「肩甲骨をしっかり使って泳ぎたい」水泳をしている人なら上級者でも初心者でも、常にそう願い、意識しているはず。だけれども、それがなかなかうまくいかない。上手くいっているつもりでも、それが本当に合っているか否かはわからない。というわけで、泳ぐ前にやっておくと肩甲骨が動きやすくなる簡単なウォーミングアップをご紹介します。
今回は特にリカバリーからグライドの局面でしっかり肩甲骨を使えるようにするために、上方回旋とい動きを良くするためのメニューになります。
上方回旋がしっかりすることで、今よりしっかりと遠くに腕を伸ばし、水をキャッチすることができます。
肩甲骨を使って泳ぐとは?
そもそも、肩甲骨をしっかり使って泳ぐと言っても、どういう状態が肩甲骨を使えた状態かが曖昧です。
それをクリアにしないと動いているかどうか、どうやって動かすかが分かりません。
まず、肩甲骨の動きは全部で6つあります。
挙上、下制、外転、内転、上方回旋、下方回旋です。
肩甲骨は上腕骨と連動して腕を上げたり下げたり、回したりします。
水泳でよく使う、腕を前に伸ばす動き(けのびや、リカバリー~グライドの局面)は肩甲骨が上方回旋した状態です。
(*肩甲骨の別動作も同時に起こっていますが、今回は上方回旋にフォーカス)
肩甲骨が肋骨の上をすべるように上に回転していくことで、それに上腕骨が連動して腕が上がります(バンザイの状態)。
この連動が上手くいっていないバラフライやクロールの時にスムーズに腕が挙がりません。
上方回旋を含め、肩甲骨と上腕骨の協調した運動は、肩甲上腕リズムとして知られています。
上方回旋を詳しく
腕を上げる時、リカバリーをする時、肩甲骨は肋骨の上をすべるように回旋します(上方回旋)。
上方回旋は、だいたい逆三角形の形をした肩甲骨の一番下の角が反時計回りの方向に円を描くように動いていく感じです。
↓後ろから見て、右腕を真横に挙げる時の肩甲骨の動き。
上腕の骨は肩甲骨についています。
立った状態で、腕を体の横から上げる動き(バタフライのリカバリー)を肩関節の外転と言います。
外転の動きは肩甲骨が肋骨の上をすべる動きと肩甲上腕関節(上腕骨と肩甲骨)の動きが1:2です。
どういうことかと言うと、腕を90°上げるならば30°は肩甲骨が肋骨の上をすべる動き、60°は肩甲上腕関節の動きです。
外転90°は腕を地面と平行になるまで上げる状態です。
水泳のけのびの状態は肩関節が180°外転した状態です。
その場合、肩甲骨が60°肋骨の上で上方回旋し、肩甲上腕関節が120°貢献している状態です。
腕が上がり切らず、ストリームラインがしっかり組めない場合、肩甲上腕関節しか使えていない場合があります。
残りの60°を使えるようにならないと腕は上がり切りません。
上方回旋は様々な筋肉が協調的にはたらいて成立しています。
どこかの筋肉に機能不全があったり、使い方のエラーがあったり、上方回旋とは逆の作用である下方回旋の筋肉に緊張や拘縮があると上手くいきません。
今回ここであらゆるパターンについての対応策を解説することは長くなりすぎるので書きませんが、
よくあるパターンについて書いておこうと思います。
上方回旋のためには一度内転で安定させる必要がある
上方回旋のためには内転(肩甲骨を内に寄せる動き)が働いて、一度安定させる必要があります。
ところがこの内転を司る筋肉が使えていない場合があります。
内転に関係するのは僧帽筋の中部というところです。
もしこの筋肉が機能していないと、その奥にある菱形筋という筋肉が代償します。
菱形筋は肩甲骨の内転だけでなく、下方回旋(上方回旋の逆)という作用があるため、上方回旋を邪魔します。
このパターンで腕が上がりにくい場合は僧帽筋中部のアクティベーションをします。
方法は簡単です。
まずは現状の確認として、ストリームラインを組んだり、リカバリー動作をしてみてください。
次に寝転んで、手を後頭部に。
そのまま肩甲骨を寄せる動きで肘を地面から上げます。
肘は真上に上がるようにします。
腰の方に向かいながら上がると菱形筋が代償しています。
これを15~20回程度繰り返します。
パートナーがいれば、肘に軽く負荷をかけてもらって10回~15回程度。
左右行った後に再びストリームラインを組んだりして動きやすさを確かめてみてください。
以上です。