水泳では体重を前に乗せなさい、姿勢を良くしなさいとよくコーチや先生に言われますが、具体的にどうやったら前に体重が乗るかわかりにくいですよね。体重の移動は物理的なものなので、適切な位置関係で体のパーツが並んでいないと前には乗りません。つまり、意識だけでどうにかなるものではありません。この記事では体重を前に乗せ、楽に泳ぐための方法をご紹介します。
前回はけのび姿勢のとり方について解説しました。楽に泳ぐためには体をまっすぐ浮かせて、抵抗の少ない姿勢で泳いでいくことが重要です。特に下半身が沈んでいると余計な水の抵抗を受けてしまって、せっかくキックやストロークで生んだ推進力を最大限利用することができません。姿勢が悪いと1回1回のキックやストロークの効率が下がってしまいますので、それを補おうとしてストローク数が増えたり手足に余計な力が入ったりして泳ぎがしんどくなってしまいます。
前回はこちら
今回も姿勢に注目して楽に泳ぐためのコツを解説していきたいと思います。体重を上手く乗せることができれば今よりも下半身が浮いてまっすぐなボディポジションを維持しやすくなります。
Total Immersion という古い水泳の本(英語)があるのですが、体重の乗せ方・姿勢のとり方をとても分かりやすい例で説明されていたので、参考にさせていただきました。泳ぎは年々進化していますが基礎の基礎は変わりません。
楽に泳ぐための体重の乗せかた
そうです。肺に空気が溜まっているから胸のあたりがよく浮かびます。つまり私たちの体には胸のあたりに浮き輪代わりになるものがついていることになります。
ですが、残念なことに、その「浮き輪」は体の中心から外れたところに位置しています。体の中心の方にあれば重心と近いので力が釣り合って、放っておいても浮かびます。ずれているからこそ姿勢を上手く取って浮かばなければいけないんです。
前回の記事で浮心と重心の近づけ方を紹介しました。それだけでも確かに浮かびやすくなるのですが、実はもうひと工夫必要になってきます。けのび姿勢をとったときに、脚から沈みやすいのはご存知だと思います。それは、手や頭より下半身の方が重たいのと、下半身には肺のような浮き輪が無いからです。けのびの時は、何もしないと常に不釣り合いなシーソーになっているようなもので、下半身側が下がっていきます。
ではどうするかと言うと、体重を上半身に乗せていくのですが….少しコツがあります。先ほど肺のことを浮き輪と例えました。ではプールや海で実際に浮き輪につかまっている時を想像してみてください。
上半身はつかまっているので浮きますが、下半身は沈みます。では、次はつかまらずに、手で浮き輪を押さえつけて沈めてみるとどうでしょうか?浮き輪は浮かび上がってこようとしますよね?そしてそのまま手を離すと力(浮力)が解放されて右や左や前に浮き輪がスポーンと飛んでいきます。
泳ぐときも同じです。浮き輪と同じで肺も常に浮かび上がろうとします。胸のあたりに体重を乗せることで胸(肺)を押さえつける or 沈めるように意識します。それに対抗して肺は浮かび上がろうと浮力を発揮するので、押さえ続けます。浮き輪を水中に向かって沈めて押さえつけた時、浮き輪はブルブルと震えるように浮力を蓄えますよね?押さえ続けるには手でバランスを取りますよね?肺も同様です。肺の場合は身体でバランスを取ってあげます。
バランスと言ってもあまり難しく考える必要はありません。胸のあたりをおさえるような意識をもって泳いでいると、体は前に進むので、押さえつけられた浮力が下半身を浮かべるのを手伝ってくれます。そうすることで自然とお尻が持ち上がりやすくなり、下半身が浮かびます。下の図はイメージ図です。
少し長くなりましたが胸(肺)を軽く沈める意識をもって泳げば下半身が浮かびやすく、楽に泳ぐのにつながります。