【研究論文】世界のエリート水泳S&Cコーチが採用するドライランドトレーニング【筋トレ】

スイマーの方なら、泳ぐ前や泳がない日にドライランドトレーニングとして筋トレなどを取り入れている方も多いと思います。でも、自分のやっているトレーニングが本当に合っているのか、他のスイマーはどんなことをしているのか、どうやって種目を選んだら良いのか気になりませんか?

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泳ぎに悩む町人
 最近、泳ぐ前と泳がない日にドライランドトレーニングを取り入れるようにしてるんだけど、皆はどんなことやってるのかな?あと、どうやって行う種目を決めたらいいの?

Yusan
お!良い心がけやん!じゃあ、世界のエリートを参考にして考えてみよう!

 

というわけで先日、面白い研究論文を見つけたので紹介したいと思います。Dry-land resistance training practices of elite swimming strength and conditioning coaches (日本語約:エリートスイミングS&Cコーチのドライランドレジスタンストレーニング)というもので、2018年にJournal of strength and conditioning researchから発表されました。アイルランド、イギリス、オーストラリア、アメリカにいる23人のエリートスイミングS&Cコーチたちが選手たちのドライランドレジスタンストレーニングにどんなメニューを取り入れているかを調査した内容です。

 

ドライランドトレーニングとは水泳独特の言い方のように感じます。単純に陸で行う筋トレやその他コンディショニングの運動のことです。ただ、今回は「レジスタンス」と入っているのでいわゆる筋トレ的な要素が強くなります。S&Cとはストレングス&コンディショニングの略です。

 

研究対象になったストレングスコーチたちがクライアントにしているスイマーは、国内上位レベルが59.10%、国際大会出場レベルが36.35%、4.55%地方大会レベルでレベルの高い集団でした。調査方法はウェブでの質問回答によるものでした。トレーニングメニューだけでなく、果たして彼らはどんなドライランドトレーニングをしているのでしょうか。もしかしたら何かしら良いヒントを得られるかもしれません。

 

 

結果①:ドライランドレジスタンストレーニングをする3つの目的

コーチたちに調査をしたところ、ドライランドレジスタンストレーニングを行う目的として3つのテーマが浮かび上がってきました。

①パフォーマンス向上のため

②体の丈夫なスイマーにするため

③ケガの予防のため

 

レジスタンストレーニング、いわゆる筋トレを水泳選手に取り入れることでストロークやキックの強化につなげること、トレーニングのキャパを増やし、水中トレーニング量増加やケガへの耐性をつけることが目的として大きいようです。これは特に驚くべき点ではなく、多くの指導者にとって基本的で広く認識されている考えだと思います。

 

 

結果②:ドライランドトレーニングの具体的な実施形態

では次に、どんな場面・形態でドライランドレジスタンストレーニングを取り入れているかを分析したところ、以下のようになりました。

①ウォームアップとして 78%のコーチが実施

②サーキットトレーニングとして (サーキット:複数種目を1セットずつ順番にこなして何周か回る方法)39%のコーチが実施

③一般的なレジスタンストレーニングとして 86%のコーチが実施

④プライオメトリクストレーニング 8%のコーチが実施

 

ほとんどのコーチが水中練習前のウォームアップとしてドライランドレジスタンストレーニングを取り入れていました。目的は心身の準備とケガ予防だそうです。水中練習前のウォームアップの考え方については別記事で紹介しているので参考にしてみてください。

 

また、最も多くのコーチたちが実施している「一般的なレジスタンストレーニング」というのはジムでバーベルやダンベル、自重を使ったりして行うようないわゆる「筋トレ」のことです。

 

では、彼らはどのような種目を実施しているのでしょうか。

 

結果③:最も取り入れられている種目は何か

ウォームアップ、サーキット、一般的なレジスタンストレーニング、プライオメトリクストレーニングという4つのドライランドレジスタンストレーニング形態がありましたが、その中で23人のコーチが実施したエクササイズ種目は95個ありました。そして95種目のうち、コーチたちが「これは水泳のパフォーマンス向上にええぞ!!よく使ってるぞ!!」というトップ25種目を研究者たちは明らかにしました。

