そういえばバサロキックについてあまりブログで言及していませんでしたので、そろそろ書いていこうと思います。相変わらず、「こうすれば良い!」というよりは、考えていく感じで読んでもらえたらなと思います。今回取り上げるトピックは下記の通り。
・バサロの長さの考え方から見るデータの取り方
・バサロで潜る水深は0.5mから下?
・膝を軽く閉める
・キックの速い切り返し
・キックの力を前に伝える胸の使い方
目次
バサロキックを改善するために、何を考えるか
皆さんんはバサロキックを改善するために何を考えますか?
蹴り方を考える?
姿勢を考える?
潜る距離を考える?
潜る深さを考える?
どれも正解だと思います。
そして、どれも考える価値のあることだと思います。
まず、バサロキックの距離と深さについて言及していこうと思います。
この2つはキックのフォームより手っ取り早く改善できますし、即効性があると思うので先に紹介します。
その後にキックの蹴り方について多少言及していきます。
こちらは時間がかかるかもしれませんが、大きな改善成果が期待できます。
バサロキックの距離を考える
バサロキックは競泳のルール上、スタートもしくはターン後に15mまで潜ることができます。
この距離をどう使うか。
全て使い切るか、速めに浮き上がって泳ぎ始めるか。
基本的には潜っていた方が水の抵抗(特に造波抵抗)が少ないのでスピードが出やすいとされています。
しかし、それに加えて2つのことを考慮する必要があります。
1.バサロキックが得意かどうか
2.体力的なこと
バサロキックが得意であれば15mをフルに使い切る方が良いですし、苦手なら浮き上がり方を磨いて早めにスイムへ移行すべきでしょう。
それを判断するためにはやはりデータが必要です。
今から述べる「データ取り」はこの記事内や練習で取り組む時の基本的な思考になりますから、しっかり頭に入れて下さい。
最も簡単なデータは「バサロキックを長くした場合と短くした場合にどちらがタイムが速いか」をタイム測定することです。
距離は自由に設定していただいて大丈夫です(25mでも200mでも)。
データを取る時のポイントは2つあります。
1.できるだけ条件をそろえた試行(調子、疲労度、インターバル、プールなど)
2.同一の条件で2回以上は測定する
これ、思いっきり理系の研究で使う方法です。
条件を揃えずに測定すると、データの基準があいまいになるので意味がないです。
例えば、50m×2本で1分サークルを全力で泳ぐ練習。
1本目は15mまでバサロ、2本目は12mまでバサロ(キック回数でカウントしてもOK)。
この練習で比較しても、体力的に完全回復しないまま2本目を泳いでいるので比較になりません。
それなら、今回のメイン練習の1本目と次回のメイン練習の1本目を比較した方が正確です。
同じ日に比較したい場合は休憩を十分に開けてください。
また、プールが違うとか、飛び込んだか否かとかって条件ももちろんそろえる。
そして理想はレースペースで泳ぐことです。
例えば、ミドルハードとオールアウトで比較しても意味ありませんから。
これ以上事細かに書くのは正直面倒なので、あとはご自身で考察してください。
同一条件で2回測定するというのは「duplicate(デュプリケート)」と言ったりして、データの再現性を高める方法です。
3回同じ条件で測定するのは「triplicate(トリプリケート)」。
どうしても1回だけだと細かなミスなどが出がちですから、2回3回と測定した平均を比較した方が正確です。
バサロキックの評価であれば、長く潜った場合のデータを数回。
短く潜った場合のデータを数回。
両者の平均を比較するわけです。
ちなみにデータは2回と言わず、4回でも5回でも何回でもOKです。
練習メニューは毎日のように変化する場合が多いので、条件を完全にそろえることは難しいかもしれません。
ですが、似た条件のデータを収集していけばある程度の傾向が見えてくると思います。
データは1日で取れなくてもかまいません。
何日もかけて、練習何回もかけて、たくさん集めて傾向をつかめれば良いです。
要するにぼーっと泳がないでね(笑)
バサロの長さと関連して:何回蹴るか
長さのついでに回数にも言及しておきます。
同じ長さをバサロキックで進むにしても、キックの細かさやタイミングで回数が変わります。
例えば僕の場合、普段バサロキックでは15mが11回で到達します。
キックを大きめにしたり、テンポを落とせば9~10回で到達します。
一方で小刻みに打てば12~13回まで増えます。
どの場合が速いか。
同じ距離の中でも検証してみると良いと思います。
検証方法は上述の通りです。
【0.5mがキーの水深】バサロキックの深さをどう考えるか?
