前腕の構造と動き
まず、前腕には尺骨と橈骨という2本の骨があります。
イラストは体の後ろから見た図です。
小指側にある尺骨は上腕骨と蝶番の動きをする関節を形成しています(腕尺関節)。
肘を曲げたり、伸ばしたりする動きを可能にしています。
親指側にある橈骨は上腕骨と腕橈関節を形成しています。
腕橈関節は球関節なので、お皿にボールが乗っているような状態です。
上下左右や回転など、様々な方向に動くことができます。
という骨格的なことを踏まえて、前腕はこんな感じで動きます。
図は左手です。
分かりやすくするために肘を曲げて手のひらを天井に向けた状態を作ります。
そこから、内側にしながら手のひらを内側に回しながら下に向ける動きを「回内」と言います。
回内の状態から元に戻す動きを回外と言います。
上図のように尺骨の上を橈骨が乗り越えて回内します。
ご自身の腕でも触るとクロスがなんとなく分かります。
黄色が橈骨、黒が尺骨です。
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前腕の良い使い方
前腕の使い方=回内・回外の使い方にエラーがあると、日常生活で肘や手首に負担がかかってきます。
勉強やお仕事をしている時、家事、トレーニング、スポーツ、遊びetc。
前腕に負担をかけていると、泳ぎにも悪影響です。
痛みが出ることはもちろんですが、余計な筋緊張や張り感、拘縮を生み、スムーズなストロークの邪魔になります。
以前インスタでこんな質問をしました。
回内、回外動作の軸はどちらですか?
というもの。
答えは尺骨側で、小指から尺骨までを一直線に保ったまま、
親指側が主導となって手のひらを返すのが正しい動きになります。
なので、パソコンのキーボードを打つ時なんかも、小指と尺骨の位置関係が一直線になるように意識することで手首や肘への負担が減ります。
上腕を動かしたりして調整してみてください。
もし、動きの軸が親指側になると、親指と橈骨が一直線になり、本来の関係性が崩れてしまいます。
水泳で怪我をしてしまうことは少ないかもしれませんが、
通称テニス肘(上腕骨外側上顆炎)やゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)と呼ばれる肘の怪我は日常生活やお仕事での動きのエラーから発症することもあるので注意が必要です。
その状態じゃ泳げませんし、泳いでも良いコンディションではありません。
また、普段からその動きをしているのであれば、泳ぐ時の動きも不健全なものになると思われます。
フロントスカーリングの時を考えてみよう
というわけで、フロントスカーリングの時を例に前腕の動きを考えてみましょう。
スカーリングはストロークの基礎になる部分です。
ここで前腕の良い動きができていれば、泳ぎの中でも良い動きができるはずです。
伏し浮きになった状態から、手を前に伸ばしてフロントスカーリングを開始するわけですが、
この時はすでに回内しています。
そこから、さらに回内しながらアウトスイープ。
回外しながらインスイープを行います。
アウトなのに回内で
インなのに回外でややこしいですが、ちょっとその場で軽くやってみてください。
そして、今回大事なのがここから。
そのスカーリングの動きを親指側か小指側、どちらを主導で行うか。
もちろん、肘の関節は曲がったり伸びたりします。
でも、手のひらを返すという動きは親指側を主導にするのが自然な回外、回内の動きになります。
小指と尺骨のラインを揃え、親指側を返していくようなイメージを持ちます。
どうですか?
できそうですか?
スカーリングも様々な指導があると思いますが、今回は解剖学的に考えて自然な動きという観点からアプローチしてみました。
まずはスカーリングから基礎を固めること。
その前腕の使い方を覚えたら、スイムでも自然な動きで良いストロークができるかもしれません。
地味なことですが、地道に頑張っていきましょう!