最近よく見かける大塚製薬のボディメンテですが、飲むことで体へのメリットは本当にあるのか、その効果についての研究データを徹底調査していこうと思います。特にボディメンテの特徴であるB240乳酸菌についての研究論文を中心にその効果を見ていこうと思います。
目次
ボディメンテとは
ボディメンテは大塚製薬から発売されているコンディショニング飲料で、通常のペットボトルタイプとゼリータイプがあります。よく見かけますよね。
公式サイトはこちら
こいつとか(ペットボトル飲料)
こいつとか(ゼリー飲料)
ペットボトル飲料はさっぱりしたグレープフルーツ風味で酸っぱさがなく、割とまろやかな口当たりで飲みやすいです。ゼリータイプの方はヨーグルト風味が強くてやや苦みがあり、味の好みが分かれそうな感じでした。また、ゼリータイプの方はホエイタンパク質の含有量が豊富でトレーニングを積む人には嬉しい組成です(一食当たり10g)。
ボディメンテ最大の特徴であり、飲料としての新規性は乳酸菌B240で、どちらのタイプにも配合されています。もちろん整った電解質のバランスやその他の配合物も体へのメリットが考えられますが、そこに関してはボディメンテ以外にもたくさん飲料があるので今回はフォーカスしません。
乳酸菌B240とはタイ北部の伝統的発酵茶ミヤンから発見された植物性の乳酸菌だそうです。現地ではミヤンが古くから人々の健康を支えてきたということに大塚製薬は着目し、独自の研究を重ね体調管理に役立つという効果を確認したそうです。
出典:ボディメンテ公式サイト
ということで調べてみよう!
まずその前に、B240乳酸菌を配合したボディメンテを飲むことで得られると言われるメリットについて大塚製薬のサイトで確認してみました。飲んで体をバリアするというめちゃめちゃ体に良さそうな宣伝文句通り、体調管理のサポートがボディメンテのメリットでした。B240だけでなくホエイタンパク質とBCAAも含んでいるゼリータイプは身体のリカバリーとメンテナンスのサポート効果も挙げられていました。
ただ、体調管理というワードでは研究データにありつけないので、もう少し詳しく言い換えてみると。
体調管理→体調を崩さないこと→体調を崩す原因は?→風邪やウイルス感染など→その原因は免疫機能の低下では?
つまり、ボディメンテを飲むことで免疫機能に関して何らかのメリットがあると推測ができます。
B240乳酸菌が何らかの作用で免疫機能を向上させる、もしくは低下を抑制し、ウイルスや細菌からの感染を防ぐサポートをするというのがメリットでしょうか。ではこれは本当なのでしょうか?そして1本や2本で効果が出るのでしょうか?継続して飲むべきなのか否かというところにも言及していこうと思います。
B240は「プロバイオティクス」に用いられるかもしれない乳酸菌の1つ
B240は乳酸菌の中でもLactobacillus plantarum という種に属しており、この種は酸素を必要とせず乳酸発酵をします。
*乳酸発酵には乳酸のみ生成するホモ乳酸発酵と、乳酸、エタノール、二酸化炭素を同時に発行するヘテロ発酵がある。
B240が属するLactobacillusの乳酸菌はしばしばプロバイオティクスに用いられています。プロバイオティクスとは宿主に保険効果を示す生きた微生物、またはそれを含む食品のことです(辨野 2011)。簡単に言い換えると食べると体に良い微生物です。乳酸菌はもちろん微生物です。ヨーグルトや健康食品で「生きた乳酸菌が腸まで届いて○○○!!」って宣伝は良く聞きますよね。B240がプロバイオティクスになるかはまだ不明ですが、後で紹介するような健康へのメリットや他のLactobacillus属の乳酸菌がプロバイオティクスに用いられていることからも、今後の期待が高まる乳酸菌です。
プロバイオティクス=生きた微生物とされていますが、必ずしも乳酸菌が生きて腸までたどり着けるわけでもありません。でも、死んでいても効果はあります。死んでいたとしても乳酸菌に含まれる成分や酵素が体に様々なメリットをもたらすということが知られています。
