水泳の個別指導をしていて最も多いご要望の1つが「25mを泳げるようになりたい」というものです。タイトルにあるように、25mのクロールはレッスンを5回、多くても10回もすれば小学生以上のお子様は泳げるようになります。ただし、本来であればもっと時間をかけたいのもこちらの本望。個別指導でなぜこんなにも早く泳げるようになるのか。そして早く泳げるようになるだけが良いことなのか、そんなお話をします
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クロール25m完泳のためにやることは水慣れ
クロールが泳げるようになるために何をするかを想像した時、水泳の指導をしたことが無い方であれば「キックを練習して、手の回し方を練習して、、、」と思われるかもしれません。
もちろん間違いではないのですが、これって実はクロール完成のためには近道に見えて遠回り。
それは水泳はとても特殊なスポーツだからです。水の中という特殊環境で、体を横向きに倒し、頭のてっぺんの方に向かっていく運動です。
本来、人間は前方に走ったり歩いたりするのに適した構造をしています。
水泳ではその常識が崩れてしまいます。
なので、まずは水への恐怖心を取り、水の中で様々な体勢になれるように、心・脳・体を慣れさせていく必要があります。
ここが不十分な場合、恐怖心で体が力みやすくなりますし、手足の動かし方を習っても初心者のお子様は恐怖心や違和感で指示が入るような状態ではありません。
ですから、FORMSの場合も通いたての初心者のお子様は必ず水慣れから入ります。
コーチと一緒に水に浮かんでみたり、潜ってみたり、楽しく遊ぶ中で感性を磨いていきます。
ここに時間をちゃんと費やしたかが後々響いてきます。ここを飛ばしてしまうから、泳げなくなります。
ぶくぶくパーとキックがある程度入ればクロールは簡単
水に慣れていく中で、必ず習得する必要があるのが水泳の「特殊な呼吸法」です。
普段私たち人間は、鼻から吸って鼻から吐いています。ハードな運動をする時や鼻が詰まっている時のみ口呼吸をします。
そもそも普段から口呼吸の方は普通に身体と脳の健康に良くないので、気をつけてください。
ここ数年はマスクのせいで、呼吸パターンが壊れてしまっているお子様もよくいらっしゃいます。ちゃんと泳げるようになり、健康的で他のスポーツや学業でも良い成績を残したい場合は着用しないことをおすすめします。
水泳での呼吸法は、水中で鼻から息を吐いて、息継ぎ時に口から自然と入ってくる呼吸です。
この呼吸をしっかり身につけないと、クロールの息継ぎの時につまづきます。
呼吸は吸うことにみんな意識が行きがちですが、しっかりと吐けないことには吸えない仕組み。
下手な人のクロールって、
「ぶはあああああ」
って言ってますよね(笑)
こうなるとすぐ疲れます。
そうならないために、「もう飽きた」とお子さまが思うくらいボビングジャンプをします。ボビングジャンプは、水泳の呼吸法をしながら繰り返し水中でジャンプをする練習です。
これが余裕でできるようになってからようやっとキックの練習に入ります。
なんならボビングとキックができればある程度泳げます(笑)
クロール初心者or小学生以下はほぼキック
というのも、小学生以下や初心者の方のクロールの推進力のほとんどはキックです。
手で水をかいてグイグイ進むのはある程度の体の成長とそれに付随する技術が必要です。
なので、初心者でしっかり水に浮かんでバタ足キックで進むようになると、もうクロール完成は間近です。
私たちの個別指導でも、キックがしっかりできるようになってきたのと同じ日に息継ぎ無しのクロールを教え始めることがあります。
キックに慣れてきたら、ビート板キックで息継ぎをしながら25mを何回か練習します。この時に息継ぎでバタ足キックが止まってしまわないようにアプローチしています。アプローチについてはレッスン受講でのお楽しみですが(笑)
ここまでくると、息継ぎクロール完成の準備も7割くらい整います。
クロールの腕と体の回し方を知る
呼吸とバタ足キックができてきたら、腕の回し方を教えます。具体的なポイントは今回は割愛しますが、この時に重要になるのが体の回転(ローリング)と繋げること。
上手な人のクロールの腕の動きってすごくダイナミックに見えますが、決して腕をとんでもなく大きく回しているわけではありません。体の左右の入れ替えをうまく使って、そこに腕の回転を合わせているだけです。
