体が柔らかい方が水泳が速くなる!!とよく言いますが、本当でしょうか?確かに硬すぎてストリームラインが組めない選手なんかは改善の必要がありますが、柔らかければ柔らかいほど良いというわけでもありません。むしろ、柔軟性が高すぎることでデメリットがあることも!論文も参考にしながら水泳と柔軟性についてわかる限り全て書きます!!
目次
【関節弛緩性】柔らかすぎるデメリット
✔︎両手を後ろで組める(片手は上から、片手は下から)?
✔︎立った状態から前屈して地面に手がべったり余裕で着く?
✔︎両足のかかとを付けたまま、つま先を180°開ける?
これ、どれもできたら「スゲー!柔らかいね!」って言われることの方が多いと思いますが、
実は関節が緩いサインなんです。
いくつかチェック方法があって、当てはまる数が多いほど関節が緩い=弛緩性が高いと評価されます。
どれか1つしか当てはまらないという場合でも、
当てはまってしまっている関節に関しては緩くて弱点になっている可能性があります。
例えばさっきの例なら、両手を体の後ろで余裕で組めるのであれば肩を安定させる筋肉が弱いかもしれませんし、
前屈が余裕すぎるなら、体幹の筋肉が弱いかもしれません。
それによって、大きく2つのデメリットがあります。
ケガをしやすい
柔軟性が高いとケガをしにくいイメージですが、それは適度な柔軟性に限ります。
ゆるすぎる場合は、必要な強度が無いということなので、それはそれでケガします。
ケガをしてしまっては、速く泳ぐ以前の問題なので気を付けましょう。
肩:少年野球で同年代の中でも遠投や球が速くてピッチャーをしていたが、肩が緩いので小5で故障。(腕のしなりに筋力がついてこなかった)
足首:緩いけど足のサイズが大きく、小学生の時にすでに高校生の子達と同じくらいキックが速い。フィンのような足をしていたけど、関節が耐えれずに中学生からケガを繰り返す。
腰:かなり緩い。もちろん腰に故障歴あり。
関節が緩い選手の対策は後で述べます。
パフォーマンスが低いことがある
関節の弛緩性が高いことで、スポーツのパフォーマンスが下がる場合があります。
競技によって変わりますが、水泳では場面によって悪影響です。
例えばストロークにおいて、
・水に負けてしまう
・エントリー後の抑えがきかない
キックでも
・強く蹴り込みにくい
・姿勢が定まりにくい
などなど
ただし、トップ選手になると競技への適応で反張膝気味になるというのは論文でも出ていますし、
反張膝の方がキックが速い可能性も示唆されています(*1)
これは競技への自然な適応なので、無理に反張膝を目指してストレッチをしたりする必要はありません。
おそらくですが、筋力などを付けながら自然にそうなったので怪我をしていないだけかなと。
水泳選手の柔軟性はどう変化していくの?
水泳は骨の成熟が未熟な低年齢期から競技として取り組んでいくため、パフォーマンスやケガの観点からも年齢と共にどう変化していくかが注目されています。
現在わかっていることとしては、
・トップジュニアの男子選手では年齢と共に、肩関節の柔軟性や弛緩性は年齢と共に低下するが、女子選手は緩いままになりやすいこと(*2)
・膝、足首の関節弛緩性は競技の継続とともに高まっていくこと(*3)
・肩関節内旋(内に捻る)、股関節内旋、足首は男女ともに年齢と共に柔軟性が低下していく(*4)
・膝の伸展(伸ばす、反張膝の方向)は男女ともに年齢と共に関節弛緩性、柔軟性が高くなっていく(ゆるんでいく)(*4)
・肩、肘、股関節は女子の方が緩い(柔軟性、弛緩性)(*4)
簡単にまとめると、女子の方が関節は良くも悪くも緩い状態が保たれやすいということ。
それもあって、男子の方が力強い泳ぎがしやすく、年齢と共に男女のタイム差が大きくなっていきます。
とはいえ、男子の選手であっても関節によっては年齢と共に、弛緩性も上がっていくので、ケガの予防という観点から対策が必要ですね。
年齢によって有利だけど
年齢によっては、関節の緩さ、柔軟性は過度であっても有利なので見過ごされてしまいます。
というのも、年齢が低いほど全体の技術が未熟なので、大きく動かせると有利になることがあるからです。
よくしなるムチみたいな感じですね。
ただ、これは放置しておくとまだ小学生なんかは筋肉も骨も未熟なため、成長とパフォーマンスが不釣り合いになってケガに繋がる場合も多いです。
さっきの尾崎コーチのボロボロボディがその良い例ですね。
試合前のストレッチで水泳のパフォーマンスは上がるの?
