筋トレでも有酸素運動でも、トレーニングを始める時にまず知っておくべきことは「トレーニングとは何か」という事です。そして、トレーニングを組み立てるうえで基本となる「体力要素」、「トレーニングの原則」について知ることで効果のあるトレーニングを行うことができるようになります。何事もまずは基本から!今回はトレーニングとその原則について簡単にお話します!
目次
トレーニングとは目的に応じた運動で体力を高めること
これからトレーニングを始める人がまず知っておくべきことは「トレーニング」ってそもそも何かという事です。そして、トレーニングの組み立てにも理論があります。ただがむしゃらにたくさん体を動かせば良いというわけではありません。
理論を知ったうえで筋トレなどのトレーニングプランを立てることで、トレーニングの効果を最大限に引き出すことができます。せっかく頑張るのだから、効果の出るトレーニングをしましょう。
体力とは何か
「体力」とは筋力、瞬発力や持久力、他にも俊敏性や巧緻性など体を動かす際の基礎的な能力のことです。他にも防衛体力といって病気や精神的ストレスに対する抵抗力も体力の1つです。
一般的に持久走の強い人や風邪を引きにくい人のことを「体力のある(高い)人」と言うことがあります。これは間違っていませんが、体力は持久力や免疫力だけではないので勘違いが無いようにしてください。たとえ持久走が弱くても体力要素はたくさんあるので一概にその人のことを「体力が無い人」とは言えません。もしかすると凄い筋力の持ち主かもしれません。
ある体力要素を高めるには、それに合ったトレーニングをする必要があります。筋力を高めて100kgのバーベルでスクワットができるようになりたい人が、長距離のランニングをしても筋力という体力要素を効率よく高めることはできません。長距離のランニングは持久力を高める運動です。筋力を高めたければ筋力が高まるようなトレーニングをしなければなりません。
トレーニングとは体に負荷をかけて「適応」を起こすもの
体力を高めるためにはそれに合ったトレーニングをする必要があります。では、トレーニングとは何でしょうか。トレーニングとは体に負荷をかけて「適応」を起こさせるものです。トレーニングという刺激に耐えることができるように、体は適応しようとします。そうすることで体力を高めることができます。
今回は例として筋力を高めたい場合を例に解説します。脚の筋力を高めるために筋トレ、スクワット(50kgで10回)をしたとします。すると体は「今50kgのバーベルを担いでスクワットをしなければいけない環境に置かれている!脚の筋肉を大きくして筋力を高めないとやばい!」と刺激や環境に適応しようとします。50kg×10回の刺激に耐えることのできる体を作る反応が起こります。そして、トレーニングを継続していくと、ある時点で体は「50kg×10回」という刺激に適応し、以前よりも強くなります。そして、また適応を起こさせようとするにはより強い刺激(例えば60kgのバーベルに変える)が必要となります。このようにして体は刺激や環境に適応し、それに見合った体ができてきます。
重いバーバルを持ち上げるトレーニングを続けると太くたくましい筋肉ができますし、マラソンを走り抜くためのトレーニングを続けていれば太さはないけれど引き締まった持久力のある筋肉ができてきます。目的に合ったトレーニングを選ぶことが重要です。
トレーニングとはこの適応を利用して体力を高めることを言います。そして、トレーニングで身体に適応を起こさせるためには理論を知った上でトレーニング内容を組み立てていく必要があります。中でも最も基本的な理論がトレーニングの7原則と呼ばれるものです。
トレーニングの7原則に基づいた運動をすることがポイント
トレーニングの7原則はトレーニングを組み立てるうえで最も基本的な考え方です。軽く目を通す程度でも、トレーニングに対する考え方や、理解が深まるのでぜひ読んでいってください。
オーバーロード(過負荷)の原則
トレーニングで体に適応を起こさせ、変化を求めるのであれば一定強度以上の運動をする必要があります。日常生活でかかる以上の強度で運動をすることはもちろん、今ある自分の体力では少しきついと感じる強度が必要です。これをオーバーロードと言います。
普段全く運動をしていない人であればジョギングや自重での軽い筋トレでもオーバーロードになりますし、体に適応を促すことができます。
