今回は水泳のパフォーマンスと呼吸筋の関係について学術論文の研究データをもとに紹介したいと思います。呼吸筋がパフォーマンスに対してどう影響するのか、呼吸筋をトレーニングすることは水泳にとってメリットがあるのかということを書いていきます。
イントロダクション:呼吸筋とは?
呼吸筋とは呼吸を行う時に使われる筋肉の総称です。肺は自力で膨らんで空気を吸うことができないので、胸郭周りの筋肉と横隔膜の運動によって膨らみます。以下のような筋肉が呼吸に関係しているとされており、「呼吸筋」とまとめて言われます。
・横隔膜
・外肋間筋
・内肋間筋
・胸鎖乳突筋
・斜角筋群
・肋骨挙筋
・大胸筋
・小胸筋
・広背筋
中でも広背筋や大胸筋は呼吸でも使われますが、水泳のストローク動作でも主役級の働きをする筋肉です。つまり、広背筋や大胸筋のような2つの働き(呼吸とストローク)がある筋肉に、呼吸による疲労が蓄積すると、、、、もしかしてストロークにも影響が?それについては後で書きます。
呼吸には吸気(吸う)と呼気(吐く)がありますが、それぞれ使われる筋肉が違います。また、通常の呼吸と努力呼吸(思いっきり吸って吐く)、深呼吸でも使われる筋肉が変わってきます。運動時に息がつらくなってくるときは通常呼吸の筋活動パターンだけでは十分に空気を吸えないので努力呼吸になってきます。
「肩で息をする」という言葉がありますが、通常呼吸で使われる筋肉以外が呼吸を補助するために活動するので肩が上下します。
通常時・・・・吸気は横隔膜と外肋間筋の運動で胸郭を広げる。呼気にはこれらの筋肉が緩み、肺が勝手に縮む。
深呼吸、努力呼吸・・・・吸気時に横隔膜と外肋間筋はもちろん、2つを補助するべく胸鎖乳突筋、斜角筋、肋骨挙筋、大胸筋、小胸筋、広背筋などが活動し胸郭を広げるのを助けます。呼気時には腹筋群と内肋間筋も動員されます。
胸鎖乳突筋と斜角筋は首周りについています。肋骨挙筋は背骨と肋骨をつなぐようについています。
呼吸筋とスポーツの関係は様々なスポーツで研究されており、トレーニングで得られる効果についても明らかになってきました。特に持久的なスポーツでは運動中に呼吸筋の疲労が起こることが分かっています。呼吸筋が疲労すると体に取り込める酸素の量が減少してしまいパフォーマンスの低下につながると考えられています。
呼吸筋をトレーニングすれば呼吸筋の疲労を防ぐと共に、一度に吸える量が増えてパフォーマンスが上がると考えられています。
水泳は水の中という特殊環境で行われるスポーツで、呼吸とは密接な関係があります。水泳における呼吸は息継ぎの限られたタイミングに一瞬しかできません。さらに水圧や姿勢の影響もあり、水泳特有の呼吸パターンをしています。そしてこの水泳特有の呼吸パターンは、陸で行う他のスポーツの呼吸パターンと比べて、呼吸をつらいものにしてしまいます。
つまり、水泳では呼吸筋がバテやすい。トレーニングする価値があるかもしれない。
この記事では学術論文のデータを紹介しながら水泳と呼吸筋について詳しく見ていきます!
水泳では呼吸筋が疲労しやすいと考えられる理由
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