 

途中まで紹介します。残りは原著論文を見て下さい。

 

1位:Pull ups (懸垂)・スクワット (45%のコーチが実施)

 

3位:クリーン (38%)

 

4位:Chin ups (逆手での懸垂) (37%)

 

5位:デッドリフト (32%)

 

6位:ラットプルダウン (22%)

 

7位:メディシンボール投げ・ベンチプレス (18%)

あとは順位こそついているものの大した差ではなかったのでもういいかな。

 

懸垂とスクワットが最もよく取り入れられているドライランドレジスタンストレーニング種目でした。懸垂は動作パターンが4泳法全てと似ているので理にかなっているなと思います。スクワットはバタ足やドルフィンキックとは動作パターンがあまり似ていないので、どちらかと言うと飛び込みスタートのパフォーマンス向上を狙った意図が大きいかと思いましたが、スクワットと泳パフォーマンスに相関があるという研究もあるようなので何とも言えないです。ただ、まだまだ泳パフォーマンスとレジスタンストレーニングの相関については研究が少ないようです。

でも3位にクリーンが来ているあたり、「スタートでめっちゃ跳んでやろう」って意図が見えるのは僕だけ?笑

 

 

今後これらの種目が水泳のパフォーマンス向上に転化しうるかについて、または水泳特異的なレジスタンストレーニングとはどういったものかという点について研究が必要になってくるそうです。

 

個人的考察と感想:研究結果から考えるトレーニング種目の選択方法

研究結果からわかることは大きく3つです。

 

①泳ぐ前の準備と一般的なレジスタンストレーニングはほとんどの水泳S&Cコーチが実施

②行う目的はパフォーマンス向上とケガ予防のため

③エリートS&Cコーチたちは懸垂とスクワットを最も多く実施。次いでクリーン。

 

泳ぎに悩む町人
 ほんなら俺も懸垂とスクワットしまくる!!

Yusan
それは違うでー。短絡的すぎるわ。強い人がやってるから自分もやろうは良くないよ。 

 

 

これらの結果から実際にトレーニングを考えていくときに重要になってくるのが

 

①実施する場面によって具体的にどんな種目をどれくらい行うか

水中練習前のウォームアップに行う場合と、ドライランドトレーニング自体がメインになる場合とで内容は変わってくるはずです。

 

②パフォーマンス向上やケガ予防のために自分が鍛えるべき部位や要素はどこなのか見極める

エリートコーチやエリートスイマーが懸垂とスクワットをしているから必ず自分も懸垂とスクワットをしなければいけないというわけではありません。彼らなりに、何らかの目的があってその種目に時間を割いています。もし自分にはもっと別の欠点があるのならそちらを強化する種目を選ぶべきかなって思います。もしかすると、パフォーマンスに関してはそもそもレジスタンストレーニングをしなくても大量に伸びしろがある可能性だってあります。

 

また、種目だけ真似して漫然とトレーニングをしてしまうのも良くないと思います。泳ぎのどの局面を想定してその種目をするのかが大切です。クリーンなんて明らかに飛び込みスタートのためのトレーニングです。それを知らずにただクリーンをしても、それはただの苦行です。他にも、自分が強化すべきはバタ足やドルフィンキックだという人がクリーンをたくさん行うっていうのもどうかと思います。クリーンとバタ足はどちらも下半身を使う種目ですが、身体の動作パターンが明らかに違うので、パフォーマンスへの移行が微妙だと思います。目的に合ったエクササイズ種目を選択してください。

 

 

スイマーの方は参考にしてみてください!

 

 

参考文献

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Crowley E1, Harrison AJ, and Lyons M: Dry-Land Resistance Training Practices of Elite Swimming Strength and Conditioning Coaches. J Strength Cond Res 32(9): 2592-2600, 2018.

 

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