ボディメンテに含まれるB240も生きてるんだか死んでるんだか分かりかねますが、死菌でも身体へのメリットが確認されています。実際の研究でも多くが死菌でした。
ボディメンテに配合のB240を摂取する効果についての研究
大塚製薬が言う「独自の研究」についてはラボ未発表データの可能性もあるので文献にあたれるかわからないけど、B240についてならいくらか研究があるだろう!ということでとりあえず調査を開始しました。
すると大塚製薬による研究がたくさん!たくさんどころかほとんど大塚製薬の研究でした。
まず、大塚製薬がB240に免疫機能を刺激する効果を始めて確認したであろう研究が2006年に発表されています。ボディメンテが出始めたのは2018年なので、実はかなり前からB240については研究がされていたのですね。この研究は、Yamahira et alによるもので、まずは数ある乳酸菌から粘膜免疫機能を高めるものをピックアップし、その中でも特に高い値を示した乳酸菌B240をマウスに経口摂取させたところ免疫機能の改善が観察されました。
粘膜免疫機能を高める乳酸菌の特定方法は、単離したマウスのパイエル板に乳酸菌をふりかけて検証されました。パイエル板とは小腸にあるリンパ節で腸管関連リンパ組織の1つです。パイエル板は粘膜局所での防御機能の中心である粘膜免疫を司っており、粘膜免疫の主要な因子である免疫グロブリンA(IgA) を分泌しています。パイエル板にふりかけた乳酸菌の中で特にIgA分泌を高めたのがB240でした。
そして、マウスにはB240の生菌or死菌を7日、14日、21日連続で経口摂取させました。すると21日連続でB240を摂取したマウスでは生菌でも死菌でもパイエル板におけるIgA産生がB240を摂取しない群より増加し、粘膜免疫機能の向上が確認されました。また、血中でのIgA産生も増加傾向にあり、全身性免疫が向上した可能性も示唆されました。
マウスが摂取した乳酸菌B240の数は1日に1.0×10⁹(10億)個でした。毎日です。ボディメンテドリンクには乳酸菌がどれだけ入っているか情報がありませんでしたが、ゼリーには20億個入っているようです。ちなみに、多くの実験で使われるマウスの体の体重は20gくらいです。20億個をどうとらえるかはお任せします、、、。人間はマウスの何倍大きいのだろう、、、。
マウスに対するB240摂取の効果は他にもあります。Kobayashi et al (2011) と Kiso et al (2013) の研究ではマウスがB240を摂取することでインフルエンザAウイルス(H1N1) 感染からの生存率が上がること、ウイルスに対する体の防御機能が向上することが確認されました。人を対象にしてインフルエンザAウイルスを意図的に感染させることは研究の倫理上不可能だと思うので、実験されることはないと思いますが、これらの研究でB240がインフルエンザ予防になり得ることが示されました。
Kobayashi et alの研究ではインフルエンザAに感染したマウスに対して死菌B240を0個(対象群)、約4億個群、25億個群、100億個群で14日間摂取させました。14日時点で100億個群にのみ生存率が高まりました。また、B240を100億個摂取したマウスでは、抗インフルエンザIgA, 抗インフルエンザIgGの気管支、血中レベルが上昇しました。つまりインフルエンザウイルスに対しての防御機能が高まったと考えられます。
Kiso et alの研究ではB240の死菌100億個を5週間毎日摂取しました。摂取開始から3週間の時点でインフルエンザウイルスに感染させて生存率や肺での遺伝子発現の変化などについて観察されました。こちらの詳細は後述します。
マウスでは他にも肺炎を防ぐ効果なども認められています。Tanaka et alの研究(2011) では125億個程度のB240を肺炎レンサ球菌に感染する21日前から毎日経口摂取していたマウスでは生存率が高まりました。
人間を対象にしたB240の研究での効果
