試合でベストを出すためのコンディショニング方法の1つにカーボローディングという食事戦略があります。水泳をはじめとした持久系要素の強いスポーツで特に有効な方法とされています。今回はその一般的な方法についてご紹介したいと思います。
カーボローディングとは
カーボローディングとは試合後半の炭水化物利用能力を最大限高めるために、試合数日前から高炭水化物食を摂ることです。
カーボローディング自体は数十年前から行われており、特に有酸素性持久力が勝敗に大きく関係するスポーツ(マラソンや長距離の水泳、クロスカントリーなど)に有効な方法とされています。
また、カーボローディングは炭水化物を摂取することは最終的にグリコーゲンの貯蔵量を増やすため、有酸素性スポーツだけでなく、グリコーゲン枯渇が起こり得るスポーツ全般に有効な可能性があります。
*グリコーゲン=糖質の一種で主に筋肉・肝臓に蓄えられ、エネルギー源になる。炭水化物は糖質と食物繊維のこと。なので、グリコーゲンローディングとも言える。
グリコーゲンの枯渇とは、試合の後半にかけていわゆるガス欠やエネルギー切れと言った現象です。
一気に長い距離を走り抜けるマラソンやクロスカントリーだけでなく、一日に何レースもこなす水泳や陸上競技でもグリコーゲンの枯渇は起こり得ます。
サッカーやバスケなどの軽く動いたり全力出したりを繰り返す球技においても後半にエネルギー切れ(グリコーゲンの枯渇)を経験することがあると思います。
こういった現象が起こり得る選手はカーボローディングによって改善されるかもしれません。
カーボローディングの一般的な方法
普段からしっかりしたトレーニングを積み、試合前にはテーパリング期間がある前提で一般的なカーボローディングの方法をお話します。
試合何日前から始めるか?
一般的に行われているカーボローディングは、試合前の3日間に高炭水化物食を摂取するというものです。
多くの場合、試合の1~3週間くらい前からトレーニングはテーパリングに入ります。
試合の日にベストパフォーマンスが出せるよう調整することをピーキングと言い、そのための方法にテーパリングやカーボローディングがあります。
ですので、カーボローディングはピーキングのラスト3日間に行うことになります。
3日間の内、試合前日は休養日とすることもあります。
テーパリングではトレーニングの強度は極力下げず、量を減らすことで身体への負荷を軽減しています。
結果的にトレーニングで使うカロリー量は少なくなっています。
そのタイミングでしっかりとした食事をすることで、総摂取カロリーを十分に満たすことができます。
さらに、カーボローディングを考慮した食事をすることで筋グリコーゲンの貯蔵を高めることが期待できます。
具体的にどんな食事にするのか?
まずは、一日の総摂取カロリーが総消費カロリーを十分に上回ることが必要になります。
でも、これはなかなか一般人では計算が難しかったり手間だったりします。
最も分かりやすい方法は、毎朝体重を測ることです。
1週間ほど今の食事を続けてみて、減っていれば摂取カロリーが足りていないと考えられます。
(極端に水分摂取量、発汗量が変わったとか、酷い便秘でも大きく数字が変わることは考慮して下さい)
まずはこういった簡便な方法でも良いので、自分はどれくらい食べなくてはいけないのか知って下さい。
体重をしっかり管理したい人はカロリーを数値で出しておくこと。
試合3日前にカーボローディングを開始したら、必要な総摂取カロリーを満たしつつ炭水化物量を調整します。
カーボローディングでは、1日に体重1kgあたり8~10gの炭水化物を摂取します。
体重60kgであれば、60×8~10=480~600gの炭水化物を試合前3日間に摂ることになります。
だいたいお茶碗一杯の白米で50~60gの炭水化物が含まれます。
さすがにご飯10杯はつらい人もいるので、麺類やパン、果物、サプリ、和菓子など様々な食品から摂取して頂いてOKです。
食事方法は2種類あります。
試合当日の体重を気にする選手の場合は必要な総摂取カロリーの範囲内で、炭水化物の割合を高くします。
1日に体重1kgあたり8~10gの炭水化物摂取で増えたカロリー分、脂質とタンパク質を削ります。
体重1kgあたり8~10gはキープしつつ、炭水化物が総摂取カロリーに占める割合を75%くらいにします。
タンパク質はできれば体重1kgにつき1.5~2gは確保したいところ。
体重を特に気にしない人であれば、総摂取カロリーを満たす+炭水化物を1日に体重1kgあたり8~10gでOKです。
総摂取カロリーが総消費カロリーを大きく上回ることになります。
大事な試合でいきなり試さない
カーボローディングに取り組む際は、大事な試合でいきなり試さないでください。
