「バタ足が速くなりたい!」「クロールのキック力が弱い」とお悩みの選手は結構多い。正直、自由形のレースのラストに頼れるのは己のキック力のみと言っても過言ではない。それくらい重要なキック、速くなるためのポイント、コツ、フィジカル、どれくらい速くなればいいのかを水泳・競泳の個別指導コーチが語ります。そしてキック練習をサボるなよー(笑)
目次
キックが弱くて速い選手は減ってる
昔から重要だけど、年々自由形(クロール)のレースを見ているとキックの強さがものを言うようになってきている印象があります。短距離は言うまでもなく「脚に何かマシーンついてますか?」ってくらい爆発的なキックが打てないとあかんし、中長距離でも400m、800mで最後まで強い6ビートキックを打ち続ける選手も増えてきました。
*6ビートキック:クロールは1かきの間に6回キックが入ります。あえて加減して2ビート、4ビートでうつこともあります。
もちろん、腕力を鍛えないとかプル(手のかき方、回し方)の技術を磨かなくていいという意味ではない。
まだまだ体が未熟だからこそキックの方が貢献度大きいよねという話。
バタ足キック、どのレベルが速い?遅いの境界線??
「あいつはキックが速い!」
「自分はキックが遅い!」
競泳のレッスンに通ってくれている選手たちからもよく聞く言葉ですが、、、
話のほとんどが所属しているチームの中での比較。
もしも、バタ足が全体的にレベルの低いチームだったら?
逆にレベルの高いチームだったら?
曖昧なんですよね。確かに実際〇〇秒で50mのバタ足ができたら速い!という研究とかデータがあるわけではないです。ですが、たくさんの子を見てきてある程度の基準はあります。
バタ足の速い、遅いの境界線それは、、、、
50mクロールのベストタイム+10秒以内
このあたりが境界線のように思えます。
もちろん条件としては
✅50mのビート板ありキック
✅ラスト5mやターン前5mに手で水をかかない
✅顔つけでもOK
50mクロールで30秒を切りたい選手なら50mの板キックは40秒では泳いで欲しいです。
25秒で泳げる選手なら35秒くらいのキック力は必要。
もちろん個人差はありますが、22秒などトップレベルで泳ぐ選手たちはキックだけでも30秒を切っていることはよくあります。
そして、ここが境界線なので
もっと言うなら
「+10秒以上かかってるなら遅いかも」
「+10秒くらいなら合格点」
+10秒以内
可能なら+8秒、さらにもっと目指したいよね。
目指すべきは50mのクロールの出したいタイムからの逆算
つまり、ここから言えることは、、、。
もし今、50mクロールのベストタイム+10秒以内でキックができるからと言って、「自分は合格点だ」と言って安心してはいけないということ。クロールのベストタイムが上がっていくにつれて、キックの基準も上がっていくからだ。
だから、練習では「ベスト+10秒」ではなくて
出したいタイム+10秒以内
を目標にして取り組んでほしい。
50mクロールで29秒の選手が板キックで39秒を出した努力は素晴らしい。
でも、そこで止まったら29秒のままだ。
次は28秒を出したいはず、それならばキックも38秒、37秒を狙っていかなくてはいけない。
練習で最後の5m、手をかいて誤魔化す意味ってどこにあるの
⚠️尾崎のぼやきタイムに入ります。
そーだそーだー!(心の中の観衆)
キックだけで回れるように練習、トレーニングするから強くなるんでしょ?
ごまかして回れたサークルは実力なのか?!
練習のサークル回ることが目的じゃなくて、試合でタイム出すために練習してるんでしょ?!
大丈夫、練習や。
練習の失敗すら怖かったら、レースの失敗で心がもたんよ??
◾︎50m×10本のキック練習があったとする
◾︎毎回ターン前とゴール前の5mで水をかいたとする
◾︎1本につき10mは水をかいている
◾︎10m×10本=100m
◾︎ではサボらなかった選手と、腕回しまくり選手の1ヶ月を比較する。
◾︎1日に100mサボった場合、1ヶ月に30日練習をしたとして
◾︎100m×30回=3000m
しかも!!
50×10本なんて、わりかし量としては少ない方ですよね!
もっと泳いでいる選手コースの子がほとんど。
じゃあその差はさらに、、、、。
1ヶ月で3km。
1年だと、3km×12ヶ月=36km!!
それに実際は倍くらいはキックすると思うから、年間52kmもサボってる。
技術の前に単純な脚力
この圧倒的積み重ねの差にも通じてくる話なのですが、キック力ってまずシンプルな脚力です。
柔軟性とか技術も大切ですがシンプルな脚力ありきです。
鍛えよ、さらば与えられん
「筋訳聖書 脚編292:1-1」
単純に下半身全体の筋力です。
速い選手の太ももって本当に太い(筋肉で)。
細く見える選手でも、生でみたらしっかりした脚してます。
脚だけ鍛えればいい?
いいえ、強力な蹴りには、腹筋背筋も重要です。
全身だよ全身。
トレーニング種目としては、まずシンプルなところで言うなら。
全力ジャンプ
全力ダッシュ
え?って思うかもしれませんが、特に小学生はこれでいい。
本来なら全力で遊んでたら勝手にやってるんですけど、その機会が減っている今こそ。
バタ足を速くするために必要な柔軟性
柔軟性の面ではどうでしょうか?
特に高めてほしいのが、足首と股関節です。
キックが下手な選手ほど膝の曲げ伸ばしでバタ足を打つ傾向が強いです。
たしかにそれでも強い推進力は生み出せるのですが、水の抵抗が大きくなってしまいます。
競泳は前に進む力と水の抵抗のバランスでスピードが決まっていきます。
また、股関節は人間の中でも最も強い力が出る関節です。
ここの柔軟性があまりに低く、十分な可動域で使えないと損でしかありません。
筋力をつけること、柔軟性を高めることを並行して強い脚を手に入れてください。
ストレッチ方法はYouTubeでもなんでもOKです。
効果が出ない!!の大半は続けていないから。
我慢して3ヶ月は続けてみてください。
うちでも陸トレ全集にトレーニング種目とストレッチは収録していますが、
続けてなんぼです!
詳細🔻
バタ足のコツは振り回し続けるイメージ
ここまで話をしてこなかったのは理由があります。
今までたくさん技術的なことや方法論を聞かれたけど、結局やり遂げる人は一握りしかいないから。
知って、実行するって難しいんですね。
なんだろう、すぐ知れるから???
さて、キックのまず重要なコツは「振り回す」です。
ただ振り回すだけではなく、「うちわ」のようなイメージです。
太もも=うちわの柄の部分(棒状の硬い持つところ)
膝から下=うちわの丸いとこ
このイメージです。うちわを扇ぐ時、棒の部分を振れば勝手に丸いところはしなりますよね。
キックもこれと同じ。
太ももをしっかり振れば、膝から下は勝手にしなってくるイメージです。
それを細かく振り続ける。
うちわで扇ぐ時、振り下ろすのも振り上げるのも一定で扇ぎ続けますよね。
キックも同じ、振り続ける。
そうすることで、蹴り上げも蹴り下げも水を捉えて進んでいくことができます。
これに必要なフィジカルがさっき紹介した股関節の筋力と柔軟性、そしてよくしなるうちわ=足首です。
最後に
ここまでバタ足キックのあれこれを解説しました。
この中でも1つでも実践して継続できる人は一握り。
全て実践できる人はさらにひとつまみ。
速く泳げる人間は一握り。
その中でさらに速い人はひとつまみ。
どっちになりたい??