人間を対象にした研究も大塚製薬によって行われていました。Kishiらの研究(2006) では30人の健康な成人女性(20~24歳)をB240配合飲料摂取群とプラセボ群に分けて二重盲検群間比較で3週間介入をしました。B240摂取群はさらに摂取量で2群に分けました。1つはB240を20億個含む飲料を摂取、もう1つは200億個含む飲料を摂取しました。プラセボ群はB240を含まない飲料を摂取しました。飲むのは200mlの飲料で、被験者にはB240配合かどうかわからない状態で行われました。摂取開始前と、3週間後に唾液、糞便、血液の採取がされて様々な分析をしました。
結果、B240配合飲料を摂取した2群ではいずれも唾液での総IgA量が有意に増加しました。一方プラセボ群では変化がありませんでした。また、B240配合飲料を摂取した2群では糞便でのIgAも増加傾向を示しました。こちらもプラセボ群では変化がありませんでした。他に際立った変化はなかったので割愛します。
平均年齢70歳の高齢者を対象にした研究もKotani et al (2010) によって行われました。80人の高齢者をランダムにB240摂取群とプラセボ群に分け、12週間毎日B240(40億個)配合飲料125mlとプラセボ飲料125mlを摂取してもらいました。すると、B240摂取群では摂取から2週間で唾液中でのIgA分泌量が増加し始め、4週間目にプラセボ群より20%高くなり、介入期間中もずっとプラセボ群より高い値を示しました。
唾液中でのIgA量は粘膜免疫機能の評価として広く用いられている方法であり、この研究結果はマウスの研究と同様の効果が人間でも見られることが確認されました。唾液中でのIgAの低下は呼吸器からの感染症のリスクを増加させるので、B240の継続的な摂取で風邪やインフルエンザなどほの感染予防効果がこれらの研究から期待できます。
研究で認められたボディメンテ(B240)の効果と摂取方法まとめ
ここまでの研究結果をまとめると
・B240の摂取で小腸、唾液、気管支における粘膜免疫機能を向上させる。
・インフルエンザや肺炎に対する防御反応を高めることがマウスでは分かっている。
・B240の効果的な摂取量は人間の場合20億~200億個で効果が出る。意外にもマウスと変わらない摂取量でも効果あり。
(ゼリータイプでB240は20億個配合)
・毎日継続して摂取することで明らかに唾液中でのIgA量を高める。できるだけ継続することが大切。
・継続摂取2週間目くらいからIgA分泌量が増え始め、免疫機能が高まり始める。
・明らかな免疫機能向上のためには3~4週間ほど毎日摂取すると良い。
大切な試合や受験前など、風邪をひきたくないイベントの1~2か月前から継続的にボディメンテを摂取することで感染症を予防して体調を整える効果がありそうです。飲めば必ず風邪をひかないわけではなく、大塚製薬が言う通り、体調管理の”サポート”なのでその辺は間違えないようにしてください。規則正しい生活と手洗いうがいなど予防策をきちんとした上でボディメンテを飲めば効果的なはずです。
ボディメンテのB240乳酸菌が免疫機能を改善するメカニズム
ボディメンテに含まれるB240が免疫機能を改善することは分かりましたが、メカニズムについてはまだはっきりしていません。おそらく小腸のパイエル板と言う粘膜免疫機能を司っているリンパ節からのIgA産生だと考えられています。
また、Kiso et al (2013) のB240がインフルエンザウイルスに対して効果的だった研究では、B240を摂取することでマウスの肺での遺伝子発現が変化したことも示されています。ウイルス感染などによる炎症反応として本来遺伝子発現が高まるAcots, Cyr61, Egr1, Fos, がB240の摂取で抑えられ、逆に免疫系を賦活するRsad2の遺伝子発現が高まりました。インフルエンザウイルスの量自体はB240を摂取しなかった場合と変わらなかったので、先天的な免疫機能が強くなったことがB240を摂取したマウスの生存率が高まった理由と考えられます。
B240って副作用はあるの?