バサロキックの深さを決めるにも、上述した検証が必要です。
それを踏まえて考えていきます。
水の抵抗については以前に書いた記事にまとめていますから、そちらをご参考に。
→https://yu3trn.com/swim-resistance/
水の中の抵抗でも、最も考慮すべきなのが造波抵抗。
造波抵抗は泳ぐ速度の3乗に比例するので、影響が大きく出ます。
造波抵抗はその名の通り、波からの影響で生まれる抵抗なので、波を避ければ抵抗を受けにくくなります。
造波抵抗が生じるのは水面から0.5m(50cm)の範囲だと言われています。
それ以上深く潜れば影響を感じにくくなるとされています。
これをどう解釈するか。
水面から0.5mの範囲でバサロキックを打っていると造波抵抗を受けやすいのは言うまでもなく不利でしょう。
かと言って深く潜りすぎても浮上に時間がかかってタイムロス。
深めに潜って急浮上するタイプの人もいれば、0.5mよりは深く潜ってなだらかな軌道でバサロを続けるタイプの人もいます。
他にも深い所から徐々に浮上してくるタイプの人もいます。
理屈で考えれば、0.5mより深く潜り、最後の1~2回のキックだけ0.5mの範囲に突入して浮上するというのが最も造波抵抗を受ける時間を減らせるような気もします。
でも、より深い方が造波抵抗は小さくなります。
一旦1.0mを超えるくらい深く潜ってみるというのも、造波抵抗だけ考えるとメリットがありそうな気もします。
また、15mいっぱいまで潜るかどうかも考慮に入れる必要があります。
長い距離を潜るのであればそれだけ猶予があります。
深く潜っても徐々に上がってこれます。
短い距離しか潜らないのに深く潜りすぎると角度が急な浮上になります。
さらに考えるなら、浮力の違いもあります。
鼻から空気を出さずにバサロができる人、鼻栓を使う人は肺から空気が漏れないので大きな浮力を持っています。
一方、鼻から空気を吐く人は浮力が少なくなります。
浮力が大きい方が浮上時の勢いがあるので、それも急浮上するか否かの基準になります。
バサロのフォームについて考えよう
フォームについては、深さや距離よりも習得に時間がかかると思います。
そのフォームが体に染みつくのに数か月は見ておいて欲しいです。
そのうえで検証です。
せっかく身に付けたのに自分に合っていなかった、タイムに反映されなかった。
そんなことはよくあります。
でも、いちいちしょげてないでまた試行錯誤を繰り返しましょう。
これ!って正解がないから1人1人フォームに個性があるわけですから。
今回は3つだけご紹介します。
膝を閉める
膝を閉めるというのは、膝を軽く内側に絞っておくことです。
股関節を内旋(内側にひねる)させる動きになります。
そうすることで、バサロキックを打っている時に無駄な膝の開きを防ぐことができます。
特に膝を曲がった時は膝が大きく開きがちなので、この意識が役立つかもしれません。
キックの切り返しを速く
キックの切り返しを速くすることはドルフィンキックだけでなくバサロキックにも言えることです。
水を動かすスピードを速くすることは推進力を大きくする1つの要因です。
キックは打ちっぱなしではなく、アップキックをしながら既にダウンキックが始まっているくらいの意識で打ちます。
逆も同様です。
切り返しを速くしつつもしっかり蹴り切れるのであれば、意識の持ち方は何でもOKです。
推進力を前に伝える胸の使い方
キックで生まれた力を前に効果的に伝えないと速いバサロキックは打てません。
そのために必要なのが胸周りの使い方です。
すべきことは、キックの瞬間に胸椎を伸展させることです。
胸椎の伸展は胸を反り上げるような動きです。
キックの瞬間はうねりが入るので、力の向きがややプールの底に向きがちです。
それを真っ直ぐ前に向けさせるためにこの動きを使います。
そのためには、まずストリームラインを組んだ段階で肋骨がしっかり開き、胸郭が広がっていることが1つ。
お腹をドローインで引き込めば、骨盤と胸郭の動きが独立します。
そして次に、キックを打った瞬間に胸椎を伸展させる動きが入ります。
ただし、指先、腕の動きが大きくなりすぎるとこれまた力が分散するので、そちらの動きは最小限。
あくまでも胸です。
何か一つでも実践してみて!
今回の内容の中で、何か一つでも実践していただけると非常に嬉しいです。そして、皆さんが泳ぎを考える時のヒントになればもっと嬉しい。