水泳の上達をもっと厳密に言えば、運動学習の結果と言えます。運動学習には主に脳の2種類の経路が関わっていると言われます。それが大脳基底核と小脳です。それぞれ別の要因で刺激されるため、上手く刺激していくことで運動学習を効果的に進めていくことが可能です。ポイントは自分へのご褒美と試行錯誤です。
ご褒美好きの大脳基底核
まずは大脳基底核の運動学習からお話していこうと思います。
大脳基底核は運動だけでなく、情動面とも深く関わっており、運動学習においても気持ちの面が大きく左右されます。
そして、大脳基底核で生じる運動学習にはドーパミンにある程度左右されるという一面があります。
大脳基底核は脳のほとんどのドーパミンが集まると言われています。
ドーパミンは、報酬系が刺激されることや快の感情で分泌されるホルモンです。
したがって、上手に運動ができて褒められたり、自分で嬉しい気持ちが起こることでドーパミンが放出され、それによって刺激された大脳基底核が適切な運動を学習していくという感じです。
すなわち、理想的な動作が運動ができてすぐに褒められるか、自分が嬉しくなるかでドーパミンがしっかり作用すれば運動学習がスムーズに進んでいくと考えられます。
本当にざっくりと解説しているのですが、
では具体的に水泳の上達を図る際に私たちができることは何でしょうか。
僕なりに考えてみました。
①できた時にしっかりと褒めてくれる指導者を選ぶ
②指導者や保護者は生徒さんやお子様が、良い動作ができた時にすぐに褒める
③良くも悪くもドーパミンに左右されるので、適切では無い動作時に褒めすぎない(チャレンジを褒める程度にしておいたり、複合的な動きであれば、できた部分だけ褒める)
④上手くいった時は小さなことでも素直に自分を褒めてあげる
そんな感じかなと思います。
できるだけ即時に褒めてあげると良いかと思います。
失敗から学ぶ小脳
次は小脳です。
こちらは少し違います。
小脳は大脳基底核とは違い、ドーパミン(報酬)に左右されるわけではありません。
自発的な運動をしていく中で、最適な運動をするにはどうすれば良いか何度も試行錯誤する中で学習していきます。
特に小脳は失敗の刺激に対して敏感で、失敗した時の情報を処理して、「次はここを修正しよう」と働きます。
何度もフィードバックとプログラムの再構築を重ねていくうちに円滑で適切な動作ができるようになります。
失敗の中でも特に痛みには敏感で、子どもの時の自転車や竹馬の練習で何度も転んだ経験はその際たる例です。
痛みという強烈な失敗刺激が入るからこそ、次の運動時に修正しようと小脳が働きます。
ただし、この小脳の働きは自発的な取り組みが鍵になってきます。
やらされているよりも、自分がしたいからしている。
楽しいからしている。
そんな気持ちが大切です。
水泳は水の中なので、初心者さん以外は痛い思いをすることはないです(初心者さんも水が鼻に入るくらい)。
ですが失敗の経験は何度でもあります。
また、小脳は本人の創造性なんかも重要な要素になってきます。
遊び心を持って「こうしたらどうなるんだろう」と考えながら楽しく取り組むことが味噌です。
というわけで、水泳を上達させるためにどんな心がけができるか。
①やらされる課題だけでなく、自分で考えて取り組む
②何度でも失敗をすれば良い(すぐになんでもできると思うことなかれ)
③指導者や保護者は自発的な取り組みを促す
④遊び心を持って水泳に取り組む(こうやったらどうなるんだろう)
以上になります。
いずれにせよ、楽しく取り組み、自発的に。
そして懐の広い指導者や保護者のサポートが重要になりますね。
ではまた〜