速く泳ぎたい、楽にスイスイ泳ぎたいなど、泳ぎの練習をする目的は人それぞれですが、誰しも多かれ少なかれフォームを改善するための練習や試行錯誤をすると思います。今回はその時に覚えておいていただきたい大切なことを記しておこうと思います。それは、フォームは目に見える「動き」や「形」だけではないということです。そして、一人一人泳ぎには個性があり、本当の意味で全く同じ動きをしている人はいないということです。
これには「感触」や「快適さ」、「違和感の有無」と呼ばれる部分も大いに関係しています。
まず最初に理由を述べた後に、実際の取り組みとして大切なことを記事のラストにまとめておきます。
*内容は1つの考え方であり、必ずしも結果を保証する絶対の真理ではありません。
泳ぎのフォームは「動き」に加えて「感触」が大事
水泳に限らず身体運動全般に言われることですが、取り組もうとする理想のフォーム、人に教えてもらうフォームが外見上いくら良い形であっても、自分自身がその動作を「快適」「心地よい」「嫌じゃない」と感じていなければ最終的に良いものにはなりません。
「快適」「心地よい」「嫌じゃない」の逆は「不快」「動きにくい」「動いていて気持ち悪い」「嫌」という違和感です。
こういった違和感は体が発する「その動きは嫌」と言うサインです。
その場合、見かけ上いくらお手本通り動けても良い動きではありません。
見た目は同じでも、目に見えないどこかで体が無理をしているか、今の自分には合っていないと言えます。
無理をしているというのは力加減であったり、動きの始点であったり、意識の置き方など、「目に見えないフォーム」に問題がある場合や人体の構造的に非合理的な動きをしている場合です。
自分に合っているかどうかは新しいフォームを試す初期段階である程度わかります。
目に見えないフォーム、見えるフォーム、人体として無理なく動いているのに違和感があるのは自分に合ってないのだと思います。
いずれの場合にも、いくら練習を積みできるようになろうと良い完成品にはなりません。
後にも書きますが、こういった背景があるからこそ一人一人に泳ぎの特徴や個性があるわけです。
自分が指導をする際にも、違和感には気を付けていて、フォームを教えて実際に泳いでもらってみてから
など、質問して生徒さんが自分の体と向き合えるように心がけています。
指導側はついつい教える内容に必死になって忘れがちですが、気を付けています。
この段階で、違和感が強いようであれば指導するフォームを変えたりします。
ただし、どうしても変えられない場合があります。(次章に続く)
違和感ありと言えど、基本が先
違和感があってもできればそのフォームや動作を習得してもらいたい場合と言うのは「基本の動き」の場合です。
特に水泳では水の抵抗のことがあります。
「何か違和感がある」と言われても、その動きを習得してもらう必要があります。
ちなみに、基本と呼ばれる動きは適切に行うことができれば違和感を感じることはほとんど無いと思います。
違和感があるなら何かしら間違っていると思ってもらえたらと思います。
ややこしいことに、この基本動作をするうえでも個人によって違いがあります。
例えばストリームライン(けのび)の時に腕を耳の真横で組むのか後ろで組むのか、一人一人違います。
頭のサイズや肩周りの可動域、など様々な要因が関わっているからです。
なので、どの位置で腕を組もうと「抵抗を少なくしてリラックスして浮かぶこと」が基本動作ができているかの判断になります。
その他の動きでも「これだけは」というのが数点あるので、それを実行するためのちょっとした違いはOKだと思います。
結果的に違和感なく基本動作をすることに繋がります。
基本の中での個人差が人それぞれの動きを生む
というわけで、基本動作が自分にとって違和感なく快適にできた上で、より良くしよう(もっとタイムを出したい、楽に泳ぎたい等)と思った時に最初に述べた「違和感の有無」「感触の良し悪し」の話になります。
「もう少し手をこうしてみよう」「キックをこうしてみよう」と試行錯誤する中で自身の感触・感覚と向き合い動作を取捨選択していくことで他者と大きく異なる個性が生まれていきます。
(前章に書いたこともあるので、基本の習得段階でも小さな個性は生まれます)
姿かたちや内面まで一人一人違うので当然のことですが、フォームに関しては見落としがちで「こうでなければならない」と思いすぎてしまう人もいるので要注意です。
動きだけをマネても速く・楽に泳げない理由
ここまで読んでくださった方はお察しかもしれませんが、動きだけをマネても速く泳げない理由は力加減や力の入れ方、身体のイメージ、意識の置き方向け方など、目に「見えないフォーム」が伴っていないからです。
だからと言ってお手本や上手な人のマネをするなと言っているわけではありません。
まずはマネから入ってOKです。
ただし、その動きをしている人は
「どんな感覚で動いているのだろう」
「どこから動き始めて力を出しているんだろう」
「その動きができた時はどんな感じになるんだろう」
と想像することが大切です。
指導をする場合にも、形だけでなく体の連動のイメージや力の伝え方のイメージなど「目に見えないフォーム」に対するヒントを出すことが重要になります。
もう1つだけ。
例えば、憧れの○○選手の手のかき方がこうだからマネしてみようと思った時、
全然マネしてもらって良いのですが、泳ぎは全身で行うものであり、体はと動きは全部繋がっています。
手のかき方を同じにしても○○選手と自分とではキックや姿勢のとり方など、別の部分が大きく違うかもしれません。
もちろんそれらは「手のかき方」「手」にも影響します。
なので、手のかき方だけ変えても理想とする結果や感触を得られないかもしれません。
得られるかもしれません。
体と動きは全部繋がっているということを念頭において取り組んでみてください。
実際の取り組みとして気を付けること
最後に、実際の取り組みとして気を付けることをまとめておきます。
・お手本や理想の泳ぎではどんな感覚・感触になるのか想像すること。
・形だけでなく「目に見えないフォーム」を考えること。
・動いた時に違和感は有るかどうかを感じとる。
・違和感があれば間違っているか、自分に合っていないという可能性を考える。
・快適かつ種目に有利な動きを模索する(水泳であれば抵抗が少ない等)。
・目に見える形だけで判断しない。それに対して快適な感触が伴うかを判断。
・体と動きは全部繋がっているから、1カ所だけ変えても理想に近づけないこともある。
以上です。