筋トレをしている人であっても、いつまでも同じ負荷でトレーニングをしていると体はその負荷になれてしまい、オーバーロードではなくなってしまいます。50kg×10回が楽に感じるのであれば、60kg×10回にチャレンジするなど今より負荷を強くすることでオーバーロードになり、さらなる筋力アップや筋肥大が期待できます。
特異性の原則
私たち人間の体は、与えられた刺激に見合った適応を起こします。つまり、自分が高めたい能力や体力、達成したい目標に応じたトレーニングをする必要があります。
陸での100mダッシュばかり繰り返していても、水泳のタイムは速くなりません。走るのが速くなるだけです。泳ぐのを速くなりたいのであれば、泳ぐ練習やトレーニング、泳ぎにつながる筋トレなどをする必要があります。
大きくて分厚い胸板を手に入れたいのに、脚のトレーニングであるスクワットばかりしていてもその目標を達成することはできません。ベンチプレスなどをしましょう。
ほとんどの試合局面で瞬発力が求められる野球部員が、走り込みと言って長距離のジョギングをしていても、バッティングの飛距離もピッチングの球速もベースランニングも速くなりません。必要なのは持久力ではなく瞬発力なので走るのであればスプリントのダッシュの方が適しています。
目的に応じたトレーニングを選びましょう。時間ももったいないですしね。
漸進性の原則
オーバーロードの原則で述べたように、いつまでも同じ負荷でトレーニングをしていてはさらなる適応は起こりません。だからと言って一気に負荷を高くしたり、毎日自分にとってはきつすぎるトレーニングをしたりすることはケガにつながってしまうので逆効果です。ケガをしてトレーニングができなくなると、せっかく高めた能力や、つけた筋肉ももとに戻っていってしまいます。
トレーニングの負荷や難易度は自分のペースで段階を追って徐々に高めていくことが重要です。誰と比べることでもなく、自分の中で少しきついと感じる負荷を段階的にかけていきます。今のトレーニングが楽すぎるか、またはきつすぎるのかといった内容を見直しながらトレーニングを進めていきましょう。
全面性の原則
トレーニングをする際は体力要素や筋肉の部位などを全体的にバランスよく強化していく必要があります。ある機能や筋肉だけに偏った体だと、さらなるパフォーマンス向上は見込まれないですし、ケガの危険も出てきます。特異性の原則も大切ですが、あまりに1つのことに偏らないようにうまくトレーニングを組むことも重要になってきます。
個別性の原則
人それぞれ顔や性格が違うように体力にも個人差があります。性別、年齢、ライフスタイルや今までの運動歴など様々な要因が関係します。なので、みんなで同じトレーニングメニューをするという事はあまり良いことと言えません。トレーニングが楽すぎる人、きつすぎる人が出てこないように、個人の体力に合ったトレーニングが必要になります。
そして、他人と自分を比べないという事が大切です。よく、トレーニングジムで隣の人に負けじと自分で扱いきれていない重量のバーベルを持ち上げようとする人がいますが、これはナンセンスです。周りはあなたのことをそこまで気にしていないので、自分に合った負荷をかけましょう。トレーニングに見栄は必要ありません。着実に自分のペースで段階を踏みましょう。
意識性(自覚性)の原則
トレーニングを行っている時は、そのトレーニングの目的や方法、実際に動かしている部位などを自分で理解・意識して行う必要があります。
例えば、腕立ての動きを真似するだけではなく、主に大胸筋を鍛える種目であることや呼吸のタイミングを理解し、動作中には大胸筋を動かしている意識を持つことが求められます。
継続性(可逆性・反復性)の原則
「継続は力なり」と昔から言われていますが、トレーニングもその通りで、トレーニングの効果を得るには継続して何度も反復することが必要です。また、継続していたトレーニングを辞めてしまうと、体は元の状態に徐々に戻っていきます。「もう負荷がかからなくて良いんだ」という環境に体が適応してしまうということです。
トレーニング効果を得るにはすぐにあきらめないで計画を組んで続けることが大切です。
トレーニングの種類と効果
運動をする人の目的やスポーツが数えきれないほどあるので、トレーニングの種類も膨大な数になります。ですが今回はトレーニングの種類を代謝特性の観点から大まかに分類してみました。