B240の副作用についてもラットで調べられており、最大で3兆個のB240を投与、最長91日間の投与でも副作用は特にありませんでした(Szabo et al, 2011)。現実でそこまで摂取しないと思うので大丈夫だと思います。ボディメンテゼリーで20億個のB240だそうです。先ほど紹介したKotani et al の高齢者を対象にした研究(2010)でも悪影響は見られませんでした。大塚製薬のボディメンテ公式サイトにも1日何本までとか、何日間まで飲んでいいなどの制限はないとされています。おすすめはドリンクもゼリーも1日1本以上だそうです。確かに研究で示されている効果を得るには1本は必要でしょうね。
B240の副作用はなさそうですが、ボディメンテ自体には乳成分と大豆由来成分が含まれているのでアレルギーがある人は注意が必要です。
まとめ:続けたら体に良い!
ボディメンテは美味しくて最近よく飲んでおり、効果について気になったので徹底的に調べました。継続的に飲めば効果がありそうですのでこれからも飲んでみようと思います。忙しくなるとすぐに風邪を引いてしまうので、これからも飲もうと思います。
ちゃんと研究がなされてから市場に並ぶって大塚製薬はすごいなって思います。2006年には既に大塚製薬によるB240投与の研究があるので、製品になるのには時間がかかるのだなと言う勉強にもなりました。独自って言うだけあって、大塚製薬の研究グループの論文ばっかでした(笑)
大切な試合や受験、仕事などを控えている人はぜひ飲んでみてください。
ドリンク24本セット↓
ゼリー とりあえず6個↓
ゼリー30個セット↓
参考文献
・ボディメンテ公式サイト https://www.otsuka.co.jp/bdm/
・辨野義己:プロバイオティクスとして用いられる乳酸菌の分類と効能. モダンメディア 57 (10): 277-287, 2011.
・Yamahira S, Toba M, Kishi K, and Okamatsu H: Stimulation of mucosal immune system by lactic acid bacteria originating in tea. Jpn J Lactic Acid Bacteria 17 (1): 57-60, 2006.
・Kobayashi N, Saito T, Uematsu T, Kishi K, Toba M, Kohda N, and Suzuki T: Oral administration of heat-killed Lactobacillus pentosus strain b240 augments protection against influenza virus infection in mice. Int Immunopharmacol 11 (2): 199-203, 2011.
・Kiso M, Takano R, Sakabe S, Katsura H, Shinya K, Uraki R, Watanabe S, Saito H, Toba M, Kohda N, and Kawaoka Y: Protective efficacy of orally administered, heat-killed Lactobacillus pentosus b240 against influenza A virus. Sci Rep 3:1563, 2013.
・Tanaka A, Seki M, Yamahira S, Noguchi H, Kosai K, Toba M, Morinaga Y, Miyazaki T, Izumikawa K, Kakeya H, Yamamoto Y, Yanagihara K, Tashiro T, Kohda N, and Kohno S: Lactobacillus pentosus strain b240 suppresses pneumonia induced by Streptococcus pneumoniae in mice. Lett Appl Microbiol 53 (1):35-43, 2011.
・Kishi K, Kotani Y, Yamahira S, Toba M, Okamoto H, Mihara S, Tsuruta Y, Takehara M, Akahoshi A, and Minami H: Lactobacillus plantarum ONRIC b 0240 enhanced salivary IgA in healthy adult volunteers. Jpn J Lactic Acid Bact 17 (2): 132-137, 2006.
・Kotani Y, Shinkai S, Okamatsu H, Toba M, Ogawa K, Yoshida H, Fukaya T, Fujiwara Y, Chaves PH, Kakumoto K, and Kohda N: Oral intake of Lactobacillus pentosus strain b240 accelerates salivary immunoglobulin A secretion in the elderly: A randomized, placebo-controlled, double-blind trial. Immun Ageing 26 (7): 11, 2010.
・Szabo NJ, Dolan LC, Burdock GA, Shibano T, Sato S, Suzuki H, Uesugi T, Yamahira S, Toba M, Ueno H: Safety evaluation of Lactobacillus pentosus strain b240. Food Chem Toxicol 49 (1):251-258, 2011.