【最新の研究レビュー】腰痛改善にはマッサージ?運動?どんな運動?

今回は多くの人が悩む慢性的で原因のはっきりしない腰痛に対して、どんな方法の運動が効果的なのか、またマッサージと比較して運動はどうなのかを調べた2019年10月に発表された最新の研究(メタ分析)をご紹介します。結論から言うと、無理ない範囲で体を動かそうと言うことです。

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*メタ分析=複数の研究をかき集め、その中から質の高い研究を厳選してデータ分析をする手法でエビデンスレベルが高い。

 

紹介する研究はBritish journal of sports medicine に掲載されたオーストラリアとスウェーデンの大学による研究です。

「Which specific modes of exercise training are most effective for treating low back pain? Network meta-analysis」

関西弁訳:腰痛治すんに一番効果あるんはどの種類の運動なんやろ?メタ分析したろ。」

 

原因不明の腰痛に悩む多くの日本人

日本人の約2800万人(5人に1人)が腰痛持ちだと言われており、そのうち約85%が原因がわからない非特異的腰痛と言います。

また、腰痛にも慢性的なものとそうでないものがあります。

12週間以上継続して痛みのある腰痛を慢性腰痛(CLBP)と言います。

研究の冒頭でも書かれていますが、CLBPは腰痛全体の20%くらいと言われていますが、腰痛の治療に使われるコストのうち80%を占めているらしいです。

さらにCLBPも90%が原因が特定できない”非特異的CLBP”だそうです。

 

とりあえず、なんで痛いかわからない腰痛持ちがめっちゃいるってこと。

そりゃ町にはマッサージ店がいっぱいあるわけだ…。

Yusan
原因のはっきりしている腰痛は脊柱管狭窄症やヘルニア、骨折、その他何らかの病気などで、全体の15%。これに当てはまる人は病院で治療とリハビリを。

 

研究に至った経緯

今回の研究では「非特異的慢性腰痛」をターゲットにしています。

 

運動をせずに超音波、温熱・寒冷療法、マッサージ等をした治療では非特異的慢性腰痛は改善しないという研究結果がいくつか示されている。

一方で、運動処方はそういった非運動の治療よりも効果的であるというデータが示されている。

安定性/運動制御のトレーニング(いわゆる体幹トレなどはここに入るかな)、ヨガなどで効果的だと言われている。

しかし、どの運動がベストかはあまり注目されていない。

研究者「じゃあ俺らが調べるわ。」

研究で比較された項目

・どの運動処方が腰痛の痛みを取り除くのに効果的か

・痛みに対する有効性に加えて、主観的な身体機能、メンタルヘルス、鎮痛薬の使用、体幹筋力と持久力

・運動処方とセラピストによる治療(マッサージなどの徒手療法とそうでないもの)

 

結果(長いので飛ばしてもOK)

腰痛の運動処方に関して調べた研究9543個(レビュー、メタ分析含む)を基準に照らし合わせて最終的に89個に絞りました。

男女含む計5578人の腰痛患者(年齢は20~70歳)についてのデータが集まりました。

 

痛みの緩和に関する分析結果ではピラティス、安定性/運動制御のトレーニング、有酸素運動、レジスタンストレーニング(筋トレ)、複合的なトレーニング、その他トレーニングで何も治療をしない場合と比較して腰痛を改善したことが示されました。

そして、ピラティス、有酸素運動、安定性/運動制御のトレーニングが最も効果が高いということが示唆されました。

ただし、エビデンスとしての質はまだ低いという結果。

運動処方とセラピストによる治療を比較した場合は、すべての種類で運動処方の方が効果的であると示されました。

 

身体機能の面では、安定性/運動制御のトレーニング、有酸素運動、レジスタンストレーニング(筋トレ)、水中運動、ヨガ、ピラティス、複合的なトレーニング、その他のトレーニングで何も治療をしない場合と比較して改善が見られました。

中でも最も効果が高かったのは安定性/運動制御のトレーニングとレジスタンストレーニングでした。

ただし、これもエビデンスとしての質はまだ低いという結果。

運動処方とセラピストによる治療を比較した場合は、すべての種類で運動処方の方が効果的であると示されました。

 

メンタルヘルスへの効果はレジスタンストレーニング、有酸素運動、安定性/運動制御のトレーニングで改善効果があり、レジスタンストレーニングと有酸素運動が最も高い効果があったそうです。

これまたエビデンスとしての質はまだ低いという結果。

運動処方とセラピストによる治療を比較した場合は、すべての種類で運動処方の方が効果的であると示されました。

 

体幹筋力については、レジスタンストレーニングと安定性/運動制御のトレーニングが何も治療をしない場合よりこうかてきであると示されました。

ただしこちらもエビデンスのレベルとしては低い。

筋持久力・鎮痛剤使用については十分なデータがまだ無いため、結果をはっきりさせるには至りませんでした。

 

結果から言えること

ピラティス、安定性/運動制御のトレーニング、レジスタンストレーニング、有酸素運動トレーニングによって非特異的慢性腰痛患者の痛み、身体機能、メンタルヘルスを改善できるという可能性が示されました(エビデンスのレベルは低い)。

また、セラピストによるマッサージなどの処置を受けるよりも運動をした方が非特異的慢性腰痛には効果的である可能性も示されました。

積極的に運動をすることが成人の非特異的慢性腰痛の効果的な治療法であるかもしれないという証拠になりました。

 

Yusan
まだ証拠不十分かもしれないものの、原因の分からない長引く腰痛には、積極的に運動をした方がいいかもってことですね。確かに、なんでか痛いなぁって時に泳ぎに行くと楽になる感じ、分かる。 

運動の種類がどれであってもある程度効果があるので、自分のできる範囲で取り組むのがベストなのかも。

ケガが不安な人は治療や運動の専門家にアドバイスをもらいながら運動に取り組んでみて下さい。

原因がはっきりしている人、痛みがあまりにひどい人は医療機関の受診を。

 

今回の研究も、まだ「可能性」の範囲でした。

人類の腰痛との戦いはまだまだ続く….!!みたいですね(苦笑)

 

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参考文献:Owen PJ, Miller CT, Mundell NL, Verswijveren SJ, Tagliaferri SD, Brisby H, Bowe SJ, Belavy DL: Which specific modes of exercise training are most effective for treating low back pain? Network meta-analysis. Br J Sports Med 2019.

 

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