必ずしもパフォーマンスが上がるわけではなく、不利益が出る可能性もゼロではありません。
例えば、普段かなりの小食な人が胃腸の不調になるとか。
大一番でいきなり試して失敗しても知りませんよ。
どうでもいい試合、練習試合、記録会などで一度試すことが必要です。
失敗した場合は対策を考えてください。
固形物から摂取するのがしんどいなら、飲料などからも積極的に炭水化物を補うとか、炭水化物以外を減らしてみるとか。
試して高確率で上手くいく自分なりの方法が確定したら大事な試合で使って下さい。
今回紹介した方法も一般論に過ぎず、万人に当てはまるわけではないので。
知ってると役立つ炭水化物の知識
最後に、カーボローディング期間や試合当日、練習の時に役立つ炭水化物の2つの知識を簡単に紹介しておきます。
吸収効率と胃腸の不快感を和らげる方法なのでぜひ頭に入れておいてもらえると嬉しいです。
①:複数種類の糖質を一緒に摂取する
複数種類の糖質を一緒に摂取した方が吸収が早いと言われています。
(*炭水化物はエネルギーとして吸収される「糖質」と吸収されない「食物繊維」に分かれます。)
糖質は単糖類と呼ばれるグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースが最小の単位です。
これら単糖類がつながった形のものを二糖類、少糖類、多糖類と呼び、組合わせによって名前が変わります。
二糖類にはラクトース(乳糖)、スクロース(砂糖)、マルトース(麦芽糖)などがあります。
グルコースが複数繋がってできているデンプンは多糖類です。
トウモロコシ由来のデンプンを低分子に分解したマルトデキストリン(飴ちゃんに使われたり、サプリであるやつ)も多糖類です。
当然、一気にあれもこれも食べすぎてしまうと太ったり、お腹パンパンになってしまいます。
運動前・中・後の砂糖やブドウ糖の摂取にフルクトースを加えてあげたり、マルトデキストリンを加えてみると効果的です。
ブドウ糖+フルクトースの摂取はスポーツドリンクを飲めば自然にできます。
食事の際にも、できるだけ複数種類の食品でメニューを構成し、可能であれば乳製品や果物を一緒に食べることができれば結果的に複数の糖質を摂取することになります。
なかなか糖質の種類を意識しながら食べるのは難しいので、それが手っ取り早いかなと思います。
ダイエットをしたいのであれば話は変わってきますが、ここでは関係ないので言いません。
②:人によっては胃腸の膨満感や不快感を生む糖質がある
様々な糖質を摂取するといいよとは言ったものの、人によっては胃腸の不快感に繋がる場合もあります。
スポーツドリンクに含まれるフルクトースは完全に吸収できない人もいて、飲むことで胃腸の膨満感や不快感を生んで練習や試合のパフォーマンスを下げることがあります。
乳製品に含まれるラクトースが苦手で胃腸の不快感を生む人もいます。
ラクトースが苦手な人は、ホエイやカゼインのプロテイン(こちらも乳製品なので)を飲むとお腹を壊すことでも有名です。
他にも豆や小麦に含まれるオリゴ糖は腸内細菌に発酵されてガスを生み、膨満感をもたらすと言われています。
もっと詳しく知りたい人、胃腸が弱い人におすすめの記事↓
https://president.jp/articles/-/23618
こんなこと言い出したら何も食べれないじゃないかと言われそうですが、こればかりは人によって耐性や許容量があるので日ごろから試してみるのが一番です。
完全に吸収できないのか、少しなら良いのか、どの炭水化物が自分は苦手で大丈夫なのはこれで、、、と普段から自分の胃腸と相談してください。
自分が食べても不調にならない種類と量を見極めながらカーボローディングや試合時の食事を考えてもらえると良いかと思います。
最後に:カーボローディングの注意点など
最後にカーボローディングの注意点とプラスアルファの情報を書いておきます。
注意①:カーボローディングは試合3日前から意識的に炭水化物の量を増やす調整方法ですが、普段からカーボローディング時と同じくらいの炭水化物を摂取している人は改めてローディングしなくても体内のグリコーゲンは十分貯蔵されている可能性があります。
注意②:突然大事な試合前にカーボローディングをすると、失敗や体調不良になった場合に取り返しがつきません。必ず練習試合で試して自分に合った方法を確立してから本番で使う事。
クレアチンは炭水化物摂取と相性が良く、スプリントパフォーマンス等を改善してくれる役割があるのでカーボローディング及びテーパリング期間に併用すると効果が高いかもです。
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特にメーカーは気にしすぎなくてもいいかなと思います。
「安かろう悪かろう(何かあろう)」くらいの意識はあって損ではないかと。