代謝特性に関しては有酸素運動と無酸素運動の違いの記事で詳しく解説しているのでまた見てください。
1.無酸素性トレーニング
無酸素運動というのは、運動中のエネルギー産生に酸素を必要としない運動のことを言います。
無酸素運動では酸素を利用することなく筋肉のエネルギー源であるATPを作ることができます。主に使われるのはいわゆる「白身の筋肉」に多く見られる速筋線維という筋線維です。爆発的にエネルギー放出することに適した筋線維です。
この速筋線維の割合が高く構成されているハムストリングスなどは爆発的な運動で活躍します。また、速筋線維は遅筋線維(有酸素運動に適している)より太くなりやすいので、筋肉を大きくしたい場合は速筋線維を刺激するような運動が適しています。
無酸素運動は爆発的に大きな力を発揮できますが数秒から数十秒で完結してしまう運動です。完結すると言うよりも、限界が来ます。
無酸素運動に分類されるのは陸上の短距離種目や跳躍種目、ウェイトリフティングなど爆発的に力を発揮する運動です。筋トレも基本的には無酸素運動として分類することができます。
こういった無酸素性のトレーニングをすることで得られる効果は
・瞬発力の向上
・筋力の向上
・筋持久力
・筋肥大
この4点が主になります。
中でも筋肥大はアスリート以外にもボディメイクをしたい人には必須の要素です。筋肉をつけて脂肪の少ない体づくりのためには筋トレを中心とした無酸素トレーニングが欠かせません。
2.有酸素性トレーニング
無酸素運動とは逆に、有酸素運動では酸素を使ってATPを作り出します。細胞の中にあるミトコンドリアという器官に酸素が供給され、絶え間なく大量のエネルギーが作られます。有酸素運動では、ミトコンドリアと毛細血管(酸素を運ぶため)の量が多い遅筋線維が主に活躍します。遅筋線維は力の発揮は弱いですが長時間動き続けることができます。
有酸素運動に分類される種目は、陸上や水泳の長距離、ウォーキングやサイクリングなどです。
有酸素性トレーニングをすることで得られる効果は
・持久力向上(心肺機能が高まる)
・筋持久力向上
といったものがメインです。これに加えて有酸素運動ではエネルギーを作るために脂肪が優先的に使われます。また長時間行うことができるので消費カロリーを増やすことが比較的容易なのが特徴です。
有酸素性の能力を評価する指標として最大酸素摂取量(V`O₂max)があります。最大酸素摂取量が高い人ほど生活習慣病にかかりにくいことや、高齢になっても脳の認知機能が高いということが分かっています。年齢とともに衰えていく体を健康に保つために、軽くても良いので有酸素運動を続けることは効果的と言えます。
有酸素運動にも無酸素運動にも共通して現れる効果として、気持ちよさがあります。運動をすることでアドレナリンやドーパミン、βエンドルフィンといった脳に快感をおぼえさせるホルモンの分泌が盛んになります。運動をしてスカッとするのはこういった物質の分泌が盛んになるためです。
その他のトレーニング
体力の要素には無酸素トレーニングや有酸素とレーニングだけでは高めることができないものも多くあります。敏捷性と判断力を高めるためのアジリティートレーニングや、柔軟性を高めるストレッチなど多岐に渡ります。
ちなみにアジリティートレーニングは判断力の必要な状況下で素早い方向転換、動きの切り替えしを強化するトレーニングです。よくサッカー選手やアメフト選手が合図などに反応して細かいダッシュと切り返しの動きをしているのがテレビで映っていますが、こういったものをアジリティートレーニングと言います。
トレーニングには他にも精神面を強化するメンタルトレーニングがあります。座禅や瞑想で頭から余計な考えを追い出し、集中する感覚をつかむことなどがこれにあたります。
目標達成のために適切なトレーニングができていますか?
ここで紹介したトレーニングの理論や種類はほんの一部にしかすぎません。けれど、ここまで読んでいただいた皆さんなら、トレーニングの意味、組み立ての基本的な考え方について理解して頂けたと思います。ちょっとしたことを知るだけで、トレーニングの質は格段に良くなります。
これからトレーニングに取り組む方も、やみくもに頑張るのではなく、正しい理論の基で頑張っていきましょう。