今回は抵抗の少ない平泳ぎのひとかきひとけりで、もっと前へ速く進むためのヒントをアダム・ピーティ選手を参考に考えていきたいと思います。平泳ぎのスイム部分には多くの時間とエネルギーを割いて練習をしていますが、ひとかきひとけりはちょっと後回しという人も多いかと思います。
でもそれは非常にもったいなく思います!
飛び込みも、ターンも、ひとかきひとけりも全てあっての平泳ぎです。
短水路なら50mのレースのうち20~30mくらいはひとかきひとけりです。
上手な人であればひとかきひとけりは距離規定がないのでスタート後に15mを超えます。
水泳で一番スピードが出るのは、飛び込んだ直後です。
飛び込んだ直後、最高にスピードが出る瞬間に行うのがひとかきひとけりです。
いかに飛び込みの勢いを泳ぎにつなげられるかは、ひとかきひとけりの技術に大きく左右されると思います。
目次
アダム・ピーティ選手のひとかきひとけりのスロー動画
アダム・ピーティ選手と言えば、スプリント種目では1人だけ異次元の泳ぎをしています。
そろそろカテゴリーを 「男子」 「女子」 「ピーティ」 にした方が良いのではないかってくらいです(笑)
ピーティ選手以外誰も100m平泳ぎで57秒を出せないのに、この前の世界水泳で56秒を出してしまいました。
ぴょー。
ピーティ選手と言えば、ムキムキの肉体、100mとは思えないくらい速いピッチが特徴的なので、ついついパワーに注目しがちです。
ですが、技術的にももちろんトップクラスです。
パワーだけであんなに速く泳げません。
先日Youtubeサーフィンをしていたらピーティ選手のひとかきひとけりの水中スロー映像を見つけました。
ここからその技術力の高さを垣間見たのでシェアしておきます。
引用:Youtube arena water instinct https://www.youtube.com/watch?v=1-MnnQd4afo
腕のタトゥーがまだ控えめな頃ですね(笑)
動画は2年前のものですが、十二分に参考になります。
ドルフィンキックの瞬間は映っていないのがちと残念ですが、他の映像を見てもらうとわかる通り、ドルフィンキックの時に大きな上下動はなく、キックの勢いが素直に前に向いています。
どこもかしこもすごいのですが、皆さんはどういった所に目が行きましたか?
多分、目が行ったところが凄いところ、学ぶべきところかと思います。
ひとかきひとけりで抵抗を減らすための基本
ピーティ選手の動画を見て頂くと分かりやすいのですが、ひとかきひとけりでは水の抵抗を極力減らす必要があります。
そのためには
①前面からの抵抗を減らすために、真っ直ぐ狭く動作を終える
②段階的に浮上する
「狭く」というのは上下、左右全てです。
そうすることで全面からの抵抗が減り、減速しにくくなります。
次章ではピーティ選手のひとかきひとけりを参考にしながら詳しく見ていきます。
①ひとかきひとけりのドルフィンキックの前と後
ドルフィンキックを1度だけ打つのですが、この時の予備動作には個性があって面白いです。
大きめのうねりを作って、キック1発の威力が高そうな選手。
うねりは小さく、抵抗を少なくしている選手。
どちらが良いかは、人それぞれなところがあるので、浮き上がりのタイムを計ってみるのが手っ取り早いと思います。
ただし、いずれの場合にせよキックを打った後は真っ直ぐな姿勢に戻ることが大切です。
ここで、ストリームラインが大きく崩れたり、深く潜りすぎたりすると抵抗の増加やその後の動作のロスを生みます。
ひとかきひとけりの時はバタフライのドルフィンキックとは違い、同じ動作が連続しません。
1発だけキックを打ったら、その勢いをピタっと止めることでキックで得た推進力を前に伝えます。
流れで動いていくドルフィンキックよりも、「動から静へ移る」のでピタっとストリームラインに戻るには意識的に練習する必要があります。
特に骨盤と胸椎(胸あたりの高さの背骨)のコントロールが難しいです。
②ピーティ選手に学ぶ、気を付け姿勢と手を前に戻す動き
キックをうって、手を後ろにかいたら気を付けの姿勢になります。
ここからが今回の記事の本題です。
もう一度さっきの動画を見てみてみます。
気を付けの時は、しっかり脇を締めて幅を狭くすることで水の抵抗を減らしています。
腕、手はできるだけ体に密着させています。
脇が甘い、肘が曲がっているなど、体のスペースから手と腕が大きく飛び出していると抵抗になる可能性があります。
手を前に戻すときも、胸と顔の前スレスレを戻してきているのが分かります。
これ、実際に試してもらうとわかるのですが、手が体から大きく離れるのと、体に沿ってスレスレを戻してくるのとでは水の抵抗感が全然違います。
そして、ピーティ選手の手を前に戻す動きをよくよく見ると、右手と左手が時間差で動いています!
同時に動かす選手が多いですが、左右に若干(0.0何秒)の時間差をつくり、最終的に両手は重なるくらいまで幅を狭くしています。
なぜこうしているか、本人に聞いてみないとわからないところもあると思いますが、、、
私は、以下の理由だと思います。
・左右が同じ道を通るので抵抗が減る
・左右同時に行うより、手を戻すときに脇が開きにくい
・胴体から手がはみ出しにくい
1つ参考までにどうぞ!
③段階的に浮上する
飛び込んで→ひとかきひとけりの勢いをスムーズに泳ぎにつなげるには、抵抗なく水面に上がってくる必要があります。
ひとかきひとけりをずっと同じ推進でやってしまうと、最後に急浮上になり背中にたくさん水を受けて「ぼわっと」上がってくることになります。
経験ある方も多いと思います。
そうならないために段階的に浮上してきます。
ドルフィンキックを打ち、手を後ろにかき、気を付け姿勢になった時に1段階浮上します。
水面にまでは出てこないでください。
そして、息継ぎ無しのワンストロークで2段階目の浮上をし、泳ぎにつなげていきます。
最後に
やっぱり速い選手の動きって凄いです。無駄がないというか、洗練されているというか。決してすべてをマネすることが正解でもないし、簡単にマネすることもできません。動きは完コピしても、タイムに直結するかも別の話になってきます。でも、上手な人は上手な理由があるので、こうやってゆっくり見てみるといろいろと発見があって参考になります。ネットがある時代で良かったとつくづく思います。