ここまでで、柔軟であればあるほど良いというわけではないというのがなんとなく理解してもらえたかと思います。
実際の泳ぎでも、水を抑える、グライド姿勢を保つ、強く水を蹴るといった場面では柔軟性よりも筋力や関節を安定させる能力が重要です。
この局面でも緩いと、水を捉えきれなかったり姿勢が崩れたりでタイムが出ません。
では、試合前のストレッチはどうなのでしょうか。
一般的に、スポーツの試合前にゆっくりじんわり伸ばすストレッチをするとパワーが発揮しにくくなってパフォーマンスが下がると言われています。
どちらかというと、軽く筋トレをしたり、走る、跳ぶ、体操をするなどして筋肉の温度と心拍数を上げ、体は弛まないようにした方がパフォーマンスが上がります。
試合前にすべきことは選手によって違う
とはいえ、選手によって使い分けがあって良いと思います。
あまりに体が硬く、ストリームラインを組んだり、飛び込みの構えすらつらい場合はストレッチをしても良いと思います。
一方、普段から関節が緩い選手はすでに泳ぐために必要な可動域があるので、ストレッチよりも締める方が得策だと思います。
体幹トレーニングを軽く挟む、肩の運動をするなどして関節が安定しやすいようにした方がプルやキックがしっかりと打てると思います。
関節が緩い水泳選手が普段すべきこと
では、関節が緩い選手は普段どんな過ごし方をするべきでしょうか。
やはりおすすめなのは、体幹トレーニング、肩のインナートレーニング、股関節の安定を促すトレーニングです。
1つ1つ解説するとキリがないので今回は省略しますが、いずれにせよぐにゃぐにゃしやすい体質なので、そのぐにゃぐにゃをちゃんとコントロールし、無茶な動きを減らし、力をちゃんと伝えれるようにしていく必要があります。
水泳個別指導・トレーニングのFORMSでの取り組み
私たち、FORMSでは関節が硬くてパフォーマンスの邪魔をしていると判断した選手には、可動域の改善ができるトレーニングを提案し、
逆に関節の緩さが伸び悩みに関係している場合は、関節を安定させてコントロールする機能を高めるトレーニングを提案しています。
「関節がゆるそうだな」
というのは、泳ぎを見ていてもわかるので、実際にタイムが伸びない原因の1つだったりします。
スイムレッスン時にもそれらを考慮した練習メニューの実施やフォーム修正を行なっています。
水泳個別指導・トレーニングのFORMSでの取り組み
今回の内容はここまで!
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最後まで読んでくださってありがとうございました!
参考文献
1)高橋航太郎,藤田英二.反張膝が競泳のドルフィン キック動作に及ぼす影響.スポーツトレーニング科 学.2018; 19: 35-38.
2)小泉圭介,半谷美夏,金岡恒治,他.一流競泳選手 の成長に伴う関節弛緩性変化.日本臨床スポーツ医 学会誌.2015; 23: S233.
3)猪俣伸晃.エリート小学生におけるフィジカル チェック~上肢柔軟性の経時変化について~.水と 健康医学研究会誌.2019; 21: 15-18.
4)鈴木雄太,奥田鉄人,三瀬貴生,國分裕一 栗木明裕,髙山弘幹,前田慶明,浦辺幸夫
ジュニア競泳選手の筋柔軟性および関節弛緩性の年代差および性差 日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 31 No. 1, 2023.