いません。ライフスタイルに合った無理のない範囲で分割してください。
分割の方法は自由ですが、筋肉の発達を促すためには最低でも1つの部位に対して週1回の頻度ではトレーニングをしたいところです。むしろ週に1回でもしっかりトレーニングをしていれば成長します。回復に時間がかかる人は1部位週1回でちょうどいいくらいかもしれません。
トレーニング日が週1回しかない人は、1日で全身を鍛えることになってしまいます。できるならそれで良いですが、トレーニングの質の面でどうしても問題があります。何とか最低でも2日間は筋トレの時間を確保すること、もしくは動員する筋肉が多いコンパウンド種目を中心に効率良く全身を鍛えていくことがおすすめです。
コンパウンド種目…ベンチプレスやスクワットなど、1つの動作で複数の関節の動きがある種目。1つだけでなく複数の筋肉を同時に鍛えることができる。
アイソレーション種目…フライやレッグエクステンションなど、1つの動作で1つの関節の動きしかない種目。そのため、1つあるいは少数の筋肉にだけ刺激が入る。
何よりも大切なのは?
ここまで、基本的なトレーニングの組み方を解説してきましたが、忘れてほしくないのは
- 「理論も大切だけど、気持ちも大切」
- 「理論を踏まえた上で、筋肉をしっかり使う・回復させる」
この2点です。
セット数やインターバルはあくまでも目安
セット数やインターバルはあくまでも目安です。もし3セットで物足りないなら4セット5セットと増やしても構いません。逆に1セットでもう動けないところまでいけるなら1セットでも構わないと思います。実際に1セットで追い込み切れる人はなかなか少ないようですが…。それでも、しっかり出し切ることは大切なので、残りのセットのことは考えずに1セット目から出し尽くす気持ちでいきましょう。そのためには、理論だけでなく強い気持ちも必要になってきます。「つらい!!」と思ってからのもう1レップが筋肉を強くする?!とかしないとか…。
セットの組み方のバリエーションを変えてトレーニングのマンネリを防ぐ
最後にトレーニングのバリエーションとしてセットの組み方を紹介します。筋トレでは「慣れ」が生まれてくると筋肉の発達が停滞してしまいます。それを防ぐためにも様々なセットの組み方を駆使して筋トレを組み立てていきましょう。
最も一般的なストレートセット
最も一般的なのがストレートセットで同一種目、同一負荷で数セットこなすというもの。よく聞く10回3セットはストレートセットです。ここまで紹介してきた方法でメニューを組んでみた人もこのストレートセットになったと思います。ストレートセットでは後半のセットになるにつれ、筋肉は疲れてるのに、負荷は変わらないのでどんどん挙上がつらくなってきます。1セット目は10回できたのに4セット目にはもう7回しか上がらないなんてこともあります。
上がって下がるピラミッドセット
ピラミッドセットは、最初低めの負荷からスタートしてセットを追うごとに負荷が上がり、てっぺんまで行くと次はセットごとに負荷が下がっていくという組み方です。まるでピラミッドのように見えることからそう呼ばれています。そしてピラミッドも3種類の使い方があります。
フルピラミッド
スタートの負荷も上げ幅も自由です。前半の上りピラミッドではウォームアップも兼ねて徐々に負荷上げていき、ピラミッドのてっぺんで90%以上くらいの高負荷で行う。そして、そこから下りピラミッドで負荷を落としながら各セットで筋肉をしっかり追い込むようにします。
アセンディングピラミッド(登りのみ)
前半の登り局面のみを行うピラミッドをアセンディングと言います。このセット組みでは、ウォームアップを兼ねながら高重量に挑めますが、筋疲労も溜まるのでマックスの重量に挑戦できるかといえば厳しいです。けれど、いきなり負荷を高めないので、ケガの心配が少ないです。
ディセンディングピラミッド(下りのみ)
一方のディセンディングセットでは、ピラミッドの下りだけを行います。初めに高重量を扱うので筋疲労のないフレッシュな状態で高負荷のトレーニングが行えます。初めにマックスに近い高負荷を与え、徐々に負荷を落としつつも回数はしっかり重ねて筋肉を追い込むことができます。
1部位を徹底的に追い込むコンパウンドセット
コンパウンドセットとは、同一部位をターゲットにした種目を休憩を挟まずに連続して行うことを言います。2種目連続でスーパーセット、3種目でトライセット、4種目以上連続になるとジャイアントセットと呼ばれています。1つの部位を徹底的に追い込むことができます。例えば、大胸筋をターゲットにした場合、ベンチプレス→ダンベルフライを連続で行います。ダンベルフライまで終わればインターバルを挟みます。
注意点は、各種目で余力は残さないということです。後の種目のことは考えずに追い込んでください。種目が続くからと、負荷を軽めに設定するのもナンセンスです。10RMなら10RMで、途中までしかできなくてもいいので、上げきるつもりで挑みましょう。
短時間追い込みに最適なドロップセット
ドロップセットとは、インターバルを挟まずに負荷を落としながら次のセットにいく方法です。例えば、1セット目80kg、休みを挟まずに2セット目60kg、3セット目40kgという風にします。下げ幅もセット数も自由です。各セット限界までレップをこなして、もう上がらなくなったら休みを挟まず次のセットに移ります。こうすることで短時間に強烈な刺激を与えることができます。各セットで限界にまで追い込むので強い気持ちが必要ですが、チャレンジしてみてください。休憩はプレートやピンを付け替える時間のみです。
プレートの付け替えがめんどくさい場合は可変式のダンベルもおすすめです。
アジャスタブル(可変式)ダンベル
まとめ
今回は初心者の方向けに筋トレメニューの組み方を紹介しました。大切なのは「出し切ること」、「慣れを防ぐこと」です。メニューの組み方バリエーションは無限にあるので変化を加えながらいろいろ試してみてください。インターバルを10秒変えるだけでも、セットを1セット増やすだけでもまた違う刺激になります。
参考文献
・「第2版 NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識」
Jared W. Coburn 特定非営利活動法人NSCAジャパン 2014年
・「ハンディ版 筋肥大メソッド」 岡田隆 ベースボールマガジン社 2017年