レッスンでは体の入れ替えが自然とできるようにアプローチしながら、腕の回し方を指導しています。ここを適当にしてしまうと、将来水泳を続けた時に変なクセが残って怪我をしてしまうこともあります。競技として続けるかどうかわからなくても、将来を見越した指導をしています。
ますは息継ぎ無しのクロールで体の左右の入れ替えを使って大体10〜12.5m泳げるようになってもらいます。
教えている側としても早く息継ぎを練習したいですが、我慢します(笑)
生徒さんもこの頃にはかなり自信がついてくるので、息継ぎをしたがります(笑)
個別指導なので、したそうな場合は練習の後半に組み込むこともあります。
モチベーションを保つことの方が大切な時があるので。
クロールは息継ぎの感覚がつかめたらもういくらでも泳げる
息継ぎの練習で1つ特殊なことは、顔を上げる向きが横だということ。ここまで練習していたビート板バタ足キックの息継ぎは顔を上げる向きが前だったので、そこの切り替えに慣れてもらう必要があります。
ただ、息継ぎは1回2回できて感覚が掴めてくると、早い子ならその日のうちに25m泳いでしまいます(笑)
むしろ、今後のモチベーションを保ち、自信を持ってもらうためにこっちから「25mチャレンジしてみよう!」と言ってます(笑)
25m泳げなくても、息継ぎを何回もすれば過去最高の距離を泳げますし、できたらモチベーションも爆上がりしてもっと練習を頑張ってくれるようになります。
保護者様や本人様のご要望、状態や運動経験などにもよりますがここまで5〜10回もあれば25mのクロールは泳げるようになります。学校やレジャーのプールで遊んだことがあり、水への恐怖心がすでに無い場合はもっと早いこともあります。
ただし、指導者としてはもっと時間をかけたいのが本望です。
すぐ泳げるようになることの光と闇
「すぐに泳げるようにして欲しい!!」
これはよくあるご依頼ではあります。学校のプール授業やスイミングのテストがあるので急ぐ気持ちはわかります。ですが、ここまで書いてきたように、基礎基本になるところを高速で駆け抜けてしまうとどうしても完成系が不安定なものになります。
実際、私たちの個別指導でもご要望にお応えするため&水泳を楽しく思ってもらうためにまずは25m、多少汚い泳ぎでも良いので完泳してもらえるようにすることも多いです。しかし、ほとんどの生徒さんはその後しっかりと基礎から積み上げ直し、安定した泳ぎを身につけさせていただいております。
そうしていくうちに、クロールで進んでいる感覚や綺麗さなど水泳が上手くなる、楽しくなる実感をされるので、気づけば4泳法習得までお子さま本人の意思で継続されている方が多いです。
ご利用頻度は週1〜月1回と様々。習得したい泳法もクロールの後は自由ですし、その日の心身の状態や体力に合わせて練習ができます。
集団指導ではどうしても60分で生徒10人なら1人が見てもらえる時間が「約6分」ですが、個別指導なので60分間全部コーチを1人占め。泳ぎ1本1本アドバイスしながらしっかりと習えます。
水泳個別指導の良さは「長期間低頻度」にあり
水泳個別指導の本当に良い使い方は長期間低頻度にあると思います。
1回1回の練習の質が高いため、1回の成長幅が大きいです。そのかわり金額がどうしても高くなります。
経済的なところを加味すると、最もおすすめなのは隔週から月1回で長期間継続することです。
実際私たちFORMSも5年以上させていただいていますが、十分にそれで成果が出ています。
習得までのスピードやパターンなど個人差はすごい
クロールに限らず、4泳法全ての習得・上達には個人差がやはり大きいです。
これまでの運動経験や性格、など様々なことが関連します。
ついつい便利な時代になり、私たち大人は「早さ」に意識が行きがちです。
もちろんご要望の場合はそれも可能ですが、本質的なお子様の成長や将来を考えた時、絶対に焦らないでいて欲しいですし、「早く、簡単」は成長・発達において本来的には無いと思っておいていただきたいです。
もちろん「効率の良さ」は大切ですが、「早く・簡単にできた」と思えることがあったとしても、それは表面的な成功体験だと思います。少しの難しさと苦痛を伴うハードルを超える時に大きく成長できます。私たちは水泳を通じてそのお手伝いをさせていただいています。
今回の記事が何か少しでもお役に立てていれば幸いです!
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